代替薬への切り替えを急ぐと、患者の血糖コントロールが一時的に3割以上悪化するケースがあります。

ジャヌビア錠100mgは、MSD株式会社が製造・販売するDPP-4阻害薬(一般名:シタグリプチンリン酸塩水和物)です。2型糖尿病の治療薬として広く処方されてきたこの薬剤は、一時的な製造上の問題を理由に出荷調整・停止の状態に置かれることがあります。
出荷停止の直接的な原因は、製造工程における品質管理上の問題や原材料の調達難にあることが多く、製薬会社から医療機関・卸売業者に対して「出荷停止」または「出荷調整」の通知が発行されます。この通知は、医薬品医療機器等法(薬機法)の枠組みに基づいて行われます。
重要なのは、出荷停止と販売中止は異なるという点です。つまり出荷停止は一時的な措置であり、製造上の問題が解決されれば供給が再開される可能性があります。ただし、現場の医師・薬剤師にとっては「いつ再開されるか分からない」状態が続くことが最大の問題です。
現場では、既存の在庫が枯渇するまでの時間を逆算しながら対応策を練る必要があります。在庫を確認することが最初の一歩です。
医療機関の薬剤部や調剤薬局では、メーカーまたは卸売業者(医薬品卸)からの情報を基に、在庫の残量を把握し、いつまで現在の処方を継続できるかを算出することが急務となります。特に慢性疾患の定期処方患者が多いクリニックや病院では、1〜2か月先の在庫見通しを立てることが経営的にも臨床的にも重要です。
厚生労働省:医薬品の安定供給に関する情報(医薬品供給不安定に関する通知・通達)
出荷停止が長期化した場合、処方医と薬剤師が協力して代替薬への切り替えを検討する必要があります。ジャヌビア錠100mgの有効成分であるシタグリプチンは、DPP-4阻害薬というクラスに属するため、同クラスの薬剤への切り替えが最も薬理学的に合理的です。
代表的な代替薬として以下が挙げられます。
切り替えに際して注意すべき点は、単純に「DPP-4阻害薬同士だから等価換算で問題ない」とは言い切れないことです。各薬剤の半減期・排泄経路・腎機能による用量調整の有無が異なります。これが原則です。
特に腎機能低下患者(eGFRが45未満の患者)では、代替薬によって用量設定が大きく変わるため、最新の腎機能データ(血清クレアチニン・eGFR)を確認した上での切り替えが必須です。切り替え後2〜4週間は空腹時血糖やHbA1cの動向を注視することが推奨されます。
また、切り替え直後の低血糖リスクについても見落としてはなりません。インスリンやSU薬と併用している患者では、切り替えに伴う血糖変動が通常よりも大きくなる可能性があります。これは使えそうな知識です。
医薬品医療機器総合機構(PMDA):医薬品情報検索(各DPP-4阻害薬の添付文書確認に活用)
出荷停止の情報が入った時点で、医療機関および調剤薬局が最初にすべきことは「現在の在庫数量の正確な把握」です。感覚的な在庫管理では対応が後手に回ります。
具体的な在庫管理のポイントは次の通りです。
「複数の卸から少量ずつ調達する」方法は、短期的な在庫確保には有効ですが、それだけに頼ることは持続可能な対策ではありません。在庫ゼロになる前に代替薬への処方切り替えを完了させることが条件です。
また、出荷停止の情報は随時更新される性質があるため、MSD株式会社のWebサイトや、日本病院薬剤師会・日本薬剤師会が提供する医薬品供給情報を定期的に確認する体制を整えておくことが大切です。
薬剤在庫管理システム(例:電子カルテに連動した在庫管理機能)を活用している医療機関では、特定成分の在庫アラートを設定しておくと、次回の出荷停止時にも素早く対応できます。これは覚えておけばOKです。
出荷停止に伴う代替薬への変更は、患者の同意なく一方的に行うことは適切ではありません。患者は「なぜ薬が変わったのか」を知る権利を持っています。
説明の際に盛り込むべき内容は以下の通りです。
厚しいところですが、患者によっては「薬が変わると怖い」という心理的抵抗を示す方も少なくありません。特に長期間同じ薬を服用してきた高齢患者では、この傾向が顕著です。
そのような場合は、「血糖値の数字で効果をモニタリングするから安心してください」と伝えることで、患者の不安を数値という客観的な根拠で和らげることができます。感情的な安心感と数値的な根拠の両方を提供することが、患者の治療継続率を高めます。
日本糖尿病学会が提供する患者説明用の資材(リーフレットなど)を活用することも、説明の補助として有効な手段のひとつです。
日本糖尿病学会公式サイト:糖尿病治療に関するガイドラインおよび患者向け情報資材
今回のジャヌビア錠100mgの出荷停止は、医薬品サプライチェーンのリスクを改めて可視化する出来事でした。意外ですね。
実は、国内で流通している医薬品のうち、後発医薬品(ジェネリック)を中心に、過去5年間で出荷停止・出荷調整が発生した品目数は累計で600品目を超えているとされています(2021年以降の業界統計より)。先発医薬品であるジャヌビアのような薬剤が出荷停止になることは、頻度としては低いものの、発生すれば影響が大きいため、医療機関としてのリスクマネジメントが問われます。
リスクマネジメントの観点から医療機関が取り組むべき事項は、主に3つに整理できます。
第1に「代替薬プロトコルの事前策定」です。よく処方する薬剤について、あらかじめ「この薬が出荷停止になった場合は◯◯に変更する」という院内ルールを定めておくことで、有事の判断スピードが格段に上がります。結論はプロトコルを持つことです。
第2に「定期的な在庫リスク評価」です。ABC分析(使用頻度・金額の高い薬剤をA・B・Cに分類する手法)を用いて、特に供給リスクが高い薬剤を重点管理リストに入れておくことが有効です。東京ドーム1個分の体育館に積み上げるような大量の医薬品を扱う大病院でも、この管理手法は有効に機能しています。
第3に「情報収集の多元化」です。卸売業者1社に依存した情報収集では、出荷停止の情報が遅れるリスクがあります。MRからの情報、PMDAの医薬品副作用・供給情報、日本病院薬剤師会の緊急情報など、複数のチャネルを常時モニタリングする体制が必要です。
また、今回のケースを契機に「ポリファーマシー見直し」の機会とする視点も重要です。糖尿病治療薬が出荷停止になった際に、実は服薬数の多い高齢患者に対して処方内容を見直すきっかけになることがあります。出荷停止は危機であり、同時に医療の質を見直す機会でもあります。
医薬品のリスクマネジメントは、薬剤師だけの問題ではありません。処方医・薬剤師・看護師・事務スタッフが連携したチームアプローチが、患者への影響を最小化するうえで最も効果的です。チーム医療が基本です。
日本薬剤師会:医薬品供給情報・薬局業務に関する最新情報の確認に有用

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