先発品と後発品は「効き目が違う」と思っているなら、あなたは患者への説明で損しています。

ジクロフェナクナトリウムテープの先発品として現在流通しているのは、ボルタレンテープ(製造販売元:同仁医薬化工/ノバルティスファーマ)とナボールテープ(製造販売元:久光製薬)の2ブランドです。規格はそれぞれ15mgと30mgの2種類があり、合計4品目が先発品として位置づけられています。
各規格の寸法と薬価は以下のとおりです。
| 商品名 | 規格 | サイズ | 薬価(1枚) |
|---|---|---|---|
| ボルタレンテープ15mg | 15mg | 7cm×10cm | 12.7円 |
| ナボールテープ15mg | 15mg | 7cm×10cm | 12.7円 |
| ボルタレンテープ30mg | 30mg | 10cm×14cm | 17.6円 |
| ナボールテープL30mg | 30mg | 10cm×14cm | 17.6円 |
15mgサイズは葉書(はがき)の約半分の大きさ(7cm×10cm)、30mgサイズはノートのB5判のおよそ1/4程度(10cm×14cm)のイメージです。これが患者への説明でもわかりやすい目安になります。
注目すべき点があります。ボルタレンテープ30mgの薬価はすでに「先発品(後発品と薬価が同等以下)」という区分になっています。つまり、先発品を処方・調剤しても薬剤費の差がほぼなくなってきているということです。これが原則です。
とはいえ、15mgについても同様の傾向が進んでいます。薬価改定ごとに後発品の薬価が引き下げられるケースがある一方で、先発品もつられて引き下げられ、結果として薬価が同等になることがあります。医療従事者として最新の薬価情報を常に確認しておくことが条件です。
参考:ジクロフェナクナトリウム先発品・後発品の薬価情報はKEGG MEDICUSで確認できます。
KEGG MEDICUS:ジクロフェナク商品一覧(先発品・後発品・薬価)
「先発品のほうが後発品より効く」という認識は、ジクロフェナクナトリウムテープに関しては正確ではありません。これは意外ですね。
後発品はすべて、厚生労働省が定める「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」に基づいた試験をクリアしています。具体的には、健康成人男性の背部に先発品と後発品をそれぞれ貼付し、皮膚への薬物移行量を剥離後製剤中の残存量から算出。90%信頼区間法でlog(0.70)〜log(1.43)の範囲内であれば「同等」と判定されます。
国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)が公開する「医療用医薬品最新品質情報集(ブルーブック)」では、テイコク・ユートク・ラクール・トーワ・日医工・日本臓器・JG・NP・三和など9社以上の後発品すべてについて、生物学的同等性が確認されていることが記載されています。
つまり「効き目の違い」は科学的に否定されているということです。ただし、粘着力や基剤の硬さ・においなど製剤的な使用感は後発品ごとに微妙に異なります。患者から「以前の薬と貼った感じが違う」という訴えがあれば、それは薬効の差ではなく製剤の差だと説明できると親切です。
参考:ブルーブック(ジクロフェナクナトリウムテープ)の生物学的同等性試験データは以下から確認できます。
国立医薬品食品衛生研究所:医療用医薬品最新品質情報集(ブルーブック)ジクロフェナクナトリウムテープ
先発品の処方箋をそのまま受け付けた場合、薬局ではどう対応するべきでしょうか?
