クロラゼプ酸二カリウムの商品名と薬理的特性を完全解説

クロラゼプ酸二カリウムの商品名「メンドン」を基軸に、薬理作用・代謝経路・依存性リスク・投薬制限まで医療従事者が知るべき情報を網羅。あなたはこの薬の"意外な側面"を知っていますか?

クロラゼプ酸二カリウムの商品名・薬理と臨床での正しい使い方

活性体は"別の"として体内で働くため、飲んだ量だけで効果を判断すると誤処方を招きます。


この記事の3ポイント要約
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商品名はメンドンカプセル7.5mgのみ

クロラゼプ酸二カリウムの国内唯一の先発品はヴィアトリス製薬の「メンドンカプセル7.5mg」。後発品は存在せず、処方時には商品名と規格を正確に把握する必要があります。

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体内で"別の薬"ノルジアゼパムに変換される

クロラゼプ酸二カリウム自体は活性が低く、服用後に脱炭酸を受けてノルジアゼパムへ変換されて初めて薬効を発揮します。半減期が長い長時間作用型の特性を持ちます。

⚠️
投薬は1回14日分が上限・向精神薬管理が必要

第三種向精神薬に該当し、厚生労働省告示第97号により投薬は1回14日分を限度とされています。処方せん医薬品であり、管理・記録義務も伴います。


クロラゼプ酸二カリウムの商品名「メンドン」の由来と基本情報



クロラゼプ酸二カリウムの国内における唯一の販売名(商品名)は、メンドンカプセル7.5mg(英文商標名:Mendon Capsules)です。製造販売元はヴィアトリス製薬合同会社(東京都港区麻布台)であり、YJコードは1124015M2038、薬価は1カプセル10.4円となっています。


商品名「メンドン(Mendon)」の名称の由来は、Mental(心)+ don(指導者)を組み合わせたものです。「心の疾患に使用される薬の指導的存在」という意味が込められており、発売当初からその薬効への期待を反映した命名となっています。


本剤の歴史は1964年にさかのぼります。フランスでクロラゼプ酸二カリウムが水溶性ベンゾジアゼピンとして合成され、1969年1月にフランスで「Tranxene(トランキセン)」の商品名で世界初の発売がなされました。日本では1970年より基礎研究が開始され、1979年3月13日に承認、同年12月より「メンドン7.5mg」として発売されました。その後、医療事故防止対策に基づき2009年6月に現在の販売名「メンドンカプセル7.5mg」に変更されています。


なお、2023年7月にはマイランEPD合同会社からヴィアトリス製薬合同会社へ製造販売が移管されています。現時点でクロラゼプ酸二カリウムの後発医薬品(ジェネリック)は国内に存在せず、先発品のメンドンカプセル7.5mgのみが流通しています。これは特筆すべき点です。


薬効分類番号は1124(抗不安剤)、ATCコードはN05BA05。規制区分は向精神薬(第三種向精神薬)かつ処方箋医薬品であり、取り扱いには厳格な法的管理が伴います。


| 項目 | 内容 |
|------|------|
| 販売名 | メンドンカプセル7.5mg |
| 一般名 | クロラゼプ酸二カリウム |
| 製造販売元 | ヴィアトリス製薬合同会社 |
| 発売年 | 1979年12月 |
| 薬価 | 10.4円/カプセル |
| 規制区分 | 向精神薬(第三種)、処方箋医薬品 |
| 投薬制限 | 1回14日分を限度 |


国内での適応は「神経症における不安・緊張・焦燥・抑うつ」に限られています。一方、米国・英国・フランスなど世界29カ国では抗てんかん薬(部分発作への付加療法)やアルコール離脱時の譫妄にも承認されていますが、日本では抗てんかん薬の適応は取得されていません。適応外使用の範囲については後述のセクションで詳しく説明します。


参考リンク(商品名・規格など基本情報の確認に有用)。
KEGGデータベース:クロラゼプ酸二カリウム商品一覧・規格・薬価


クロラゼプ酸二カリウムの薬理作用とノルジアゼパムへの代謝経路

クロラゼプ酸二カリウムは、ベンゾジアゼピン系薬物の中でも特異な「プロドラッグ的性質」を持つ点で注目されます。服用後、胃の酸性環境の中ではなく、体内で脱炭酸を受けて主代謝物のノルジアゼパム(nordazepam)に変換されます。血漿中では、クロラゼプ酸二カリウムそのものはほとんど検出されず、ほぼ全量がノルジアゼパムとして認められます。つまり実際に薬効を発揮するのは、クロラゼプ酸二カリウム自体ではなくノルジアゼパムです。


