旧名称「マドパー配合錠」のまま処方・請求すると、2026年4月1日以降は保険請求が通りません。

マドパー配合錠(レボドパ100mg・ベンセラジド塩酸塩28.5mg含有)は、1980年に発売されたパーキンソニズム治療の長期定番薬です。2018年に中外製薬から太陽ファルマ株式会社へ製造販売が承継された後も、長らく「マドパー配合錠」という名称が維持されていました。
転機となったのは、日本神経学会と日本パーキンソン病・運動障害疾患学会からの要請です。パーキンソン病患者の運動合併症(ウエアリングオフ・レボドパ誘発性ジスキネジア)に対し、より細かい投与量調整を可能にするため、半量製剤の早期開発が求められました。
その結果、2024年2月15日に「マドパー配合錠L50」の製造販売承認が取得されます。そして同年6月14日の発売と同時に、従来の「マドパー配合錠」は規格を区別するために「マドパー配合錠L100」へと販売名変更されました。つまり、成分・含量・効能はまったく変わっていません。
販売名変更の理由はシンプルです。「L50(レボドパ50mg)」と「L100(レボドパ100mg)」という2規格が並立した際に、旧名称のままでは取り違えリスクが生じるためです。なお、ここでいう「L」はLevodopa(レボドパ)の頭文字であり、徐放性製剤を示すものではありません。この点は誤解が生まれやすいので確認が必要です。
薬事日報:「マドパー」に半量製剤‐パーキンソン病治療薬 太陽ファルマ(名称変更の経緯と新製品概要)
L100とL50の違いを整理すると、下表のとおりです。
| 項目 | マドパー配合錠L100 | マドパー配合錠L50 |
|---|---|---|
| レボドパ含量 | 100mg/錠 | 50mg/錠 |
| ベンセラジド塩酸塩含量 | 28.5mg/錠(ベンセラジドとして25mg) | 14.25mg/錠(ベンセラジドとして12.5mg) |
| 割線 | なし | あり(半割可能) |
| 薬価 | 17.00円/錠 | 11.60円/錠 |
| 発売年 | 1980年(旧マドパー配合錠から継続) | 2024年6月14日 |
重要なのは、レボドパだけでなくベンセラジド塩酸塩の含量もL50とL100で異なる点です。これが取り違え時のリスクを高めます。
たとえば、L100を処方されている患者さんにL50を同じ錠数だけ交付してしまうと、レボドパ投与量が半分になります。パーキンソン病は投与量の変動に敏感で、急激な投与量低下は症状悪化やオフ状態の延長につながります。これは患者の日常生活動作(ADL)に直結するリスクです。
逆のパターン、L50処方に対してL100を交付してしまうと過量投与となり、ジスキネジアや嘔気・嘔吐といった副作用が出現します。規格の違いが一目でわかるよう、処方箋・棚札・調剤システム上での確認フローを施設内で定めておくことが重要です。
なお、L50には割線が入っており、半割することも可能です。投与量を細かく調整したい場面での活用が想定されており、医師の指示のもと柔軟な用量設定ができるようになっています。
KEGG MEDICUS:マドパー配合錠L50・L100の医薬品情報(含量・薬価・効能一覧)
名称変更に伴い、旧名称「マドパー配合錠」には経過措置期間が設けられました。当初の経過措置期間満了日は2025年3月31日とされていましたが、2025年3月7日付の厚生労働省告示第54号により延長が決定されています。
延長後の経過措置期間満了日は2026年3月31日です。
つまり、2026年4月1日以降は旧名称「マドパー配合錠」での保険請求ができません。これは現時点(2026年3月)でも今月末が締め切りという非常に差し迫った状況です。保険請求がなくなるということ、それが条件です。
施設内の処方箋、院内採用薬の名称、電子カルテ・調剤システムの医薬品マスタが「マドパー配合錠L100」に更新されているか、今すぐ確認が必要です。
また、処方箋の旧名称への対応についても注意が必要です。経過措置期間中は旧名称で発行された処方箋でも「マドパー配合錠L100」として調剤・請求することが認められますが、経過措置満了後はその対応ができなくなります。院外処方せんを発行している施設では、処方入力システムで旧名称が残っていないか確認してください。
厚生労働省:令和6年6月14日適用 医薬品マスタ変更内容(マドパー配合錠L100への変更コード)
L50の登場は、パーキンソン病治療の現場に実質的な変化をもたらします。これはいいことですね。
従来のL100だけでは、投与量を1錠(100mg)単位でしか調整できませんでした。しかし長期治療の過程では、もう少し増やしたい、あるいはジスキネジアが気になり少し減らしたい、という場面が頻繁に生じます。L100を半割しようとしても割線がないため、正確に等分することが難しいという臨床上の課題がありました。
L50はその問題を解決します。50mg単位での細かい投与量調整が可能になり、かつ割線が入っているため、さらに半割することで25mg単位の調整も可能です。レボドパ25mgはL100の約4分の1に相当し、こうした細かい調節が運動合併症の管理精度を高めます。
具体的な使い方として、インタビューフォームには「ウエアリングオフがあらわれた場合には、1日用量の範囲内で投与回数を増やすなどの処置を行うこと」と記載されています。L50があれば、1日の総投与量を維持しながら投与回数を増やし、各回の投与量を下げるという対応がよりしやすくなります。
また、L50の薬価は11.60円/錠です。L100(17.00円/錠)より1錠あたりの薬価は低く、等量に換算すると「L50×2錠=23.20円」対「L100×1錠=17.00円」となり、薬価面では1錠換算でL100の方が割安です。投与量の微調整のためにL50を使う際は、この点も処方設計の参考にしてください。
エーザイ PDnet:ウェアリングオフ・ジスキネジアの解説(運動合併症の概要と対策)
マドパー配合錠(L100・L50いずれも)には、添付文書に明記された調剤上の重要な注意事項があります。しかしこの点が現場で十分に認識されていないことがあります。意外ですね。
それが「アルカリ性薬剤との一包化による着色変化」です。
炭酸水素ナトリウム含有製剤など、アルカリ性薬剤と一緒に一包化すると、マドパー配合錠が変色することがあります。成分のレボドパはアルカリ性条件下で酸化分解されやすく、これが着色変化の原因となります。変色はカテコール類の酸化産物によるものです。
パーキンソン病患者は高齢者が多く、複数の薬剤を服用しているケースが大半です。一包化対応の際には、アルカリ性を示す薬剤がないかを事前に確認することが必須です。
確認が必要な代表的なアルカリ性薬剤には、酸化マグネシウム(マグミット)、炭酸水素ナトリウム含有製剤などがあります。もし一包化が困難な組み合わせであれば、別包にして投与管理する方法を患者・介護者に説明し、服薬支援ツールの活用を検討してください。
また、PTP包装の薬剤をシートから取り出して服用する際のリスクについても、添付文書では「PTPシートを誤飲しないよう指導すること」と記載されています。高齢のパーキンソン病患者では視力低下や手指の動作困難が合併していることも多く、取り出し補助デバイスなどを紹介することも一助となります。
今日の臨床サポート:マドパー配合錠L50・L100の適用上の注意(一包化・PTP誤飲の記載)