1日1錠しか出していないのに、高齢患者が転倒骨折で入院するケースがあります。

ジアゼパム錠2mg「アメル」は、共和薬品工業株式会社が製造販売するジェネリック医薬品で、有効成分はジアゼパム(Diazepam)2mgを1錠中に含有します。薬効分類は「鎮静・抗不安剤」に属し、ベンゾジアゼピン(BZD)系薬物の代表格として長年使用されてきた薬剤です。
作用機序は、中枢神経系のGABAA受容体複合体のベンゾジアゼピン結合部位に作用し、GABAによる抑制性神経伝達を増強することで、鎮静・抗不安・催眠・抗痙攣・筋弛緩の5つの薬理作用を発揮します。つまり「一粒で5役」をこなす薬、と覚えると整理しやすいです。
効能・効果は添付文書上、大きく3つのカテゴリに分類されています。
1つ目は精神症状への適応で、神経症における不安・緊張・抑うつ、うつ病における不安・緊張、そして心身症(消化器疾患・循環器疾患・自律神経失調症・更年期障害・腰痛症・頸肩腕症候群)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつが含まれます。「腰痛症や頸肩腕症候群も適応がある」という点は、整形外科領域の現場でも活用されている理由のひとつです。
2つ目は筋緊張への適応で、脳脊髄疾患に伴う筋痙攣・疼痛における筋緊張の軽減が挙げられます。主として脊髄反射を抑制することで筋過緊張を緩解する仕組みです。
3つ目は麻酔前投薬です。術前の不安除去と前投薬としての鎮静効果を目的に使用されます。
規制区分は「向精神薬(第三種向精神薬)」かつ「処方箋医薬品」です。麻薬ではない点はよく知られていますが、向精神薬としての法的管理義務が生じる点は後述のセクションで詳しく解説します。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)公式ページ:ジアゼパム錠 添付文書最新版の確認に活用できます
用法・用量は適応疾患によって異なり、混同しやすいため整理が必要です。これは基本です。
通常の成人投与(不安・抑うつ等)では、1回ジアゼパムとして2〜5mgを1日2〜4回経口投与します。2mgの本剤であれば、1回1〜2錠を1日2〜4回という計算になります。ここで重要な点があります。外来患者は原則として1日量15mg以内とすることが添付文書で明示されています。
外来患者に1日15mg(本剤7.5錠)を超えて投与すると、用法・用量違反となり得ます。1日最大量は添付文書の計算上では40mgになり得ますが、外来では15mgが上限です。入院患者とは上限が異なる点が条件です。
筋痙攣患者への成人投与は、1回2〜10mgを1日3〜4回と幅が広くなります。
麻酔前投薬の場合は、通常成人1回5〜10mgを就寝前または手術前に経口投与します。
小児への投与量は年齢によって3段階に分かれています。3歳以下は1日量1〜5mgを1〜3回分割、4〜12歳は1日量2〜10mgを1〜3回分割投与とされています。小児への投与では、乳幼児では作用が強く発現しやすい点に注意が必要です。
投薬期間については、本剤は「1回90日分を限度」とされています。ただし、ベンゾジアゼピン系薬剤全般に言える依存性・離脱リスクを踏まえると、長期漫然投与は避けるべきです。連用により薬物依存を生じる可能性があるため、治療上の必要性を定期的に再評価することが原則です。
| 対象 | 1回用量 | 投与回数 | 1日上限 |
|---|---|---|---|
| 成人(外来・不安等) | 2〜5mg | 1日2〜4回 | 15mg(原則) |
| 成人(入院・不安等) | 2〜5mg | 1日2〜4回 | 添付文書上の制限なし |
| 成人(筋痙攣) | 2〜10mg | 1日3〜4回 | 記載なし |
| 成人(麻酔前) | 5〜10mg | 就寝前または術前1回 | − |
| 小児(3歳以下) | − | 1日1〜3回分割 | 1〜5mg |
