コディオ配合錠で降圧が安定したと思ったら、実は皮膚がんリスクが1.58倍に上昇していることがあります。

コディオ配合錠は、選択的AT₁受容体ブロッカー(ARB)のバルサルタン80mgと、チアジド系利尿薬のヒドロクロロチアジド(MD剤:6.25mg、EX剤:12.5mg)を組み合わせた配合剤です。ノバルティスファーマが製造販売しており、薬価はMD錠が26.6円/錠、EX錠が27.1円/錠と比較的リーズナブルな水準にあります。
添付文書の用法・用量の項には「本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない」という文言が明記されています。これは単なる慣用句ではありません。これが基本です。
添付文書5.1では「過度な血圧低下のおそれ等があり、本剤を高血圧治療の第一選択薬としないこと」、5.2では「原則として、バルサルタン80mgで効果不十分な場合に本剤の使用を検討すること」と踏み込んで規定されています。つまり、いきなりコディオ配合錠から降圧治療を開始することは、添付文書上、想定外の使い方ということです。
🔹 MDとEXの違いは何か?
| 項目 | コディオ配合錠MD | コディオ配合錠EX |
|---|---|---|
| バルサルタン | 80mg | 80mg |
| ヒドロクロロチアジド | 6.25mg | 12.5mg |
| 薬価 | 26.6円/錠 | 27.1円/錠 |
| YJコード | 2149112F1022 | 2149112F2029 |
ヒドロクロロチアジドの含有量だけが異なります。EX剤はMD剤の2倍の利尿薬成分を含み、より強い降圧が期待できる反面、電解質への影響も大きくなります。降圧が足りないからといって安易にEXへ切り替える前に、電解質バランスの確認が不可欠です。
後発品(バルヒディオ配合錠など)も複数存在し、同一成分ですが、添付文書はそれぞれ確認が必要です。先発品の最新情報は、PMDAの医療用医薬品情報ページ(2025年9月9日改訂の第5版)で確認できます。
参考:コディオ配合錠MD/EXの最新添付文書情報(PMDA)
PMDA 医療用医薬品情報 コディオ配合錠MD(医療関係者向け)
禁忌の見落としは、医療事故に直結します。コディオ配合錠の禁忌は計8項目あり、ARB単剤と比べてチアジド系由来の禁忌が追加されている点が特徴です。覚えておくべきは以下の8点です。
特に注意が必要なのは、2番目のスルフォンアミド誘導体の過敏症歴です。意外ですね。スルホンアミド系抗菌薬にアレルギーがある患者では、ヒドロクロロチアジドも交差過敏を起こす可能性があるため、問診時に抗菌薬アレルギーの詳細まで確認する必要があります。
デスモプレシンとの禁忌も、意識しておきたい点です。男性の夜間頻尿(夜間多尿が原因のもの)に使われるミニリンメルトODフィルムとコディオ配合錠の同時処方は、両剤ともに低ナトリウム血症リスクを持つため、「禁忌」に分類されています。前立腺肥大と高血圧を合併した男性患者では、この組み合わせが生じやすいため、処方確認は必須です。
妊婦禁忌についても、2023年5月の添付文書改訂で運用が厳格化されています。これが原則です。ARBを含む製品では、「妊娠する可能性のある女性への投与前に妊娠していないことを確認すること」「投与中も定期的に妊娠していないことを確認すること」が明記されました。つまり、処方時の一度確認だけでは不十分ということです。
参考:ARB等の添付文書改訂内容(2023年)
ARBなどRA系阻害薬で添付文書改訂 妊娠する可能性のある女性への注意(ミクスOnline)
2025年9月9日付の改訂(第5版)では、ヒドロクロロチアジドを含む多くの降圧薬に共通する形で、重大な副作用の項目に「急性近視・閉塞隅角緑内障・脈絡膜滲出」が新設されました。これは使えそうな情報です。
この3つの眼科的副作用はいずれも「頻度不明」とされていますが、投与後に急激な視力の低下・眼痛・霧視などが出現した場合、ヒドロクロロチアジドを起因薬として疑う視点が必要です。現場での対応フローは、症状出現→すみやかな眼科受診の指示→場合によっては本剤の中止、という順になります。
添付文書8.4にも「急激な視力の低下や眼痛等の異常が認められた場合には、直ちに眼科医の診察を受けるよう、患者に指導すること」と明記されています。つまり、服薬指導の段階でこの副作用を伝えることが医療従事者の義務ということです。
🔹 2025年改訂前後の主な副作用比較(重大な副作用)
| 副作用 | 改訂前 | 改訂後(2025年9月) |
|---|---|---|
| 急性近視 | 記載なし | 新設(頻度不明) |
| 閉塞隅角緑内障 | 記載なし | 新設(頻度不明) |
| 脈絡膜滲出 | 記載なし | 新設(頻度不明) |
| 肝機能障害・黄疸 | 記載あり | 引き続き記載 |
| 低ナトリウム血症 | 記載あり | 引き続き記載 |
| 横紋筋融解症 | 記載あり | 引き続き記載 |
また、以前から注意喚起されている副作用として、高尿酸血症があります。添付文書8.2では「定期的に血清尿酸値のモニタリングを実施し、観察を十分に行うこと」とされており、投与開始後は定期採血が前提です。低カリウム血症についても同様に、添付文書8.3でモニタリングの実施が義務づけられています。
