間歇注入シリンジポンプ加算(C152)は、施設基準の届出なしで算定できます。
持続皮下インスリン注入療法(CSII:Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)は、携帯型の小型インスリンポンプを用いて、皮下に留置したカニューレを通じて24時間インスリンを持続的に注入する治療法です。食事に応じた追加注入もボタン操作で行えるため、健康な膵臓の生理的なインスリン分泌パターンに近い血糖管理が実現できます。
主な対象は1型糖尿病患者のほか、膵全摘後の患者、血糖コントロールが不安定な2型糖尿病患者です。使用するインスリンは超速効型製剤1種類に絞られる点も特徴です。
保険診療では、CSIIを行っている外来患者(入院中患者を除く)に対して在宅自己注射指導管理料(C101)を基本として算定します。在宅自己注射指導管理料は月27回以下の場合650点、月28回以上の場合750点です。CSIIのポンプ本体の使用に対しては、C152(間歇注入シリンジポンプ加算)が2か月に2回を上限に加算されます。点数はプログラム付きシリンジポンプが2,500点、それ以外のシリンジポンプが1,500点です。
つまり基本構造はシンプルです。「在宅自己注射指導管理料 + 間歇注入シリンジポンプ加算」が、CSII単独管理の標準的な算定パターンになります。
重要なのは、C152(間歇注入シリンジポンプ加算)には、地方厚生局への施設基準の届出が不要という点です。要件の煩雑さに身構えている施設もありますが、ポンプ加算そのものの算定ハードルは高くありません。
| 区分番号 | 名称 | 点数 | 施設基準届出 |
|---|---|---|---|
| C101 | 在宅自己注射指導管理料(月28回以上) | 750点 | 不要 |
| C152(1) | 間歇注入シリンジポンプ加算(プログラム付き) | 2,500点 | 不要 |
| C152(2) | 間歇注入シリンジポンプ加算(その他) | 1,500点 | 不要 |
| C152-2 | 持続血糖測定器加算(2個以下) | 1,320点 | 要届出 |
施設基準が条件になるのは、あくまでCGM(持続血糖測定器)と組み合わせる場合です。そこが原則です。
参考:令和6年版医科診療報酬点数表 C152 間歇注入シリンジポンプ加算
今日の臨床サポート(C152 間歇注入シリンジポンプ加算)
CSIIにCGMを組み合わせる際の算定区分が、C152-2(持続血糖測定器加算)です。この加算を算定するには、地方厚生局長への施設基準届出が必須になります。届出は「連動する場合」と「連動しない場合」で要件の内容が異なるため、混同しないように整理しておくことが重要です。
🔵 間歇注入シリンジポンプと連動するCGMを用いる場合の施設基準(主な要件)
連動型CGMの施設基準は比較的シンプルです。常勤医師の経験年数と、当該医療機関がCSII実施機関であることの2点が核心になります。
🟠 間歇注入シリンジポンプと連動しないCGMを用いる場合の施設基準(主な要件)
連動しない場合は、医師に加えて看護師または薬剤師の研修修了が求められる点が大きな違いです。
届出にあたっては、様式24の5の添付書類として、CSII新規導入患者数(過去1年間)と通院患者数の実績記載が必要になります。実績が少ない施設では、この項目がハードルになる場合もあります。
研修について補足すると、「適切な研修」とは日本糖尿病学会等の医療関係団体が主催するもので、セルフケア支援・CGMの活用・事例分析等の内容を含むものが対象です。日本糖尿病学会が提供するe-learningの受講が現場では広く活用されています。
参考:Dexcom CGMの保険請求と施設基準(医療従事者向け)
Dexcomジャパン 医療従事者向け 保険請求・施設基準ページ
CSIIおよびCGM加算の算定にあたっては、患者側の適応要件についても正確な理解が欠かせません。算定対象を誤ると、後から指摘を受けるリスクがあります。ここが注意点です。
C152(間歇注入シリンジポンプ加算)の算定対象患者
インスリンの自己注射を行っている入院中以外の患者が対象です。入院患者への算定は退院日のみ例外的に認められますが、退院月に外来でも同加算を算定することはできません。
