インスリン一覧と糖尿病学会の最新治療指針

糖尿病学会公認のインスリン製剤一覧をもとに、超速効型から週1回製剤まで種類・作用時間・投与タイミングを徹底解説。バイオ後続品活用や注射部位管理など、医療従事者が今すぐ使える実践知識とは?

インスリン一覧と糖尿病学会が示す製剤の種類・選び方の最新知識

持効型インスリンを正しく使えているつもりでも、注射部位を変えるだけで血糖コントロールが数十mg/dL単位でズレる患者がいます。


この記事のポイント3つ
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インスリン製剤の分類と作用時間

超速効型・速効型・中間型・持効型溶解・混合型・配合溶解の6分類を作用時間の数字とともに整理。糖尿病学会2024版ガイドラインに準拠した最新情報を解説します。

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週1回インスリン「アウィクリ」の実態

2025年1月に発売された世界初の週1回基礎インスリン製剤の特徴・注意事項を解説。1クリック=10単位という他製剤との濃度の違いが医療事故の温床になり得る点を確認します。

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バイオ後続品と2026年度診療報酬改定の影響

バイオシミラーの使用率は2024年度でまだ33.7%。2026年度改定で加算拡充が進む今、先発品のままにしておくと患者負担が増加するケースを具体的に説明します。


インスリン製剤の種類一覧と糖尿病学会による6分類の基本


インスリン製剤は、作用発現時間と持続時間の違いによって大きく6種類に分類されます。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」では、超速効型・速効型・中間型・持効型溶解・混合型・配合溶解として整理されています。この分類を正確に把握することが、処方設計や患者指導の出発点です。


それぞれの作用特性を数字で整理すると、以下のようになります。


分類 作用発現時間 最大作用時間 持続時間 主な投与タイミング
超速効型 10〜20分 約1〜2時間 4〜5時間 食直前(一部食事開始後20分以内)
速効型 約30分 約2〜4時間 5〜8時間 食事30分前
中間型 1〜3時間 2〜12時間 18〜24時間 朝食前または就寝前
混合型 各成分に準ずる 各成分に準ずる 中間型に準ずる 食直前または食事30分前
配合溶解 各成分に準ずる 各成分に準ずる 持効型に準ずる 食直前
持効型溶解 1〜4時間 明確なピークなし 24時間以上 1日1回(時間固定)


これが基本の一覧です。臨床で最もよく使われるのは超速効型と持効型溶解の組み合わせで、基礎・ボーラス療法(バーゼルボーラス療法)と呼ばれます。追加インスリンに超速効型を、基礎インスリンに持効型溶解を使う形が、生理的なインスリン分泌パターンに最も近い方法とされています。


なお、速効型は皮下注射・筋肉内注射・静脈内注射が可能という点で他と異なります。超速効型や持効型溶解は皮下注射専用であるため、ICUなどの場面では速効型がいまだ重要な役割を持っています。


持効型溶解インスリンには、グラルギン(U100・U300)、デテミル、デグルデクの3種類があります。デグルデク(トレシーバ®)の作用持続時間は42時間以上と非常に長く、1型・2型糖尿病ともに低血糖リスクが少ないことが複数のRCTで示されています。グラルギンU300(ランタスXR®)は1mLあたり300単位という通常の3倍の濃度製剤で、通常のシリンジで吸い取ることを禁じられている点に注意が必要です。


参考:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第6章インスリンによる治療
https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/06.pdf


インスリン製剤一覧の投与タイミング:糖尿病学会公認の注射時刻の正しい理解

投与タイミングを「食直前」と一律に指導している施設は今でも少なくありません。ここが重要です。


超速効型の中でも、フィアスプ®(インスリン アスパルト:faster-acting)とルムジェブ®(インスリン リスプロ:ultra rapid)は、食事開始前2分以内の投与が推奨されており、食事開始後20分以内の投与も認められています。これは従来の超速効型(ノボラピッド®・ヒューマログ® など「食直前」製剤)とは明確に異なります。


実臨床での意義は大きく、食事量が不安定な患者や認知症を抱えた高齢者など「食べられるかどうか直前まで分からない」ケースでも対応しやすくなっています。食後20分以内に投与しても従来の超速効型の食直前投与とほぼ同等の血糖推移が得られることが複数のRCTで確認されており、シックデイ時の対応としても有用です。


一方で速効型は食事30分前の投与が原則です。この30分という時間的余裕が現代の食生活と合わず、コンプライアンス不良の原因になりやすい面もあります。そのため新たに処方設計をする場面では、患者の生活リズムに合わせて超速効型へ切り替える選択肢も検討の価値があります。


投与タイミングを誤ると、低血糖または食後高血糖のいずれかが直接発生します。種類ごとの正確なタイミング理解が、安全管理の第一歩です。


参考:フィアスプ®注 投与タイミングに関する適正使用のお願い(PMDA)
https://www.pmda.go.jp/RMP/www/620023/6be6f01f-658a-4d52-b0e7-931ecd9193ad/620023_2492415G7021_01_002RMPm.pdf