ノルジアゼパムはさらにCYP3A4を介した水酸化を受け、オキサゼパムおよびパラヒドロキシノルジアゼパム(またはその抱合体)へと代謝され、体外へ排泄されます。投与後の排泄は主に尿中(投与量の62〜67%)で行われ、糞便中への排泄は投与量の15〜19%程度です。


作用機序については、GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位(αサブユニット)に結合し、塩化物イオン(Cl⁻)の細胞内流入を増強します。その結果、神経細胞膜が過分極し、大脳皮質・大脳辺縁系の過剰活動が抑制されて抗不安効果が発現します。これはジアゼパムと共通の作用機序です。


薬物動態パラメータで特筆すべきは吸収速度の速さです。健康成人に15mgを空腹時単回投与した場合、活性代謝物ノルジアゼパムの血漿中Tmaxは0.5〜1.0時間と非常に迅速です。さらに、投与24時間後もピーク時の1/2の濃度を維持するという長時間作用型の特性があります。反復投与では投与開始後7日で定常状態に達し、その後も0.41〜0.48μg/mLの安定した血中濃度を保ちます。血漿タンパク結合率は98%と高く、脂質親和性が高い薬物です。


動物実験では、主代謝物ノルジアゼパムはクロラゼプ酸二カリウムと同程度の薬理作用を持つことが報告されています。筋弛緩作用についての比較では、傾斜板試験(マウス)においてジアゼパムよりも弱い結果が示されており、鎮静や筋弛緩より不安緩和効果が前面に出やすい特性があります。これが臨床での使いやすさにつながっています。


| 薬理作用 | ジアゼパムとの比較 |
|----------|--------------------|
| 馴化静穏作用 | 鎮静発現域がジアゼパムより広い(攻撃抑制 0.25mg/kg〜、鎮静 7.5mg/kg〜) |
| 抗痙攣作用 | ほぼ同等 |
| 抗うつ作用 | ジアゼパムの4倍(マウス改良DOPA試験、50%有効量1mg/kg) |
| 筋弛緩作用 | 傾斜板試験でジアゼパムより弱い |


抗うつ作用がジアゼパムの4倍というデータは意外ですね。ただし、これはあくまで動物実験の結果であり、臨床上の抗うつ効果とは区別が必要です。


CYP3A4を介した代謝の観点から、リトナビル(ノービア)やニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッド)との併用は併用禁忌となっています。これらの薬剤がCYP3A4を競合的に阻害することで、クロラゼプ酸二カリウム(ノルジアゼパム)の血中濃度が大幅に上昇し、過度の鎮静や呼吸抑制を引き起こすリスクがあるためです。COVID-19治療薬であるパキロビッドが臨床現場で広まった現在、この点の確認は必須です。


参考リンク(薬物動態・代謝データの詳細確認に有用)。
PMDA:日本薬局方 クロラゼプ酸二カリウムカプセル 添付文書


クロラゼプ酸二カリウムの効能・用法と投薬期間制限の実務ポイント

国内での承認適応は「神経症における不安・緊張・焦燥・抑うつ」です。用法・用量は通常、成人にはクロラゼプ酸二カリウムとして1日9〜30mgを2〜4回に分けて経口投与します。メンドンカプセル7.5mgを使用する場合、1日2〜4カプセルを2〜4回に分けて投与することになります。年齢・症状に応じた適宜増減が認められています。


投薬期間制限は必須の確認事項です。本剤は厚生労働省告示第97号(平成20年3月19日付)に基づき、1回の投薬につき14日分を限度とされています。これは第三種向精神薬であることに由来する制限であり、診療報酬の算定上も重要な意味を持ちます。なお、海外渡航など特殊事情がある場合には例外的に1回30日分まで処方が認められることがありますが、30日を超えることは不可です。


14日制限という縛りは実務で見落としやすいポイントです。慢性疾患の患者に継続処方する際、安易に30日・60日などの長期処方を出すと、保険請求が返戻・査定される可能性があります。電子カルテ・処方システムのアラート設定確認が有用です。


禁忌については以下の通りです。



  • 急性閉塞隅角緑内障のある患者(抗コリン作用による眼圧上昇)

  • 重症筋無力症のある患者(筋弛緩作用による症状悪化)

  • リトナビル(ノービア)投与中の患者(CYP3A4阻害による血中濃度上昇)

  • ニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッド)投与中の患者(同上)


