クラリシッドドライシロップ販売中止と代替薬の選び方

クラリシッドドライシロップの販売中止について、背景・時期・代替薬の選択肢を医療従事者向けに解説。後発品への切り替え時に注意すべきポイントとは?

クラリシッドドライシロップ販売中止と代替薬・経過措置の全情報

後発品に切り替えれば品質も安定供給も問題ない、と思っていたとしたら、それで患者への投与が遅れるリスクがあります。


この記事の3ポイント要約
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販売中止の経緯

クラリシッドドライシロップ10%小児用は2021年5月に日本ケミファより販売中止が告知され、2022年6月末に在庫終了。薬価削除の経過措置期限は2023年3月31日まででした。

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代替薬の状況

主な代替品はクラリスドライシロップ10%小児用(大正製薬)ですが、2023年12月〜2024年8月の間に限定出荷・出荷停止が発生。後発品各社も同時期に供給不安定となりました。

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医療従事者が知るべき注意点

後発品間でも苦味・溶解性・品質特性に差があります。銘柄指定変更時は服薬アドヒアランスへの影響を考慮し、患者・保護者への服薬指導を行うことが重要です。


クラリシッドドライシロップ10%小児用が販売中止になった経緯と背景



クラリシッドドライシロップ10%小児用(一般名:クラリスロマイシン、製造販売:日本ケミファ株式会社)は、2021年4〜5月付けで販売中止のご案内が医療関係者に向けて発出されました。中止の理由は「諸般の事情」とされており、具体的な製造上の問題や安全性に関わる理由ではなく、製造・販売上の経営判断によるものです。


もともとクラリシッドはアボットジャパンが製造販売を行っていましたが、2020年7月1日に販売が日本ケミファへ移管されました。移管後わずか約1年という短い期間でドライシロップ剤の販売中止が決定された経緯があります。


弊社在庫の終了時期は2022年6月末を予定として公表されました。なお、薬価削除の経過措置期間は2023年3月31日までと設定されており、その期限内であれば保険請求が可能でしたが、2023年4月以降はクラリシッド・ドライシロップ10%小児用の薬価は抹消されています。


つまり2023年以降は保険請求そのものができません。


なお、同じクラリシッドブランドの錠剤製品である「クラリシッド錠200mg」および「クラリシッド錠50mg小児用」については販売が継続されています。ドライシロップ剤のみが中止対象となった点は、特に小児医療に関わる医師・薬剤師にとって重要な情報です。


経過措置期間中は、レセプトコンピュータの設定変更が必要になるケースがあります。愛知県保険医協会の情報によれば、「名称変更や販売中止の場合は、変更後の品名でなければ使用・請求ができない」とされており、期限切れ後も旧品名で請求し続けることは保険点数の誤請求につながる可能性があります。レセコンの設定確認は必須です。


参考資料:愛知県保険医協会「2023年3月31日付けで廃止となる経過措置医薬品」
https://aichi-hkn.jp/news/14329


クラリシッドドライシロップ販売中止後の代替薬一覧と各社の特徴

クラリシッドドライシロップ10%小児用の販売中止後、日本ケミファが公式に案内した代替製品は大正製薬の「クラリスドライシロップ10%小児用」です。同剤は先発品として薬価が85.3円/gとなっており、クラリシッドのドライシロップと同じクラリスロマイシンを主成分とする製剤です。


後発品(ジェネリック医薬品)としては、複数のメーカーから同成分製剤が販売されています。主な後発品は以下の通りです。


製品名 製造販売元 薬価(/g) 区分
クラリスドライシロップ10%小児用 大正製薬 85.3円 先発品
クラリスロマイシンDS10%小児用「大正」 大正製薬(AG) 85.3円 後発品(AG)
クラリスロマイシンDS10%小児用「サワイ」 沢井製薬 57.9円 後発品
クラリスロマイシンDS小児用10%「タカタ」 高田製薬(塩野義) 57.9円 後発品
クラリスロマイシンDS小児用10%「トーワ」 東和薬品 57.9円 後発品
クラリスロマイシンドライシロップ10%小児用「NIG」 日医工 57.9円 後発品


