「ゴロさえ覚えれば試験は大丈夫」と思っていると、患者への説明で3回に1回は詰まります。

加齢黄斑変性の抗VEGF薬を覚えるうえで、最も広く使われているゴロが「ペガらにアフリカカレー」です。これは薬剤師国家試験対策として多くの薬学生に知られており、3つの薬剤名の頭音をつなぎ合わせた暗記法になっています。
| ゴロの音 | 薬剤名(一般名) | 商品名 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| ペガ | ペガプタニブナトリウム | マクジェン® | VEGF165選択的阻害・核酸医薬 |
| らに | ラニビズマブ | ルセンティス® | 抗体フラグメント(Fab) |
| アフリカ | アフリベルセプト | アイリーア® | 融合タンパク・VEGF-A/B・PlGF阻害 |
| カレー | 【加齢】黄斑変性 | — | 疾患名の覚え方 |
「カレー」は薬剤名ではなく疾患の「加齢」を示す点が重要です。この構造を一度理解すると、単に音を並べているだけでなく、対象疾患との対応関係も同時に記憶に刻まれます。
ペガプタニブは、VEGFの中でも特に病的血管新生に関与するアイソフォーム「VEGF165」のみを選択的に阻害します。これは他の薬剤がVEGF-Aを広く阻害するのとは異なる点であり、試験でも問われやすい知識です。日本初の核酸医薬品(アプタマー)として2008年に発売された歴史的な薬剤でもあります。
ラニビズマブは抗体全体(IgG)ではなく、抗体の一部である「Fabフラグメント」の構造をもつ薬剤です。分子が小さいため硝子体内で拡散しやすく、網膜深部まで到達しやすいとされています。バイオシミラー(後発品)も現在は存在するため、コスト面での選択肢が広がっています。
アフリベルセプト(アイリーア®)は、VEGF-AだけでなくVEGF-B・PlGF(胎盤成長因子)にも結合する融合タンパク質製剤です。幅広い標的に結合できるため、複数の血管新生経路を同時にブロックできます。現在の滲出型加齢黄斑変性の標準治療における中心的存在です。
参考:薬剤師国家試験 第108回 問191 加齢黄斑変性症の解説ページ(薬物治療の適応と抗VEGF薬の位置づけ)
yakugaku lab:第108回薬剤師国家試験 問191 加齢黄斑変性症
「ペガらにアフリカカレー」の3薬だけを押さえていると、近年承認された新薬への対応が難しくなります。これが注意点です。
国内では2020年にブロルシズマブ(ベオビュ®)、2022年にファリシマブ(バビースモ®)が相次いで承認され、現場の選択肢が大幅に増えました。この2薬をゴロに追加する場合、「ペガらにアフリカカレー・ブロファリ」と延長して覚えると整理しやすくなります。
ブロルシズマブ(ベオビュ®)の特徴は、分子量が約26kDaと抗VEGF薬の中で最も小さい一本鎖抗体フラグメント(scFv)であることです。ラニビズマブの約半分の分子量であり、そのため1回の注射で眼内に到達できる分子数が多く、高い有効成分濃度を維持できます。維持期の投与間隔を最大12週まで延長できる可能性があり、患者の通院負担軽減が期待されています。
ファリシマブ(バビースモ®)は、眼科領域では初となるバイスペシフィック抗体です。バイスペシフィック抗体とは、2種類の異なる標的分子に同時に結合できる抗体のことで、バビースモはVEGF-AとAng-2(アンジオポエチン-2)の両方を中和します。Ang-2は血管を不安定化させて漏出や炎症を引き起こす因子で、従来の抗VEGF薬だけでは対処できなかった経路も同時にブロックできるのが強みです。維持期には16週ごとの投与も可能とされており、通院間隔の延長という点でも注目されています。
下の表で4薬の特徴を比較してみましょう。
| 薬剤名 | 商品名 | 標的 | 分子の種類 |
|---|---|---|---|
| ラニビズマブ | ルセンティス® | VEGF-A | Fabフラグメント |
| アフリベルセプト | アイリーア® | VEGF-A/B, PlGF | 融合タンパク |
| ブロルシズマブ | ベオビュ® | VEGF-A | scFv(一本鎖抗体) |
| ファリシマブ | バビースモ® | VEGF-A + Ang-2 | バイスペシフィック抗体 |
つまり、作用標的の「広さ」が世代ごとに拡大しているということです。ゴロは入口として有用ですが、各薬の標的の違いを把握することで、薬学的な質問にも対応できるようになります。
参考:日本眼科学会 新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン(抗VEGF薬の種類と位置づけ)
日本眼科学会:新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン(PDF)
ゴロを「ただ暗記する」のと「病態と対応させて覚える」のでは、知識の定着率に大きな差が出ます。これが基本です。
加齢黄斑変性(AMD)は、網膜の中心部である「黄斑」が障害される疾患で、日本における視覚障害の原因疾患の第4位に位置します(緑内障・白内障に次ぐ主要な失明原因疾患のひとつ)。日本人では90%以上が滲出型に分類されます。
滲出型は、脈絡膜新生血管(CNV:Choroidal Neovascularization)が発生し、その脆い血管から血液成分が漏出することで黄斑にダメージを与えます。新生血管の発生を促す主役がVEGF(血管内皮増殖因子)であり、これを抑制することが抗VEGF療法の根拠です。滲出型が薬物治療の主な対象です。
