エパデールS900の「後発品」だと思い込んで処方すると、患者の窓口負担が想定外に増える場合があります。

イコサペント酸エチル粒状カプセル900mg「モチダ」は、2025年12月5日に薬価基準へ収載され、同日に発売されました。製造販売元は持田製薬販売株式会社で、持田製薬株式会社との販売提携品です。薬価収載からわずか数カ月という非常に新しい品目であるため、現場での認知が追いついていないケースも少なくありません。
この薬剤が注目される最大の理由は、単なるジェネリック(後発品)ではなく、AG(オーソライズドジェネリック)として位置づけられている点にあります。先発品である「エパデールS900」を製造・販売する持田製薬グループが自ら展開するAGであり、原薬・添加剤・製造方法・製造工場のすべてが先発品と同一です。つまり中身は先発品と全く同じものが、後発品の薬価で流通しているということになります。これは使えそうです。
現在(2026年3月31日まで)の薬価は1包41.20円です。先発品エパデールS900の現行薬価46.20円と比較すると、1包あたり5円の差がありますが、2026年4月以降の薬価改定では先発品が42.50円に引き下げられる一方、「モチダ」は引き続き41.20円が維持される見通しです(薬価改定情報より)。差額は縮まりますが、後発品としての薬価算定上の位置づけ自体は変わりません。
発売当初の包装は84包と420包の2規格が用意されており、84包の包装薬価は3,461円、420包は17,304円となっています。識別コードはMO20M(分包に表示)で、分包上の表示を確認することで他の規格品との取り違えを防ぐことができます。
持田製薬販売「イコサペント酸エチル粒状カプセル「モチダ」新発売のご案内(PDF)」
※薬価・包装規格・識別コードなど発売時の詳細情報が掲載されています。
処方・調剤の現場で「どの後発品を選ぶか」を判断するうえで、薬価の横断比較は欠かせません。900mg規格のイコサペント酸エチル粒状カプセルには複数のメーカー品が存在しており、それぞれの薬価(2026年3月31日まで)を整理すると以下のとおりです。
| 品名 | メーカー | 薬価(1包) |
|------|--------|-----------|
| エパデールS900(先発品) | 持田製薬 | 46.20円 |
| イコサペント酸エチル粒状カプセル900mg「モチダ」(AG) | 持田製薬販売 | 41.20円 |
| イコサペント酸エチル粒状カプセル900mg「TC」 | 東洋カプセル | 41.20円 |
| イコサペント酸エチル粒状カプセル900mg「日医工」 | 日医工 | 41.20円 |
| イコサペント酸エチル粒状カプセル900mg「サワイ」 | 沢井製薬 | 41.20円 |
現時点では「モチダ」「TC」「日医工」「サワイ」の後発品はいずれも1包41.20円で横並びの状態です。後発品間の薬価差はありません。
では「モチダ(AG)」と他の後発品の差はどこにあるのでしょうか。一般的なジェネリックは有効成分のみが先発品と同一であり、添加剤・製造方法・製造工場は異なります。一方でAGは原薬・添加剤・製造方法・製造工場まで先発品と全て同一です。過去には一般的なジェネリック品において品質上の問題が指摘されたケースがあるため、品質の一貫性を重視する現場や、患者への説明コストを抑えたい場合にはAGの活用が有力な選択肢となります。
薬価という金額面だけで比較すれば差はないことが分かりました。つまり選択の根拠は「品質面の安心感」と「患者への説明しやすさ」にシフトするということになります。品質が条件です。
薬価サーチ「イコサペント酸エチル粒状カプセル900mg「モチダ」の同効薬・薬価一覧」
※先発品・後発品・AG含めた同効薬の薬価を一覧で確認できます。
2024年10月から始まった長期収載品の選定療養制度は、医療現場に大きな変化をもたらしました。「モチダ」の先発品であるエパデールS900はこの選定療養の対象品目に指定されており、患者が先発品を希望した場合は薬価差の4分の1を特別の料金として窓口で追加徴収する必要があります。
具体的な金額を見てみましょう。現行の薬価差(2026年3月31日まで)は1包あたり46.20円(先発)−41.20円(後発品最高価格)=5.00円で、その4分の1は1.25円です。高脂血症の標準的な用法である1日2包(900mg×2)を30日処方した場合、60包分の選定療養費は60×1.25円=75円(税抜)となります。これに消費税10%が加算されると82.5円が上乗せになります。1回の処方では小さな金額に見えますが、長期処方を繰り返す患者にとっては積み重なる負担です。