後発品の薬価は先発品の約68%水準に設定されており、医療費の節減という観点では後発品への切り替えが推奨されやすい状況です。ただし、薬価が同じであれば性能・品質も均一というわけではありません。これが重要な点です。


特に小児向けドライシロップ剤においては、同じ主成分でも製品によって苦味の感じ方、粒子の大きさ、溶解性、懸濁時の安定性に差があることが複数の研究で示されています。日本小児臨床薬理学会の論文では、成人の味覚試験で銘柄を選定した結果を小児に適用した場合の服薬アドヒアランスについて検討されており、苦味が服薬拒否の主要因であることが報告されています。


参考資料:日本小児臨床薬理学会雑誌(J-stage)「成人の味覚試験で選定されたクラリスロマイシンドライシロップの後発薬品と先発薬品の比較による小児患者の服薬アドヒアランス調査」
https://cir.nii.ac.jp/crid/1523669556027566848


クラリスドライシロップ小児用の限定出荷問題と供給不安定リスク

クラリシッドドライシロップの販売中止後、代替品として位置づけられたクラリスドライシロップ10%小児用(大正製薬)が、2023年12月から限定出荷・出荷停止に入るという事態が発生しました。原因は「原材料の一部の供給遅延」とされています。この出荷停止は2024年2月まで継続し、供給再開のめどがついたのは2024年8月でした。


約8ヶ月にわたって先発品が入手困難な状況が続いたことになります。


この期間中、後発品各社のクラリスロマイシンDSも複数メーカーで限定出荷や供給制限を実施しており、代替先を確保することが難しいケースが生じました。医療用医薬品供給状況データベース(DSJP)では、この時期に複数のメーカーが「限定出荷」「出荷調整」のステータスであったことが記録されています。


この問題は医療現場にとって、単なる1品目の販売中止という話にとどまらないことを示しています。供給が集中する原材料(原薬)に問題が生じると、メーカーをまたいで同成分製剤が同時に不足するというドミノ現象が起き得るということです。


薬剤師の観点からは、定期的に医薬品供給状況データベース(DSJP:https://drugshortage.jp)を確認し、在庫切れリスクを把握しておくことが有効な対策となります。また採用候補として複数メーカーの後発品を把握しておくことで、緊急時の切り替えもスムーズになります。供給不安定が続く昨今、代替候補を1社だけに絞ることは避けるべきです。


参考資料:DSJP(医療用医薬品供給状況データベース)
https://drugshortage.jp


参考資料:Medical Tribune「クラリスドライシロップ小児用10%、限定出荷解除」(2024年8月5日)


クラリスロマイシンドライシロップ後発品の品質差と服薬指導の注意点

クラリシッドドライシロップが販売中止となり、後発品への切り替えが進む中で、医療従事者が見落としやすい重要な問題があります。それは「後発品間で品質・服用性に差がある」という事実です。


クラリスロマイシンドライシロップは強い苦味を持つことで知られています。先発品であるクラリスドライシロップ10%小児用はストロベリー風味の苦味マスキングが施されていますが、後発品各社の製剤では添加物・製造方法が異なるため、苦味のマスキング効果、粒子径、懸濁時の分散性に差が生じます。


日本薬学会誌(YAKUGAKU ZASSHI)に掲載された研究では、クラリスロマイシンDSと各種カルボシステイン製剤を混合した際の苦味強度において、先発品と後発品間で明確な差が確認されています。後発品によっては先発品より苦味が強く感じられる製品もあり、カルボシステイン製剤との併用で苦味が増強するケースも報告されています。


苦味が強くなると小児では服薬拒否が起きやすくなります。


また、高温環境下での品質変化という問題も存在します。クラリシッドドライシロップにおいても、70℃で加熱した際に溶出率が60%まで低下し、日本薬局方の溶出規格から外れることが報告されています(日経メディカル 2022年8月記事より)。夏季の保管や、炎天下でのドラッグストア購入後の帰宅中など、患者が気づかない形で品質が変化している可能性があります。