高齢者への投与は特に慎重が必要です。運動失調等の副作用が発現しやすいため、少量から開始することが原則です。腎機能障害・肝機能障害のある患者でも排泄が遅延して血中濃度が高くなるリスクがあります。肝機能異常者には定期的な肝機能検査(ALT・AST・ALP)の実施が推奨されています。


妊婦への投与も要注意です。他のベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム)で奇形を有する児等の報告があり、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与可能とされています。授乳中は授乳を避けるよう指導する必要があります。活性代謝物ノルジアゼパムの乳汁中への移行が報告されているためです。


臨床有効率データも参考になります。国内臨床試験での有効率は、神経症の不安に対して84%(261/310例)、緊張に対して82%(168/205例)、焦躁に対して79%(200/252例)、抑うつに対して77%(152/198例)と高い有効性を示しています。ベンゾジアゼピン系の中では長時間作用型に分類され、作用時間が長い分、症状の日内変動が少なく、持続的な抗不安効果が期待できます。


参考リンク(処方日数制限の一覧確認に有用)。
Pharmacista:処方日数制限がある医薬品一覧【麻薬・向精神薬】


クロラゼプ酸二カリウムの副作用・依存性リスクと離脱症状への対処

副作用の全体頻度については、承認までの臨床試験1,223例および市販後調査10,110例の合計11,333例中796例(7.0%)に何らかの副作用が認められています。この数字が基準です。主な副作用は眠気(4.0%)、めまい・ふらつき(1.7%)、易疲労感・脱力感・倦怠感(1.2%)で、これら3つで副作用の大半を占めます。


なかでも医療従事者が最も意識すべき重大な副作用は「依存性」です。連用により薬物依存を生じることがあり、添付文書でも使用期間と用量への注意が重ねて記載されています。依存の観点から、「漫然とした継続投与による長期使用を避けること」が重要な基本的注意として明記されています。


依存性と同様に注意が必要なのが、急激な減量・中止による離脱症状です。連用中に投与量を急激に減少または中止した場合、痙攣発作、せん妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想などの離脱症状が出現することがあります。これらの症状はベンゾジアゼピン系薬物すべてに共通するリスクですが、特に半減期の長い本剤では症状の出現が遅れる場合もあり、見落としに注意が必要です。投与を中止する際は、必ず徐々に減量するという原則が基本です。


離脱症状が遅れて出現することがある、という点は意外ですね。半減期が長いため、中止後24〜48時間以上経ってから症状が顕在化するケースもあります。


過量投与が疑われる場合の拮抗薬として、フルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)の投与が選択肢となります。ただし、フルマゼニルを投与した後に本剤を投与する場合は、鎮静・抗痙攣作用が変化・遅延するおそれがある点も忘れてはなりません。


副作用の頻度別整理。


| 頻度 | 主な副作用 |
|------|------------|
| 0.1〜5%未満 | 眠気、めまい・ふらつき、頭痛・頭重、不眠、舌のもつれ、便秘、食欲不振、口渇、悪心・嘔吐、易疲労感、AST・ALT上昇、発疹、蕁麻疹 |
| 0.1%未満 | 興奮、ALPの上昇、流涎、下痢、腹部膨満感、筋弛緩等の筋緊張低下、排尿困難、発汗、性欲減退、視力障害、浮腫 |
| 頻度不明 | 白血球減少症 |
| 重大(頻度不明) | 依存性、刺激興奮、錯乱 |


自動車運転等への影響も重要な説明事項です。眠気・注意力低下・反射運動能力の低下が起こることがあるため、投与中は自動車の運転など危険を伴う機械操作を避けるよう患者指導が求められます。薬剤師による服薬指導でも必ず伝えるべきポイントです。


参考リンク(ベンゾジアゼピン系の依存性・副作用の詳細な解説に有用)。
杉浦こころのクリニック:抗不安薬の分類と依存性について


医療従事者が知るべき「メンドンの適応外使用」と国際的なエビデンス

クロラゼプ酸二カリウムは日本では抗不安薬(神経症の不安・緊張・焦燥・抑うつ)としてのみ承認されていますが、海外では全く異なる評価を受けています。これが多くの医療従事者にとって意外な事実です。


米国・英国・フランスを筆頭に世界29カ国で、クロラゼプ酸二カリウムは部分てんかんへの付加療法薬として承認されています。米国では「Tranxene(トランキセン)」「ClorazeCaps」「ClorazeTabs」「GenXene」など複数の商品名で流通しています。日本てんかん学会は適応外薬の要望として、この国内適応の拡大を求めており、難治の部分てんかんにおけるエビデンスレベルは「レベル2」と評価されています。


