ヘルベッサー錠の在庫が潤沢でも、ジェネリック切り替えで薬効が変わるリスクがあります。

ヘルベッサー錠(一般名:ジルチアゼム塩酸塩)は、狭心症・高血圧・頻脈性不整脈に対して幅広く処方されるカルシウム拮抗薬です。その出荷調整が医療現場で大きな問題となったのは、2022年末から顕在化した後発医薬品メーカーの製造不良問題に端を発します。
日本では後発医薬品の大手メーカーである小林化工・日医工などが製造管理上の重大な違反を起こし、業務停止命令を受けました。これにより後発品だけでなく先発品も含めた広範な供給不安が連鎖的に発生しました。つまり「後発品だけの問題」ではないということです。
ヘルベッサー錠を製造・販売する田辺三菱製薬株式会社および関連する後発品メーカー各社は、2023年以降も出荷調整の状態を継続しています。出荷調整品目リストは定期的に更新されており、医療従事者はこまめな確認が必要です。
とくに注意が必要なのは、出荷調整の状況が「錠剤の規格ごと」に異なる点です。たとえば30mg錠は比較的流通しているが60mg錠は極端に不足しているといったケースもあります。規格ごとの確認が基本です。
現時点(2025年8月時点の情報)でも複数の規格で出荷調整が継続しており、解消の見通しは不透明なままです。医療機関の薬剤部や調剤薬局は、卸業者からの入荷情報を日次で追う体制を整えることが現実的な対応となっています。
厚生労働省:医薬品の供給不安定に関する情報(後発医薬品問題を含む最新通知一覧)
田辺三菱製薬:ヘルベッサー錠の製品情報・出荷調整に関するお知らせ
代替薬を選ぶ際、「同じカルシウム拮抗薬だから何でも代わりになる」という発想は危険です。ジルチアゼムはフェニルアルキルアミン系・ベンゾチアゼピン系に分類され、心拍数低下作用(陰性変時作用)と血管拡張作用を併せ持つ点が特徴的です。これはジヒドロピリジン系(アムロジピンなど)とは明確に異なります。
代替薬の候補として検討される主な薬剤を整理すると以下のとおりです。
「同効薬なら何でも大丈夫」は禁物です。
とくに頻脈性心房細動に対してヘルベッサー注射液(静注用)を使っていたICU・CCU症例では、代替の選択が命に直結します。経口ヘルベッサー錠の代替とは次元が異なる判断となるため、循環器専門医へのコンサルトを迷わず行う体制が重要です。
剤形の問題も見落とされがちです。ヘルベッサーRカプセル(徐放製剤)とヘルベッサー錠(速放製剤)は同じジルチアゼムでも薬物動態が異なります。徐放製剤から速放製剤への変更は用法・用量の大幅な見直しが必要になるため、1日2回から1日3回への変更など、患者のアドヒアランス低下を招くリスクも考慮に入れる必要があります。
PMDA(医薬品医療機器総合機構):ヘルベッサー錠の添付文書(最新版)
出荷調整の情報を患者にどう伝えるかは、医療従事者にとって頭を悩ませる問題です。患者説明が不十分だと「薬が変わった=病状が悪化した」と誤解されてしまうことがあります。これは患者の不安を無用に高め、受診中断や自己判断での服薬中止につながるリスクがあります。
患者への説明で有効なフレームは、「薬の名前や形が変わっても、目的とする効果は変わりません」という点を最初に伝えることです。説明の順番が大切です。具体的には以下の3段階で説明すると伝わりやすくなります。
患者への丁寧な説明が基本です。
処方変更のフローについては、院内で統一したプロトコルを整備することが理想です。医師・薬剤師・看護師の三者が同じ情報を共有できるよう、電子カルテへのアラート設定や薬剤変更記録の明示的な記載ルールを決めておくと、伝達ミスを防ぐことができます。
処方箋発行の段階では「後発品への変更不可」欄の活用も戦略の一つです。ただし出荷調整の状況では後発品も不足していることが多く、「変更不可」にしても薬局での在庫がないという状況が起こり得ます。薬局との事前連絡・情報共有が現実的な対策となります。
副作用モニタリングの観点では、代替薬への変更後2週間以内に血圧・脈拍の再確認を設定しておくことが推奨されます。アムロジピンへの変更時には足首の浮腫(約10%の患者に出現)、ベラパミルへの変更時には便秘(報告頻度約30%)といった特有の副作用が出やすいため、事前に患者へ伝えておくとクレーム対応がスムーズです。
今回の出荷調整が「一時的な品不足」にとどまらず長期化している背景には、日本の後発医薬品産業が抱える構造的な問題があります。意外なことに、国が推進してきたジェネリック医薬品の使用促進政策そのものが、供給不安の遠因となっています。
国は2020年度末までに後発医薬品の数量シェア80%以上を目標に掲げてきました。この政策により多くのメーカーが競争的に後発品市場へ参入しましたが、薬価の引き下げ圧力が強まるなかで製造ラインへの設備投資が追いつかなくなりました。結果として品質管理体制が脆弱になったメーカーが相次いで製造管理上の違反を引き起こしたのです。
これが構造問題の核心です。
厚生労働省は2023年以降、後発医薬品産業の「持続可能な供給体制」の確立を目指す政策方針を打ち出しています。具体的には、品目数の絞り込み・薬価の適正化・製造管理基準の強化が三本柱となっています。しかし業界全体の体制立て直しには数年単位の時間がかかるとされており、現場レベルでの供給不安定は当面続くと見ておいたほうが現実的です。
ヘルベッサー錠に限って言えば、田辺三菱製薬は国内製造拠点の生産能力拡充を進めているとされていますが、供給が完全に正常化する時期は公式には明示されていません。医療機関は「正常化を待つ」のではなく、「不安定な供給を前提とした処方設計」を恒常的に行う体制づくりが求められています。
出荷調整という外部要因に対応するうえで、薬剤部・薬局が内部的にできることは意外と多くあります。これは見落とされがちな視点です。
まず在庫の「見える化」が最初の一手です。ヘルベッサー錠のように出荷調整が長引く品目については、リアルタイムの在庫数量・直近1カ月の払い出し実績・卸からの入荷予定を一元管理するスプレッドシートまたは電子薬歴システムの活用が有効です。
複数の調達ルートを持つことが原則です。
薬剤師が積極的に処方提案(プロトコール・ベースド・ファーマシー・プラクティス:PBPP)を行うことも、出荷調整期間における院内の混乱を最小化するうえで効果的です。医師と薬剤師があらかじめ合意した代替薬切り替えプロトコルを策定しておけば、個別の処方ごとに医師への確認が不要となり、対応のスピードが大幅に向上します。
PBPPの導入には院内での規程整備と各診療科の同意取り付けが必要ですが、一度体制を作れば出荷調整以外の多くの場面でも応用できます。薬剤師の専門性を活かした業務効率化という観点からも、この機会に整備を検討する価値があります。
なお、調剤薬局との連携では、「ヘルベッサー錠が処方されている患者に対して、代替薬への変更が処方箋上で指示されている場合のコミュニケーション手順」を事前に文書化しておくことが理想です。緊急時に口頭のみでやり取りすると伝達ミスが生じやすく、調剤エラーのリスクが高まります。記録として残るFAXや電子メールでの確認を標準化するだけで、リスクを大きく下げることができます。
日本病院薬剤師会:薬剤供給不安定時における対応指針・プロトコル関連資料

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