ジカディアカプセル販売中止と錠剤への切り替え対応

ジカディアカプセル150mgは2021年4月に販売中止となり、現在はジカディア錠150mgへの切り替えが必要です。剤形変更の背景・注意点・ALK阻害薬の位置づけを医療従事者向けに詳しく解説。あなたの患者対応は万全ですか?

ジカディアカプセル販売中止の背景と錠剤への正しい切り替え対応

ジカディアカプセルが販売中止になっても、セリチニブ治療は継続できます。


この記事のポイント3つ
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カプセルは2021年4月に販売中止

ジカディアカプセル150mgは2021年4月に製造販売中止。経過措置期限は2021年3月末で、現在は完全にジカディア錠150mgへ移行済みです。

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用法も「空腹時750mg」→「食後450mg」に変更

剤形変更と同時に用法・用量も大幅に見直し。消化器症状の軽減を目的とした重要な変更で、処方時・服薬指導時に必ず確認が必要です。

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薬物相互作用・副作用モニタリングは継続必須

ジカディア錠でもCYP3A阻害・基質の相互作用リスクは変わりません。間質性肺疾患・QT延長・肝機能障害の定期モニタリングが引き続き求められます。


ジカディアカプセルの販売中止に至った経緯と時系列



ジカディア(一般名:セリチニブ)は、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺癌を対象とした選択的ALK阻害薬です。2016年3月にジカディアカプセル150mgとして国内製造販売承認を取得し、同年5月に薬価収載・発売が開始されました。その後、2017年9月に適応が初回治療へも拡大され、一次治療から使用可能な薬剤として位置づけられています。


転換点となったのは、用法・用量の大幅な見直しです。当初の用法は「750mgを1日1回、空腹時に経口投与」でしたが、高頻度に発現する消化器症状(悪心・嘔吐・下痢など)への対策として、食事と一緒に服用することで吸収挙動を最適化する「450mgの1日1回食後投与」への変更が検討されました。


臨床試験(A2112試験)において、750mg空腹時投与と450mg食後投与では血漿中曝露量がほぼ同等であることが確認されています。それに加えて、食後投与群では消化器系の副作用発現が軽減される傾向が示されました。これが根拠となり、2019年2月21日に用法・用量の一部変更承認が取得されています。


用法変更に伴い、新剤形としてジカディア錠150mgが2019年8月21日に承認され、同年11月27日より発売が開始されました。カプセル剤と錠剤では生物学的同等性が確認されており、健康被験者に750mgを各製剤で単回投与した試験でCmax・AUCともに同等の結果が得られています。


こうした経緯を経て、ジカディアカプセル150mgは2021年4月に製造販売中止となりました。経過措置期限は2021年3月末で終了しており、現時点ではカプセル剤を保険適用で使用することはできません。つまり結論はシンプルです。カプセルから錠剤への完全移行は既に完了しています。




































年月 出来事
2016年3月 ジカディアカプセル150mg 製造販売承認(二次治療以降)
2016年5月 薬価収載・発売開始
2017年9月 適応拡大(一次治療からの使用が可能に)
2019年2月 用法・用量変更承認(750mg空腹時→450mg食後)
2019年11月 ジカディア錠150mg 発売開始
2021年3月末 ジカディアカプセル150mg 経過措置期限終了
2021年4月 ジカディアカプセル150mg 製造販売中止


参考:ジカディア錠のインタビューフォーム(JAPIC)では、「ジカディアカプセルは2021年4月に販売中止している」と明記されています。


ジカディア錠150mg インタビューフォーム(JAPIC)


ジカディアカプセルからジカディア錠への切り替えで注意すべき用法の違い

剤形が変わったことよりも、同時期に変更された用法・用量の違いを正確に把握することが、医療従事者にとってより重要です。この点を曖昧にしたまま対応すると、服薬指導の誤りや患者の混乱につながるリスクがあります。


カプセル時代の用法は「750mgを1日1回、空腹時に経口投与」でした。これが現在のジカディア錠では「450mgを1日1回、食後に経口投与」に変更されています。変更点は2つ、用量と服用タイミングの両方です。これは別物の用法と考えるべきです。


用量が750mgから450mgへ引き下げられた背景には、曝露量の同等性があります。食後に服用することで消化管からの吸収挙動が変化し、空腹時750mg投与と食後450mg投与では血漿中曝露量(AUC)がほぼ同等になることが薬物動態試験で示されています。1錠が150mgであるため、ジカディア錠は1回3錠(450mg)を食後に服用する形となります。