臨床エビデンスとして代表的なのは、Wilensky AJらの無作為二重盲験交差試験(Neurology 1981;31:1271-6)です。18歳以上の難治部分発作を有する42例において、クロラゼプ酸(CLZ)とフェノバルビタール(PB)を比較したところ、CLZ併用群の方が発作が少なく(p<0.01)、副作用も少ない(p<0.01)という結果が出ました。試験終了後に30例がCLZ継続を選択したことも注目されます。


また、国内の研究者によるSugai K.(Epilepsia 2004)の報告では、難治てんかんに対してクロラゼプ酸を投与した170例のうち、4週間以上の投与で50%以上の発作抑制が得られた例は70%、6ヵ月以上継続できた86例では80%という高い有効率が示されています。特に部分発作への有効性が高く、副作用は減量・中止で全例消失しています。


日本では14日しか投薬できない薬が、海外では長期の抗てんかん薬として処方されているという事実は重要です。適応の違いを正確に理解することが、誤った投薬期間の判断を防ぐうえで必要です。


アルコール離脱時の譫妄(delirium tremens)への使用も海外では認められています。米国での用法は30mgを1日2〜4回で開始し、最大90mgまで1日2〜4回で投与するというものです。この用量は日本での承認用量(1日9〜30mg)を大きく超えており、適応外での使用には特段の慎重さが求められます。


一方、長期投与における耐性(tolerance)形成の問題も見逃せません。上記Sugai Kの報告では、副作用などで中止した例を除いた112例の48%で耐性が生じており、そのうち50%は投与開始2ヵ月以内に耐性が形成されたとされています。ただし、2ヵ月以降は耐性形成の頻度が漸減し、1年以後は3例のみでした。これは長期使用を検討する際の重要な参考情報です。


参考リンク(てんかんへの適応外使用のエビデンス詳細に有用)。
日本てんかん学会:クロラゼプ酸二カリウムの適応外薬要望書(PDF)


クロラゼプ酸二カリウムの保管・取り扱い上の注意と処方実務での確認ポイント

メンドンカプセル7.5mgは物理化学的な安定性に注意が必要な薬剤です。原薬は光によって徐々に黄色に変色するという性質があります。また、湿度への感受性も高く、臨界相対湿度は25℃で60%RH付近と確認されています。高湿度条件(82%RH以上)では含量低下や分解生成物の増加が認められています。保管上の注意として、アルミピロー開封後は吸湿に注意することが添付文書に明記されています。


室温保存が原則で、PTP包装品については30℃・90%RHの条件下でも3ヵ月の安定性が確認されています。開封後は乾燥剤付きで密閉保管することが推奨されます。


処方実務でのチェックリストとして医療従事者が確認すべき点をまとめます。



  • ⚠️ 投薬は1回14日分が上限(向精神薬第三種・告示第97号)——処方箋の日数欄の確認は必須です

  • ⚠️ パキロビッド(ニルマトレルビル・リトナビル)との併用禁忌——COVID-19治療中の患者で特に要確認

  • ⚠️ 中止時は徐々に減量——急激な中止は痙攣・せん妄などの離脱症状を引き起こすリスクあり

  • ⚠️ 妊婦・授乳婦への投与原則禁止——ノルジアゼパムの乳汁移行が報告されている

  • ⚠️ 高齢者は少量から開始——運動失調・転倒リスクに注意

  • ⚠️ 肝機能障害患者では定期的なALT・AST・ALP検査を実施する

  • ⚠️ 自動車運転禁止の患者指導を必ず行う


向精神薬としての記録・管理義務についても確認が必要です。第三種向精神薬は麻薬及び向精神薬取締法の規制下にあり、保管・譲渡・廃棄に関する記録の保存義務があります。薬局では向精神薬管理簿の整備が必要であり、医療機関でも適切な帳簿管理が求められます。これを怠ると法的リスクを伴う点を改めて認識することが大切です。


処方箋への記載も正確さが問われます。一般名「クロラゼプ酸二カリウム」で処方された場合、薬局では「メンドンカプセル7.5mg」を調剤することになりますが、後発品は存在しないためブランド変更は不要です。ただし、規格(7.5mg)の確認と用量計算には注意が必要で、1日投与量をカプセル数で換算する際にミスが生じやすいため、処方監査での確認ポイントとして押さえておくことが重要です。


参考リンク(投与期間に上限が設けられている医薬品の管理実務に有用)。
愛媛大学医学部附属病院:投薬期間に上限のある医薬品(2023年4月改訂版)PDF






【指定第2類医薬品】イブA錠 90錠