2026年4月以降の薬価改定でエパデールS900は46.20円→42.50円に改定される見通しです(2026年3月時点の情報)。一方で後発品は41.20円のまま据え置かれる予定であるため、差額は1.30円に縮小します。選定療養費の算出にも影響が出ることを頭に入れておく必要があります。
重要なのは、AGである「モチダ」を処方・調剤した場合は選定療養費が発生しない点です。後発品として扱われるため、先発品を希望しない限り患者への追加徴収は不要です。エパデールS900を継続処方しているままにしておくと、患者は不必要な負担を払い続けることになります。これは知らないと損するポイントです。
厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」
※選定療養の仕組みや対象品目リストを確認するための公式ページです。
「モチダ」を含むイコサペント酸エチル粒状カプセル900mgの効能・効果は「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍・疼痛・冷感の改善」と「高脂血症」の2つです。高脂血症に対する標準用法は1回900mgを1日2回食直後で、中性脂肪値の異常が強い場合には1回900mg・1日3回(1日最高用量2700mg)まで増量できます。閉塞性動脈硬化症に対しては1回600mgを1日3回食直後が基本です。
服用タイミングの「食直後」は単なる慣例ではありません。イコサペント酸エチルは脂質由来の成分であり、腸からリンパへの吸収に胆汁酸が必要です。胆汁分泌が活発になる食直後を外すと吸収効率が著しく低下します。持田製薬の製品Q&Aにも「空腹時に服用すると吸収が悪くなる」と明記されており、食後30分以内が吸収効率のピークとされています。これが原則です。
また、噛まずに服用させることも添付文書に明記されています。軟カプセル剤であるため、噛み砕くと油状の内容物が口腔内に広がり、不快感や魚臭さの原因となります。患者指導時に見落とされやすいポイントです。
禁忌に該当する患者への処方には特に注意が必要です。出血している患者(血友病・消化管潰瘍・尿路出血等)やミフェプリストン・ミソプロストール投与中の患者には投与できません。また、ワルファリンやアスピリンなどの抗凝固薬・抗血小板薬との併用では出血傾向が増大するため、相互作用の確認は必須です。
重大な副作用として特筆すべきは、イコサペント酸エチル(4g/日)の海外臨床試験で「入院を要する心房細動・心房粗動のリスク増加」が報告されていることです。日本での最高用量2700mgは4gを下回りますが、海外試験の知見として知っておくべき情報といえます。肝機能障害・黄疸の報告もあるため、長期投与時の定期的な血液検査が推奨されます。
持田製薬「エパデールの製品Q&A」
※食直後服用の理由など、患者指導に役立つ詳細な情報が掲載されています。
エパデールS900を長期処方されている患者がいる場合、AG「モチダ」への切り替えを提案する際の説明は比較的容易です。なぜなら、原薬・添加剤・製造方法・製造工場が先発品と完全に同一であるからです。「中身は全く同じで、名前と価格が違うだけ」という説明が正確に成り立ちます。これは使えそうです。
一方で、通常の後発品への切り替えでは「成分は同じでも製造工場や添加剤が異なる」という実態があり、患者から不安の声が上がることがあります。特に過去にジェネリックへの切り替えで体調変化を訴えた経験を持つ患者には、AGであることを明示することで受け入れられやすくなります。
病院・薬局の採用担当者視点から見ると、AGの薬価は先発品より安く設定されるため、在庫管理や調剤報酬算定における後発品加算を活用する面でもメリットがあります。後発品調剤体制加算の算出対象に含まれるため、後発品割合の向上にも貢献します。
レセプト算定上の注意点として、「モチダ」のレセプト電算処理システムコードは銘柄名コード623000801・統一名コード622739100です。薬剤マスタへの登録は2025年12月以降の更新データに含まれているはずですが、古いマスタのままでは登録されていない可能性があります。算定エラーを防ぐため、薬剤システムのマスタ更新状況を確認することをお勧めします。
「モチダ」の薬価基準収載医薬品コードは3399004M4017(統一名)・3399004M4157(YJコード)です。同一成分の他後発品と混在しないよう、識別コード「MO20M」(分包に印字)で確認するのが確実です。
CareNet「イコサペント酸エチル粒状カプセル900mg「モチダ」薬剤情報」
※YJコード・薬価・製薬会社など基本情報を手早く確認できます。