服薬指導で特に注意が必要な点を整理します。



  • ✅ 服用タイミング:必ず食後に服用する。空腹時に服用すると曝露量が意図せず変化する可能性があります。

  • ✅ 用量確認:1回あたり3錠(150mg×3=450mg)が標準用量です。カプセル時代の750mg(5カプセル)との混同に注意が必要です。

  • ✅ 減量基準:副作用の程度に応じて150mgずつ減量する設計で、最低用量は1日150mgです。1日150mgで継続困難な場合は投与中止となります。

  • ✅ PPIとの併用:プロトンポンプ阻害薬などの胃内pHを上昇させる薬剤との併用でセリチニブの血中濃度が低下する報告があります。消化器症状対策でPPIを使用している患者では注意が必要です。


なお、ジカディア錠の薬価は1錠6,413.6円(2025年5月改訂第2版時点)となっています。1日3錠服用の場合、1日あたりの薬剤費は約1万9,200円となる計算です。高額な治療薬であることを患者に適切に説明し、高額療養費制度など経済的支援の活用についても情報提供しておくとよいでしょう。


参考リンク(用法・用量変更の詳細および臨床根拠)。
セリチニブ、用法・用量変更で奏効率と安全性が向上(ケアネット)


ジカディアカプセル販売中止後も変わらない副作用モニタリングの重要ポイント

剤形が変わっても、セリチニブとしての薬理作用・安全性プロファイルは同一です。副作用モニタリングの重要性は錠剤移行後も変わりません。


重大な副作用として添付文書に明記されているのは、間質性肺疾患(発現率0.6%)、肝機能障害(4.2%)、QT間隔延長(7.5%)、徐脈(1.8%)、重度の下痢(1.1%)、高血糖・糖尿病(2.9%・0.2%)、膵炎(0.2%)の7項目です。


頻度的に最も注意が必要なのはQT間隔延長です。7.5%という発現率は他の重大副作用と比較しても高い数値で、投与前および投与中の定期的な心電図検査と電解質(カリウム・マグネシウム・カルシウム)測定が必須となります。β遮断剤や非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗剤などの徐脈を引き起こす薬剤との併用は、「可能な限り避けること」と添付文書に明記されています。厳しいところですね。


消化器症状については、食後投与への変更後も発現することがあります。食後450mg投与群の副作用発現頻度は83.1%(74/89例)で、主な副作用は下痢50.6%、悪心34.8%、腹痛31.3%などです。これらは空腹時750mg投与時よりは軽減されているものの、依然として過半数以上の患者に何らかの消化器症状が現れます。適切な制吐薬・止瀉薬の使用を事前に検討しておくことが実践的な対応です。


また、肝機能障害は52.8%(肝機能検査値異常全体)と高頻度に認められます。投与開始前および投与中は定期的に肝機能検査を実施する必要があります。ALT増加44.5%、AST増加38.0%という数字はほぼ半数の患者で起こり得るものと理解しておくべきです。


間質性肺疾患については発現率0.6%と低いものの、発現した場合にはGradeを問わず投与中止となります。初期症状(息切れ・呼吸困難・咳嗽・発熱)の観察と、治療初期は入院またはそれに準じる管理下での観察が求められています。



  • 🔍 投与前必須の検査:肝機能、心電図・電解質、血糖値、リパーゼ・アミラーゼ

  • 🔍 投与中の定期検査:肝機能・心電図・電解質・血糖値・リパーゼ・アミラーゼの定期的な評価

  • 🔍 患者への事前説明必須事項:呼吸器症状(間質性肺疾患)、消化器症状、徐脈の初期症状


参考リンク(ジカディア錠の添付文書・副作用情報)。
ジカディア錠150mg 医薬品情報(KEGG MEDICUS)


ジカディアカプセル販売中止後のALK阻害薬の現在の位置づけと使い分け

ジカディア(セリチニブ)はALK阻害薬の第2世代に位置づけられます。2026年現在、国内で承認されているALK阻害薬は複数存在しており、セリチニブの臨床的な立ち位置を正確に把握しておくことが適切な治療選択につながります。


セリチニブはクリゾチニブ(ザーコリ)の約20倍のALK阻害活性を持つとされており、複数のクリゾチニブ耐性遺伝子変異に対しても有効とされています。第III相試験(ASCEND-4試験)では、一次治療において化学療法(プラチナ+ペメトレキセド)と比較した結果、無増悪生存期間(PFS)中央値がジカディア群16.6ヶ月に対して化学療法群8.1ヶ月と、約2倍の成績を示しています。