| 小児(4〜12歳) | − | 1日1〜3回分割 | 2〜10mg |
「1日2mg(本剤1錠)しか出していないのに転倒した」——そうした事例の背景に、ジアゼパムの長い半減期と活性代謝物の蓄積が関係している場合があります。
ジアゼパム本体の消失半減期は20〜100時間と非常に幅があります。さらに主要な活性代謝物であるN-デスメチルジアゼパムの半減期は36〜200時間とさらに長い。これは、単回投与後でも体内に薬効成分が1週間近く残り続ける可能性があることを意味します。
連日投与を行うと、半減期の長さゆえに排泄より蓄積が上回り、血中濃度が想定以上に高くなります。ふらつきや歩行失調が起きやすい状態です。
高齢者では肝・腎機能の低下により代謝・排泄がさらに遅延します。添付文書では「高齢者には少量から投与を開始し、運動失調等の副作用が発現しやすい」と明示されています。若年成人に比べて消失半減期が最大2倍以上延長するとの報告もあります。
具体的なイメージとして、20mgを経口投与した場合、生物学的半減期は約56時間(日本麻酔科学会資料)とされています。これはほぼ丸2日半分の計算です。入院中に毎日投与すれば、服用を開始してから数日後には「昨日の分・一昨日の分・今日の分」が体内で重なって作用している可能性があります。
こうした蓄積リスクに対処するためには、まず高齢患者への投与時は最低用量の2mg/日から開始し、定期的にふらつき・歩行の評価を行う体制が重要です。転倒リスクが高い患者には、長時間型のジアゼパムではなく、活性代謝物を持たず半減期が短い他のBZD系薬剤や、非BZD系薬剤への変更を検討することも一つの選択肢です。
活性代謝物の蓄積には期限があります。中止後も効果と副作用が数日〜1週間以上持続する可能性があるため、「中止したから翌日には影響ゼロ」とは考えないことが原則です。
禁忌には3項目があります。①急性閉塞隅角緑内障(抗コリン作用による眼圧上昇)、②重症筋無力症(筋弛緩作用による症状悪化)、③リトナビルまたはニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッドパック)を投与中の患者です。
③が近年特に注意を要するポイントです。パキロビッドパックはCOVID-19治療薬として広く使用されるようになりましたが、成分リトナビルはCYP450を強力に阻害し、ジアゼパムの血中濃度を大幅に上昇させます。結果として過度の鎮静・呼吸抑制が起こる可能性があります。
実際に、「COVID-19に罹患したBZD内服中の患者にパキロビッドを処方してしまった」という医療現場のインシデントが報告されています。複数の診療科が関わる患者では、処方の確認漏れが起きやすい場面です。日本精神神経学会もジアゼパムをパキロビッドとの「併用禁忌薬剤」として注意喚起しています。
併用禁忌の他にも、併用注意薬が多数あります。主なものを整理しましょう。
PPIとジアゼパムの組み合わせは、内科・消化器科でも非常によく見られる組み合わせです。クリアランスが半分近くになる可能性がある点を念頭に置いておく必要があります。これは使えそうな知識です。
過量投与時の拮抗薬として、フルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬)が使用されます。ただしフルマゼニル投与後に新たにジアゼパムを投与する場合、鎮静・抗痙攣作用が変化または遅延するおそれがあるため、使用前に注意事項を必ず確認することが必須です。
日本精神神経学会:コロナ感染症治療薬パキロビッドと精神科薬剤の使用禁忌等についての注意喚起(現場での確認に活用できます)
ジアゼパム錠2mg「アメル」は「第三種向精神薬」に分類されます。麻薬や第一種・第二種向精神薬と比べると管理が緩い印象を持たれがちですが、実際には法的に一定の管理義務が課されています。