まず基本として、銘柄名処方(例:「ボルタレンテープ15mg」と記載)かつ変更不可の指示がなければ、薬剤師は患者の同意のもとで後発品への変更調剤が可能です。これは診療報酬の観点からもジェネリック使用促進の方針に沿った対応です。
注意が必要なのは、薬価が同等になった先発品の扱いです。ボルタレンテープ30mgはすでに「先発品(後発品と薬価が同等以下)」の区分に該当します。この場合、診療報酬上の「後発品の調剤体制加算」の計算対象になるかどうかの判断が複雑になることがあります。施設ごとにレセプトの記載ルールを再確認しておくことが重要です。
また、一般名処方(「ジクロフェナクナトリウムテープ15mg」と記載)の場合は、患者の同意を得たうえで先発品・後発品のいずれでも調剤可能ですが、一般名処方加算の要件として「後発品のある先発品」であることが前提となります。薬価が後発品と同等になったことで一般名処方加算の区分が変わるケースもあるため、処方側・調剤側ともに毎年4月の薬価改定後の確認が欠かせません。これが原則です。
処方箋に「変更不可(医療上必要)」のチェックがある場合は先発品のみ調剤可能となります。患者がジェネリックに変更を希望する際は、疑義照会が必要になる点も押さえておきましょう。
参考:変更調剤・一般名処方に関する詳細ルールは厚生労働省のページに記載があります。
厚生労働省:処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載について
湿布薬の処方枚数制限は、多くの医療従事者が「1処方70枚まで」と記憶していますが、実際には変わっています。厳しいところですね。
2022年(令和4年)の診療報酬改定により、湿布薬の投与上限は1処方につき原則63枚に引き下げられています。ジクロフェナクナトリウムテープ(15mg・30mgともに)もこの制限の対象です。
63枚という数字のイメージとしては、1日2枚使用の場合で約31日分(約1ヵ月分)に相当します。複数部位に貼る患者では、1枚でも規定を超えると問題になります。
この枚数制限は「1処方」に対してのカウントであるため、同月内に複数回受診して処方を受けた場合、その合計が63枚を超えても問題ありません。ただし、1処方で63枚を超える場合は、医師がやむを得ない事情を処方箋および診療報酬明細書に記載しない限り、超過分は算定できません。記載がない場合は返戻・減点の対象となるリスクがあります。
また、ジクトルテープ75mg(がん疼痛・腰痛等の適応)も湿布薬と同じ処方枚数制限の対象である点には注意が必要です。「がん疼痛だから別扱いになる」と考えていると、63枚超で返戻が来る可能性があります。これだけ覚えておけばOKです。
参考:処方枚数制限の根拠・詳細については以下の厚生労働省疑義解釈資料を参照してください。
厚生労働省:疑義解釈資料の送付について(その47)湿布薬63枚制限に関する記載あり
ジクロフェナクナトリウムテープを使う際、多くの医療従事者が「貼付部位の皮膚トラブルだけ注意すれば良い」と考えがちです。ただ、それだけでは不十分な場合があります。
主な副作用として添付文書に記載されているのは、光線過敏症・浮腫・腫脹・皮膚のあれ・刺激感・水疱・色素沈着・皮膚炎・かゆみ・発赤・皮膚剥脱などです。中でも光線過敏症は、貼付部位を紫外線にさらすことで引き起こされる副作用であり、テープを剥がした後も数日間は日光を避けるよう患者に説明する必要があります。
光線過敏症のリスクは、夏場の屋外活動が多い患者や、紫外線の強い地域に住む患者で特に高まります。「剥がしたから大丈夫」という認識は誤りです。剥がした後の皮膚にも成分が残存するため、少なくとも貼付終了後2〜3日は直射日光を避けるよう指導するのが望ましいとされています。
もう一点、見落とされがちな観点があります。ジクロフェナクナトリウムはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の一種であり、テープ剤であっても経皮吸収後に全身循環に移行します。特に腎機能が低下した患者では、プロスタグランジン合成阻害作用により腎血流量が低下するリスクがあることが知られています。内服薬ほど血中濃度は上がりませんが、腎機能障害を持つ高齢者や心不全患者への長期使用では注意が必要です。これが条件です。
患者説明の場で「貼り薬だから安全」という先入観を持たれている場合は、テープ剤でも全身への影響がゼロではない点を丁寧に説明することで、服薬アドヒアランスと安全管理の両立が図れます。
参考:ジクロフェナクNaテープの副作用・注意事項はRAD-ARの「くすりのしおり」でも確認できます。
くすりの適正使用協議会(RAD-AR):ジクロフェナクナトリウムテープ30mg「NP」くすりのしおり