C152-2(持続血糖測定器加算)の算定対象患者(連動型CGM)
C152-2(持続血糖測定器加算)の算定対象患者(非連動型CGM)
非連動型CGMで2型糖尿病患者に算定する場合は、空腹時血清Cペプチドの測定値(0.5ng/mL未満)をレセプトの摘要欄に必ず記載することも義務づけられています。
また、非連動型CGMの算定には患者の適応要件に加えて、1日最低2回の自己血糖測定(SMBG)を行っていること、そして医師・看護師・薬剤師による指導記録を作成し患者へ提供することも求められます。これらを見落とすと査定リスクに直結します。
参考:令和6年版 C152-2 持続血糖測定器加算(通知・算定要件)
今日の臨床サポート(C152-2 持続血糖測定器加算)
CSIIとCGMを組み合わせた診療では、算定できる加算の組み合わせに明確なルールがあります。ここを誤ると、算定漏れや過誤請求の原因になります。
大原則:C152とC152-2の同月併算定は原則できない
間歇注入シリンジポンプと連動するCGMを使用している場合、同一月にC152とC152-2を同時に算定することはできません。どちらかを選択する必要があります。これが条件です。
ただし重要な例外があります。
例外:連動していないCGMを使用しつつポンプも使用している場合
間歇注入シリンジポンプと連動しないCGMを使用している患者が、別途間歇注入インスリンポンプを使用している場合には、C152(間歇注入シリンジポンプ加算)を「併せて」算定することが可能です。ただしこの場合、注2(トランスミッター加算)は算定できません。
| 使用状況 | C152 | C152-2 | 注2(トランスミッター) |
|---|---|---|---|
| 連動型CGM使用 | ❌ 算定不可 | ✅ 算定可 | ✅ 算定可(連動型のみ) |
| 非連動型CGMのみ使用 | ❌ 算定不可 | ✅ 算定可 | ❌ 算定不可 |
| 非連動型CGM+ポンプ併用 | ✅ 算定可 | ❌ 算定不可 |
この構造を整理すると、「連動するかどうか」が算定の分岐点になっているとわかります。つまり連動型か非連動型かで算定パターンが変わるということです。
なお令和6年度診療報酬改定から新設されたC152-4(持続皮下注入シリンジポンプ加算)は、主にホルモン製剤や疼痛管理向けの持続皮下注入ポンプに対応した区分です。インスリンポンプの算定とは区別して理解する必要があります。
現場での誤算定リスクを下げるためには、電子カルテや医事システム上でC152とC152-2の排他制御が正しく設定されているかを定期的にチェックすることが有効です。確認しておくと安心です。
施設基準の届出は「1回提出すれば終わり」ではありません。これが現場で見落とされやすい点です。
届出後も継続的な維持要件が存在します。たとえば、常勤医師が異動・退職した場合には基準を満たせなくなるため、速やかに変更届または算定停止の対応が必要です。常勤の定義は「週所定労働時間の全てを勤務している職員」であり、非常勤やパート勤務では要件を満たせない点も確認が必要です。
厚いですね。実は届出を出した後の管理体制こそが、指導・監査リスクを左右します。
実務上、注意すべきチェックポイントを整理すると:
診療報酬改定は2年ごとに実施され、施設基準の内容も変更される場合があります。令和6年度改定では、常勤医師の配置数要件が「2名以上」から「1名以上」に緩和されたことが大きな変化でした。以前の基準で「届出できない」と諦めていた施設は、現行基準で改めて届出要件を確認することをお勧めします。
日本糖尿病学会が提供するe-learningは、研修修了の証跡取得にも活用できます。研修修了後は記録を医療機関が適切に保管し、いつでも提示できる状態にしておくことが求められます。
参考:九州厚生局 持続血糖測定器加算 施設基準届出書様式
厚生労働省 九州厚生局 様式24の5(持続血糖測定器加算 届出書添付書類)
CSIIに関連する届出・算定管理は、医師単独ではなく医事課・看護師・薬剤師が連携して行う体制を作ることで、ミスのリスクを大幅に下げることができます。チーム全体での情報共有が基本です。