麻薬及び向精神薬取締法の規定上、第三種向精神薬については以下の点を理解しておく必要があります。
まず、記録義務の有無です。第一種・第二種向精神薬は譲受・譲渡・廃棄に関する記録が義務付けられており、2年間保存が必要です。しかし第三種向精神薬については記録義務はありません。記録義務がないのに驚く方もいるかもしれません。
ただし厚生労働省は「第三種向精神薬については記録義務はないが、譲受けについて記録し、定期的に在庫確認をすることが望ましい」と推奨しています。「義務ではないから何もしなくてよい」ではなく、盗難・紛失防止のための自主的な管理が求められているということです。つまり記録の努力義務は残ります。
廃棄については、第一種・第二種は廃棄年月日・品名・数量の記録と2年間保存が義務ですが、第三種は廃棄申請・立会が不要です。一方で、廃棄する際も不適切な方法(下水道への大量廃棄など)は避け、適切な方法で行う必要があります。
保管については、向精神薬全般に共通して「盗難防止のための鍵のかかる設備での保管」が求められています。第三種だからといって施錠しない保管は適切とは言えません。
処方箋に関しては、ジアゼパムは処方箋医薬品であるため、医師等の処方箋なしでの調剤・交付は禁じられています。また、向精神薬の処方箋は「患者ごとに1枚」が原則で、複数の医療機関から重複処方されているケースは乱用・依存につながるリスクがあるため、薬歴の確認が推奨されます。
診療報酬上の観点では、外来で抗不安薬は原則2種類以内の処方制限(2016年改定以降)があります。ジアゼパムを含む抗不安薬が3種類以上になると、処方料・調剤料の減算対象になるため、処方設計においても注意が必要です。
厚生労働省:薬局における向精神薬取扱いの手引き——第三種向精神薬の管理義務の範囲が正確に確認できます
添付文書が定める重大な副作用は3項目です。頻度はいずれも「頻度不明」です。
1つ目は依存性・離脱症状です。連用により薬物依存を生じる可能性があります。離脱症状は決して急激な減量・中断によってのみ起きるわけではありません。毎日常用量を服用していても耐性が形成され、離脱症状が出現するとの報告もあります。離脱症状には、痙攣発作・せん妄・振戦・不眠・不安・幻覚・妄想が含まれます。
投与を中止する場合は、必ず徐々に減量するという段階的な漸減が原則です。
2つ目は刺激興奮・錯乱です。鎮静を目的として使用しているにもかかわらず、逆に興奮・錯乱状態になるという逆説的反応(paradoxical reaction)が起こることがあります。特に小児や高齢者で報告されやすい傾向があります。意外ですね。
3つ目は呼吸抑制です。慢性気管支炎等の呼吸器疾患を合併している患者では、呼吸抑制があらわれることがあります。
その他の副作用として頻度不明で報告されているものには、眠気・ふらつき・眩暈・歩行失調・頭痛・失禁・言語障害・振戦・霧視・複視・多幸症(精神神経系)、黄疸(肝臓)、顆粒球減少・白血球減少(血液)、頻脈・血圧低下(循環器)、悪心・嘔吐・食欲不振・便秘・口渇(消化器)、倦怠感・脱力感・浮腫(その他)が含まれます。
特定患者群への慎重投与ポイントをまとめると以下のとおりです。
妊婦への投与については、添付文書は「有益性投与」の立場を取っています。催奇形性については研究によって結論が分かれており、「禁忌に準じた扱い」と「有益性があれば投与可」の両方の観点を踏まえた個別評価が必要です。
PTPシートの誤飲にも注意が必要です。PTPシートから取り出さずに誤飲すると、鋭角部が食道粘膜に刺入し、縦隔洞炎等の重篤な合併症を起こすことがあります。服薬指導時に一言添えることが望まれます。
日本神経精神薬理学会:妊産婦と向精神薬——ジアゼパムの催奇形性評価と妊娠中投与の考え方が整理されています

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