週1回インスリン「アウィクリ」の特徴と糖尿病学会の注意喚起

2025年1月30日、世界初の週1回投与型基礎インスリン製剤「アウィクリ®注」(一般名:インスリン イコデク)が日本で発売されました。これは糖尿病治療の選択肢を大きく変えた製剤です。


アウィクリ®の主な特徴を整理します。


  • 半減期:約7日間(従来の持効型溶解デテミルの約10〜14時間と比べ格段に長い)
  • 作用持続:週1回の投与で基礎インスリン分泌を補充
  • 薬価:300単位キットで2,081円(トレシーバ®とほぼ同等)
  • 用法:毎週同じ曜日に皮下注射(時刻はずれても可)


注射の頻度を週1回に減らせる点は、在宅医療を受ける患者・高齢者・自己注射管理が煩雑な症例において大きなメリットになります。


ただし医療従事者として見落とせない重要な注意点があります。アウィクリ®は1クリック=10単位という独特の仕様になっており、他の多くのプレフィルド製剤(例:トレシーバ®フレックスタッチ®は1クリック=1単位)とは設計が異なります。PMDAはすでに投与過誤による重篤な低血糖事例を把握しており、2025年12月に注意喚起を発出しています。


また、1型糖尿病への使用はONWARDS臨床試験の結果から制限が示されており、日本糖尿病学会も高齢者への使用については2025年4月に別途推奨文書を公表しています。低血糖が遷延するリスクがあるため、過量投与があった場合や2日連続投与した場合は次回投与を見送り、血糖モニタリングを継続することが必要です。


新規製剤を導入する際は、機器の仕様確認を怠らないことが条件です。


参考:日本糖尿病学会「高齢者における週1回持効型溶解インスリン製剤使用についての推奨文」
https://www.jds.or.jp/uploads/files/recommendation/icodec.pdf


インスリン注射部位ローテーションの落とし穴:糖尿病学会が示すリポハイパートロフィーのリスク

ローテーションは「知っている」けれど、実際に部位を目視で確認している医療従事者は多くありません。


インスリンを同じ箇所に繰り返し注射し続けると、皮下組織が変性してスポンジ状に肥大する「リポハイパートロフィー(皮下硬結)」が発生します。糖尿病診療ガイドライン2024では、この部位ではインスリンの吸収に障害が生じ、血糖コントロールの不安定化を招くことが明確に記載されています。


問題の核心は2点あります。


第1に、リポハイパートロフィーが生じた部位は痛みが少ないため、患者が自然と同じ場所ばかりを選んでしまう傾向があります。「打ちやすい場所がここしかなくて」という患者の言葉は危険なサインです。


第2に、その硬結部位から正常部位へ注射を変更したとき、インスリンの吸収が急激に改善し低血糖を起こすリスクがあります。日本病院薬剤師会のプレアボイド報告でも、注射部位変更に際してインスリン投与量を減らさないまま低血糖が発生した事例が記録されています。単位数そのままで部位を変えるのはダメです。


指導の際は毎回2〜3cmずつずらすローテーションを患者に習慣化させることが基本です。腹部・大腿・臀部・上腕という複数の注射部位を組み合わせ、いずれかの部位に固定されていないか診察時に確認する習慣を持つことが重要です。


参考:日本薬剤師会・病院薬剤師会「インスリン自己注射指導におけるプレアボイド報告」
https://www.jshp.or.jp/information/preavoid/60-9.pdf


バイオ後続品(バイオシミラー)の活用で変わるインスリン処方:2026年度診療報酬改定との接点

インスリン製剤の処方において、バイオ後続品(バイオシミラー、以下BS)の存在は今や無視できなくなっています。これは使えそうです。


現在、インスリン アスパルト BS注、インスリン リスプロ BS注、インスリン グラルギン BS注の3系統が日本で承認・販売されています。日本糖尿病学会の診療ガイドライン2024でも「先発品よりも薬価が低く抑えられており、医療費の抑制に役立つ」と明記されています。


しかし、2024年度時点でバイオシミラーの使用率(金額ベース)は33.7%にとどまっています。先行バイオ医薬品(先発品)の薬価の約70%という価格設定にもかかわらず、普及が進んでいない理由のひとつが「医療従事者を含めた認知度不足」とされています。


2026年度診療報酬改定では、バイオシミラー使用体制加算の拡充と一般名処方加算への新規組み込みが打ち出されています。特に注目すべき点は、これまでBS製剤が一般名処方の対象外であったのが今回の改定で対象に加えられたことです。切り替えを積極的に進める医療機関は加算を取得できる一方、先発品にこだわり続ける選択は患者の自己負担増加につながるリスクを持ちます。


BSへの切り替えを行う際のポイントとして、投与量・投与速度の確認、患者への丁寧な説明(「先発品と同等の効果があること」)、切り替え後の血糖モニタリングの徹底が挙げられます。患者から「薬が変わった」という不安の声が上がった場合は、製剤区分マーク(日本糖尿病協会が制定)を用いた視覚的な説明が有効です。


参考:厚生労働省「バイオ薬後続品の使用促進」
https://medical.jiji.com/news/60710


参考:日本糖尿病学会 注射製剤一覧表:インスリン製剤(2026年2月作成)
https://www.jds.or.jp/uploads/files/education/insulin_glp-1_list_2026.pdf




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