肝障害患者(特に胆汁性肝硬変・胆汁うっ滞)では、バルサルタンの血漿中濃度が健康成人の約2倍に上昇するという海外データがあります。これは血中濃度が思わぬ高値になりうることを示しており、肝機能の定期確認が重要です。
参考:ヒドロクロロチアジドを含む降圧薬の眼科的副作用に関する注意喚起(厚生労働省 2025年5月)
急性近視・閉塞隅角緑内障・脈絡膜滲出の新たな副作用—厚労省(GemMed)
コディオ配合錠の相互作用は、ARB(バルサルタン)由来とヒドロクロロチアジド由来の両方が混在しており、単剤処方時より格段に複雑です。
まず、ビキサロマー(腎疾患患者の高リン血症治療薬) との同時服用です。これは特に重要です。添付文書10.2の併用注意欄に「バルサルタンの血中濃度が約30〜40%に低下した」と明記されており、降圧効果が著しく減弱するリスクがあります。約30〜40%というのは、バルサルタンの有効域の相当部分を失う可能性を意味します。リン吸着薬との服用時間をずらすことで吸収への影響を軽減できるとされているため、CKD患者でビキサロマーを使用中の場合は服用タイミングの指導が必要です。
次に、ジギタリス製剤(ジゴキシン等) との注意です。ヒドロクロロチアジドによる低カリウム血症がジギタリスの毒性を増強させます。カリウム低下→ジギタリス毒性増強→不整脈、という連鎖が起こりうるため、ジゴキシンと一緒に処方されている患者では電解質モニタリングが特に重要になります。
🔹 主な相互作用まとめ
| 相手薬 | 区分 | 主な影響 |
|---|---|---|
| アリスキレン(糖尿病患者) | 併用禁忌 | 非致死性脳卒中・腎機能障害・高K血症・低血圧のリスク増加 |
| デスモプレシン(夜間頻尿) | 併用禁忌 | 低ナトリウム血症リスク |
| ビキサロマー | 併用注意 | バルサルタン血中濃度が約30〜40%低下 |
| NSAIDs(インドメタシン等) | 併用注意 | 降圧作用減弱・腎機能悪化リスク |
| ジゴキシン等ジギタリス製剤 | 併用注意 | 低K血症によるジギタリス毒性増強・不整脈 |
| カリウム保持性利尿薬 | 併用注意 | 高カリウム血症リスク |
| スピロノラクトン | 併用注意 | 血清カリウム値上昇 |
手術前24時間は投与しないことが望ましいという点も、添付文書8.6に明記されています。これも現場で盲点になりやすい点です。麻酔下ではレニン−アンジオテンシン系の抑制作用が残存し、重篤な低血圧を引き起こす可能性があるためです。また、ヒドロクロロチアジド由来の昇圧アミン(ノルアドレナリン等)への反応性低下が術中管理を困難にする可能性もあります。術前患者の持参薬確認時には、コディオ配合錠が含まれていないか必ず確認しましょう。
参考:コディオ配合錠の詳細な相互作用情報(KEGG医薬品情報)
医療用医薬品:コディオ(コディオ配合錠MD他)— KEGG
医療従事者の多くが見落としがちなのが、ヒドロクロロチアジドの「皮膚がんリスク」です。コディオ配合錠の添付文書「その他の注意」の欄に、「海外で実施された疫学研究において、ヒドロクロロチアジドを投与された患者で、基底細胞癌及び有棘細胞癌のリスクが増加することが報告されている」と記載されています。
日本国内のデータでも、ヒドロクロロチアジド使用者は非使用者に比べて皮膚がんリスクがハザード比1.58(95%信頼区間1.04〜2.40)と有意に高かったとする研究が報告されています。ハザード比1.58というのは、使用者が非使用者と比べて約1.6倍の皮膚がん発症リスクを持つことを意味します。これはちょうど、10万人のうち余分に5,800人に相当する規模のリスク増加です。
この副作用の機序は、ヒドロクロロチアジドの光感受性増強作用(光毒性・光発癌性)によるものと考えられています。紫外線曝露が多い患者や、屋外での活動が多い患者では特に注意が必要です。
添付文書には「日光への曝露を避けること」といった形での明示的な患者指導文言はない一方、実臨床では長期投与患者への日光曝露に関する指導が求められます。特に夏季や、レジャー・農業従事者などでは積極的な情報提供が望ましいです。
🔹 長期使用時に継続モニタリングすべき検査値
| モニタリング項目 | 根拠(添付文書) | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| 血清カリウム値 | 8.3(低K血症リスク) | 定期的に実施 |
| 血清尿酸値 | 8.2(高尿酸血症リスク) | 定期的に実施 |
| 血清クレアチニン値 | 9.2.4 | 定期的に実施 |
| 肝機能検査 | 8.5 | 観察を十分に |
| 血圧・電解質 | 8.8 | 適宜 |
また、「夜間の休息が特に必要な患者には、夜間の排尿を避けるため、午前中に投与することが望ましい」(添付文書8.9)という記載も重要です。これも基本の一つです。高齢者や夜間に安静を要する患者への服薬指導では、服薬時間の調整を必ず案内しましょう。
さらに、高齢者(9.8項)では通常成人と比較してバルサルタンの血漿中濃度が高くなることが薬物動態試験で示されており、急激な利尿による脱水・立ちくらみ・失神、さらには脳梗塞等の血栓塞栓症リスクが高くなります。高齢患者への処方では、これらのリスクを念頭に置いた管理が求められます。
参考:ヒドロクロロチアジド使用による日本の高血圧患者の皮膚がんリスク研究
ヒドロクロロチアジド使用による日本の高血圧患者の皮膚がんリスク(聖路加国際大学)