服薬指導の場面で患者・保護者に伝えるべき具体的なポイントは次の通りです。


  • 🌡️ 保管温度を守る:室温保存品であっても、直射日光・高温多湿の環境は避ける。特に夏季の車内・窓際保管は厳禁です。
  • 💧 懸濁直前に溶かす:水に溶かしたまま時間を置くと苦味が出やすい。飲ませる直前に少量の水(小さじ1〜2杯程度)で懸濁するよう指導します。
  • 🍫 混ぜる飲食物に注意するコーヒー牛乳・ピュアラルグミなど中性〜アルカリ性に近い飲食物は苦味を軽減します。一方、スポーツ飲料・オレンジジュースなど酸性飲料と混合すると苦味マスキングが壊れて強い苦味が出ます。
  • 🔄 銘柄変更時は再確認:薬局で銘柄が変わった場合、見た目・味・粒感が変わることがあります。保護者に変更の事実を伝え、疑問が出た場合は薬剤師に相談するよう説明します。


参考資料:くすりの適正使用協議会「クラリスロマイシンDS10%小児用「サワイ」」
https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=10597


クラリスロマイシン小児用製剤の適応症と処方上の独自視点——百日咳流行への備え

一般的に「クラリシッドドライシロップ販売中止=代替品に切り替えれば終わり」という認識で止まっている医療従事者も少なくありません。しかし、2024〜2025年にかけて百日咳の流行が国内外で顕著になっていることを踏まえると、クラリスロマイシン小児用製剤の適応範囲と処方上の優先事項を改めて整理しておく意義があります。


クラリスロマイシン小児用製剤(ドライシロップ・錠剤)の主な適応症は、皮膚感染症・呼吸器感染症・耳鼻科領域感染症など幅広い感染症の他、百日咳も含まれています。実は百日咳の電子添文上の適応は小児用クラリスロマイシン製剤にある点です。


マイコプラズマ肺炎については、小児に対してクラリスロマイシンDSを1日あたり体重1kgあたり10〜15mgを2〜3回に分けて経口投与するのが基本です。百日咳においても、生後6ヶ月以上の小児に対してクラリスロマイシンが推奨されています(IDATEN:日本感染症教育研究会のプロトコルより)。


ただし重要なのは、百日咳菌のマクロライド耐性の問題です。中国での2024年の流行データでは百日咳菌のマクロライド耐性率が70〜100%に達しているとされており、クラリスロマイシンの効果が得られないケースが増えています。国内でも耐性株の動向に注意が必要な状況になりつつあります。


こうした耐性の広がりを踏まえると、単に「クラリスロマイシンDSが入手できれば問題なし」という発想では不十分です。


実臨床では以下の視点を持つことが重要になります。


  • 🦠 マクロライド感受性の確認:百日咳が疑われる場合、特に治療反応が芳しくない場合はマクロライド耐性を考慮し、ST合剤(トリメトプリム・スルファメトキサゾール)への切り替えを検討する。
  • 📋 処方箋記載の工夫:供給不安定時に備え、「クラリスロマイシンDS10%小児用(銘柄不問)」といった記載を行い、薬局での代替対応を円滑にする。
  • 🏥 病院・薬局間の情報共有:限定出荷情報は製薬メーカーから直接通知されないこともあります。薬薬連携(病院薬剤師と保険薬局薬剤師の連携)を通じて最新情報を共有することが重要です。


厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編」では、百日咳に対するマクロライド系薬の推奨事項が詳細に記載されています。


参考資料:厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編」(2026年1月更新版)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001630903.pdf


参考資料:日本ケミファ「販売中止のご案内(クラリシッド・ドライシロップ10%小児用)」
https://www.nc-medical.com/product_topics/doc/S-2620_klaricid_ds.pdf






【指定第2類医薬品】イブA錠 90錠