一方で、ガイドライン上の推奨度という観点では他のALK阻害薬との直接比較データが限られていることもあり、現在の日本肺癌学会ガイドラインでは一次治療として同じ第2世代でもアレクチニブ(アレセンサ)やブリグチニブ(アルンブリグ)、あるいは第3世代のロルラチニブ(ローブレナ)が優先されることが多い状況です。


セリチニブが特に有用とされるのは、クリゾチニブによる治療後に進行した症例での二次治療以降のシナリオです。ASCEND-5試験では、ザーコリおよび化学療法後の患者を対象に、セリチニブ群でPFS中央値5.4ヶ月(対照のドセタキセル・ペメトレキセド群1.6ヶ月)と有意な延長を証明しています。








































薬剤名 世代 主な使用場面 特記事項
クリゾチニブ(ザーコリ) 第1世代 1次・2次治療 国内初のALK阻害薬
アレクチニブ(アレセンサ) 第2世代 1次治療で高い推奨 J-ALEX試験で有効性証明
セリチニブ(ジカディア) 第2世代 1次・2次治療以降 クリゾチニブ耐性に有効
ブリグチニブ(アルンブリグ) 第2世代 1次治療 脳転移への有効性が期待
ロルラチニブ(ローブレナ) 第3世代 1次・2次治療以降 複数の耐性変異に対応


参考リンク(各ALK阻害薬の臨床試験比較・使い分け)。
肺がんに対する5種類のALK阻害薬の違い(オンコロ)


ジカディアカプセル販売中止で見落とされがちな薬物相互作用リスク

剤形変更・用法変更の対応に意識が向くと、薬物相互作用の確認が後回しになりがちです。しかしセリチニブのCYP関連の相互作用は複雑で、日常の処方確認の中で発見されにくいリスクがあります。これは実務上、特に見落とされやすいポイントです。


セリチニブの相互作用における最重要点は、「CYP3Aを強く阻害する薬剤」との関係です。


本剤自体がCYP3Aの基質であるため、CYP3A阻害剤(ケトコナゾール、イトラコナゾール、リトナビルなど)との併用では本剤の血中濃度が上昇し、副作用が増強するリスクがあります。可能であれば代替薬への変更を検討し、やむを得ず併用する場合には用量の減量を考慮する必要があります。


逆に、本剤がCYP3Aを強力に阻害するため、CYP3Aの基質となる薬剤(ミダゾラム、フェンタニル、タクロリムスなど)の血中濃度が上昇する方向にも働きます。例えばワルファリン(CYP2C9の基質)との併用ではPT-INRのモニタリング頻度を増やすことが求められています。


2022年に追加された重要な注意点として、ベネトクラクス(ベネクレクスタ)の用量漸増期との「併用禁忌」があります。腫瘍崩壊症候群の発現が増強するリスクがあるため、この組み合わせは絶対に避ける必要があります。比較的新しい追加事項のため、見落としがないか確認が重要です。


さらに、CYP3A誘導剤(リファンピシン、カルバマゼピン、セイヨウオトギリソウ含有食品など)との併用では、セリチニブの血中濃度が低下し有効性が減弱するリスクがあります。結核治療などでリファンピシンを使用中の患者では特に注意が必要です。


処方確認で確認すべき薬剤の代表例を整理しておくとよいでしょう。



  • ⚠️ 併用禁忌(新規):ベネトクラクス(用量漸増期)→腫瘍崩壊症候群リスク増大

  • ⚠️ 血中濃度上昇に注意:アゾール系抗真菌薬(イトラコナゾールなど)、HIVプロテアーゼ阻害薬

  • ⚠️ 血中濃度低下に注意:リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン、セント・ジョーンズ・ワート

  • ⚠️ 他剤への影響:ワルファリン(PT-INR上昇)、免疫抑制薬タクロリムス(血中濃度上昇)、フェンタニルなど

  • ⚠️ PPI等の胃酸分泌抑制薬:エソメプラゾールとの併用でセリチニブ血中濃度低下の報告あり


入院患者の持参薬確認や、がん治療以外の合併症治療薬との相互作用は、薬剤師が処方確認の段階で積極的に介入できる領域です。院内の薬物相互作用チェックシステムを活用しつつ、疑義が生じた場合は処方医への照会を早期に行うことが患者安全につながります。


参考リンク(ジカディア適正使用ガイド・PMDAリスク管理計画)。
ジカディア錠150mg 医薬品リスク管理計画書(PMDA)






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