一方、萎縮型は網膜色素上皮細胞が萎縮することで視機能が低下するタイプで、日本人では少数派(全体の10%未満)ですが、欧米では多くの割合を占めます。重要な点は「萎縮型には長年、有効な薬物治療が存在しなかった」という事実で、この後のH3節で解説する最新薬の登場がいかに意義深いかがわかります。
試験でよく問われる引っかけとして、「薬物治療の対象は萎縮型か滲出型か」という問いがあります。薬剤師国家試験第108回問191でも「薬物治療の対象となるのは萎縮型である」という誤った記述が選択肢として出題されています。答えは滲出型です。ゴロを「抗VEGF薬=滲出型の治療」とセットで記憶に紐づけることで、この種の問題に即答できるようになります。
喫煙は加齢黄斑変性の最も確立したリスク因子で、喫煙者は非喫煙者の約4倍の発症リスクがあるとされています。医療従事者として患者への生活指導を行う場面でも、この数字は根拠として活用できます。
参考:ファーマスタイルWEB|加齢黄斑変性の基礎知識(日本大学病院 眼科 森隆三郎 診療教授による解説)
ファーマスタイルWEB:加齢黄斑変性の基礎知識(特集記事)
「薬の名前は覚えた、でも投与方法を聞かれると答えられない」という状況は、現場でのインシデントに直結するリスクがあります。
抗VEGF薬はすべて硝子体内注射(IVT注射)で投与します。点滴や経口投与はありません。硝子体注射は眼球の白目部分(角膜縁から約3.5〜4mm後方)から細い針を刺して薬液を硝子体腔内に直接届ける手技で、専門医が処置室や手術室で行います。薬剤師が調剤する際は無菌的な取り扱いが必要です。
各薬の標準的な投与スケジュールを確認しておきましょう。
| 薬剤名(商品名) | 導入期 | 維持期 |
|---|---|---|
| ラニビズマブ(ルセンティス) | 月1回×3回 | 月1回(PRNまたはT&E) |
| アフリベルセプト(アイリーア) | 月1回×3回 → 2か月ごと | 最大16週ごと(高用量製剤) |
| ブロルシズマブ(ベオビュ) | 月1回×3回 | 最大12週ごと |
| ファリシマブ(バビースモ) | 月1回×4回 | 最大16週ごと |
維持期の投与間隔が「最大12〜16週(約3〜4か月に1回)」まで延長できるようになったことは、患者の生活の質(QOL)向上に直結します。通院頻度が月1回から4か月に1回へと変わるのは、患者にとって大きな違いです。ちょうど夏から冬にかけての受診スパンになるイメージです。
一方、抗VEGF薬の硝子体注射は血中VEGF濃度を下げる副作用もあります。ごく微量ですが薬が血流に入り込み、脳梗塞などの動脈血栓塞栓症リスクが上昇することが知られています。そのため、脳梗塞の既往がある患者では投与回数を制限し、光線力学的療法(PDT)との併用が選択されることもあります。医療従事者として患者の既往歴を確認することは欠かせません。
投与間隔の管理を見落とすと視力維持に影響するため、患者の次回来院日管理にはしっかりとした仕組みが必要です。電子カルテのアラート設定や薬歴への投与日記録など、ミスを防ぐための具体的なアクションとして覚えておきましょう。
2025年9月19日、厚生労働省はアバシンカプタドペゴルナトリウム(アイザベイ®)を、萎縮型加齢黄斑変性の進行抑制薬として承認しました。これが重要です。
これは日本初の萎縮型加齢黄斑変性に対する薬物治療の承認です。長年「萎縮型には有効な薬がない」とされてきた常識が大きく変わった瞬間といえます。
アイザベイは「補体阻害薬」に分類されます。VEGF阻害とは異なるアプローチで、補体経路(免疫系の一部)の過剰活性化が網膜色素上皮の萎縮を促進するという病態に着目した薬剤です。アメリカでは2023年に先行承認されており、日本ではそれより2年遅れて承認に至りました。投与法はこれまでの抗VEGF薬と同様、硝子体内注射です。
ゴロに追加する場合、暫定的に「アイザベイ=萎縮型・補体阻害」とそのまま単語で覚えるのが最もシンプルです。萎縮型の患者を担当する場面が増えた際に、「治療の選択肢ができた」という知識が患者説明の幅を広げます。
まだ現場への普及は始まったばかりで、日本での治療実績・長期データはこれから蓄積される段階です。京都大学医学部附属病院では2026年1月から治療を開始したとのアナウンスがあり、全国の大学病院・専門施設での導入が進んでいます。
参考:京都大学医学部附属病院 眼科|国内初の萎縮型加齢黄斑変性治療薬 アバシンカプタドペゴルナトリウム(アイザベイ®)の治療開始について
京都大学医学部附属病院:国内初の萎縮型加齢黄斑変性治療薬アバシンカプタドペゴルナトリウムの治療開始(2026年2月)
下の表でこれまでの治療と比較すると整理しやすいです。
| 病型 | 治療の標的 | 代表薬 | 承認状況 |
|---|---|---|---|
| 滲出型 | VEGF・Ang-2など | アイリーア、バビースモなど | 複数承認・標準治療確立 |
| 萎縮型 | 補体経路(C3) | アイザベイ | 2025年9月に国内初承認 |
「萎縮型には薬がない」という従来の知識は、2025年以降は古い情報になっています。アップデートが必要です。現場で患者や家族から「萎縮型には何もできないの?」と問われた際、最新の情報を持っているかどうかが医療従事者としての信頼に直結します。

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