先発品と同じ成分でも、後発品の薬価誤認で算定ミスが起きています。

イコサペント酸エチル粒状カプセル900mgモチダは、持田製薬が製造販売する後発医薬品です。先発品であるエパデールS900(同じく持田製薬)と同一の有効成分・含量を持ちながら、後発品として薬価基準に収載されています。これは知っておくと損がない情報です。
後発品としての薬価は、先発品と比べて低く設定されます。直近の薬価基準では、イコサペント酸エチル粒状カプセル900mgモチダは1カプセルあたり17.90円(2024年度薬価改定後の参考値)が公表されています。一方、先発品エパデールS900の薬価は1包あたり約29.50円前後と差があります。つまり、先発品と後発品では1カプセルで10円以上の差があるということです。
1日3カプセル(900mg×3)を30日分処方した場合、後発品では薬剤費が約1,611円(17.90円×90カプセル)となります。先発品では同じ投与量で約2,655円(29.50円×90包)となり、差額は1,000円以上になります。患者の自己負担にも直接影響するため、後発品選択の意義は大きいです。
後発品への変更は、保険薬局での「後発品への変更不可」欄のチェック状況に左右されます。処方箋に変更不可の指示がなければ、薬局側の判断で後発品への変更が可能です。これが基本です。
参考:後発医薬品の薬価収載情報は厚生労働省の告示で公式公表されています。
厚生労働省|薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報(2024年4月)
後発品の薬価は、毎年4月の薬価改定で見直されます。近年は後発品の価格引き下げが継続しており、イコサペント酸エチル製剤も例外ではありません。薬価改定には期限があります。
2020年度以降、後発品に対しては「後発品の価格帯集約」が段階的に進められてきました。同一成分・同一規格の後発品が複数メーカーから出ている場合、原則として価格帯が統一される方向性が示されています。イコサペント酸エチル粒状カプセル900mgの規格についても、複数メーカーが薬価収載されており、価格帯の収束が進みつつあります。
医療機関・保険薬局では、薬価改定のたびにレセコン(レセプトコンピュータ)の薬価マスタを更新することが必須です。更新を怠ると、旧薬価での請求が発生し、返戻や過誤調整の原因になります。これは避けたいですね。
算定ミスのリスクとして特に注意が必要なのは、同一成分・異なる剤形・異なるメーカーの薬価を混同するケースです。例えば「イコサペント酸エチルカプセル900mg」と「イコサペント酸エチル粒状カプセル900mg」では剤形が異なり、薬価コードも別物です。「粒状カプセル」という剤形は普通カプセルとは区別して管理する必要があります。
また、後発品の薬価収載情報は、日本ジェネリック製薬協会や各製薬会社の公式サイトでも確認できます。薬価確認は公式情報に限るのが原則です。
参考:後発医薬品の薬価収載一覧と品目情報の確認ができる公式ページです。
日本ジェネリック製薬協会|後発医薬品に関する情報・薬価収載情報
イコサペント酸エチルは、閉塞性動脈硬化症(ASO) および 高脂血症(脂質異常症) を適応症として持つ医薬品です。高純度のEPA(エイコサペンタエン酸)製剤として、動脈硬化の進展抑制や中性脂肪低下を目的に広く処方されています。適応をしっかり確認することが条件です。
処方時に確認すべき主なポイントは以下のとおりです。
粒状カプセル製剤は、嚥下困難な患者への対応としてメリットがあります。意外ですね。通常のカプセル剤より内容物が粒状に設計されており、カプセルを開けて中の粒を服用する選択肢がある点も実務上有用です(ただし、開封服用の可否はメーカーへ事前確認が必要)。
処方箋を受け取った保険薬局でも、病名・用量・相互作用の確認が行われます。疑義照会が発生しないよう、処方時点でこれらの情報を完結させておくことが業務効率化につながります。
参考:イコサペント酸エチルの添付文書情報は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)で確認できます。
PMDA|添付文書・審査報告書検索(イコサペント酸エチル粒状カプセル)
後発品を処方・調剤した場合、保険請求上でいくつかの加算・減算が関係します。これを正確に把握していないと、算定漏れまたは過誤請求が生じます。結論は算定ルールの理解が不可欠です。
まず、後発医薬品使用体制加算(病院・診療所)については、後発品の使用割合が一定基準(例:80%以上)を満たす施設で算定可能な加算です。イコサペント酸エチル粒状カプセル900mgモチダのような後発品の積極的処方は、この加算要件の達成に直接貢献します。
保険薬局側では、後発医薬品調剤体制加算(調剤基本料への加算)があります。後発品の調剤割合によって加算1・2・3の区分があり、薬局全体の後発品割合が上がるほど高い加算を算定できます。後発品の積極的な採用がそのまま収益改善につながる仕組みです。これは使えそうです。
一方、処方箋の「後発品への変更不可」欄にチェックがある場合は、先発品のまま調剤する必要があります。この場合、後発品に係る加算は算定できません。また、先発品を処方し変更不可とする場合、患者への説明(先発品を希望する理由の確認)が診療報酬上求められるケースもあります。
処方箋の記載様式として、一般名処方(「イコサペント酸エチル粒状カプセル900mg」と記載し、メーカーを特定しない方式)も普及しています。一般名処方では「一般名処方加算」(医師側)が算定でき、薬局側でもより柔軟な後発品調剤が可能になります。一般名処方は現場で有用です。
参考:後発品加算・一般名処方加算などの算定要件の詳細は、厚生労働省の診療報酬算定基準で確認できます。
厚生労働省|診療報酬の算定方法(令和6年度改定)
この視点は、検索上位の記事ではほとんど取り上げられない独自の論点です。後発品活用の意義は「薬価が安い」という単純な話だけではありません。医療費全体の適正化という大きな文脈で考えると、処方医・薬剤師それぞれの役割がより明確になります。
日本の医療費は増加し続けており、2023年度の国民医療費は概算で約47兆円規模に達しています。その中でも薬剤費は大きな割合を占めており、後発品の普及率向上は国策として推進されています。厚生労働省は2029年度末までに後発品の数量シェアを80%以上に維持・安定させる目標を掲げています。
イコサペント酸エチルのような慢性疾患治療薬は、長期にわたって処方されます。脂質異常症の患者が1年間にわたって先発品を服用した場合と後発品を服用した場合の薬剤費差額を試算すると、先発品(29.50円×90カプセル×12か月)では約31,860円、後発品(17.90円×90カプセル×12か月)では約19,332円となり、年間で約12,528円の差が生じます。患者1人あたりの年間負担差としては小さくないです。
これが数百人・数千人の慢性疾患患者に広がれば、医療機関・調剤薬局単位での医療費削減効果は数百万円単位になり得ます。医療費適正化への貢献は見えにくいですが、確実に積み重なるものです。
また、後発品の普及に積極的な薬局・医療機関は、前述の各種加算を通じて診療報酬上でもメリットを得られます。患者へのメリット、施設へのメリット、国全体の医療費抑制という三方向で後発品活用の意義を語ることは、患者への説明場面でも説得力を持ちます。これが基本的な視点です。
後発品に対して患者が「効果が違うのでは?」という不安を持つケースは今でも少なくありません。そのような場面では、「同一の有効成分・同一の含量・同一の投与経路で、厚生労働省が生物学的同等性を確認した医薬品です」と説明することで、信頼感を与えることができます。患者への適切な情報提供が後発品普及の鍵です。
参考:後発医薬品の生物学的同等性試験や普及目標に関する公式情報です。
厚生労働省|後発医薬品の使用促進について