フレーバーを変えるだけで、服薬拒否率が約40%改善されたという報告があります。

ヘパンED配合内用剤は、肝不全用経腸栄養剤として広く使われており、長期にわたる服用が前提となる製品です。そのため、継続服薬を支援するうえでフレーバーの選択は非常に重要な臨床上の判断事項となります。
現在、ヘパンED配合内用剤にはフルーツミックス味とヨーグルト味を含む複数のフレーバーが設定されています。それぞれのフレーバーは患者の年齢層や嗜好、肝性脳症の程度、口腔内環境などを考慮して選ばれるべきものです。これは味の好みの問題だけではありません。
フレーバーが合わないと、患者は服薬を自己中断するリスクが高まります。肝不全や肝硬変患者にとって、経腸栄養剤の中断は低アルブミン血症の悪化や筋肉量の減少(サルコペニア)につながるため、フレーバー選択は栄養療法の成否を左右するといっても過言ではありません。
フルーツミックス味は、甘みと酸味のバランスが取れており、食欲低下がある患者にとっても比較的受け入れやすいとされています。一方、ヨーグルト味はマイルドな乳酸系の風味があり、強い甘みを好まない患者や高齢者に支持される傾向があります。
つまりフレーバー選択は、患者の主観的な好みだけでなく、服薬継続という臨床目標に直結する判断です。
| フレーバー | 特徴 | 向いている患者層 |
|---|---|---|
| フルーツミックス味 | 甘みと酸味のバランスが良い | 食欲不振がある中壮年層 |
| ヨーグルト味 | マイルドな乳酸系の風味 | 強い甘みを好まない高齢者 |
医療機関によっては、初回処方時に両フレーバーのサンプルを提供し、患者が試してから選択できる体制を整えているところもあります。こうした取り組みは、服薬開始直後の脱落を防ぐうえで有効です。
PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構):ヘパンED配合内用剤の添付文書(製品規格・成分・用法用量等の一次情報として参照)
服薬アドヒアランスとフレーバーの関係は、感覚的な話にとどまりません。これは数字で語れる臨床課題です。
経腸栄養剤全般のアドヒアランス研究において、「味が合わない」ことを理由とした服薬中断は、全中断理由の約35〜50%を占めるとされています。ヘパンED配合内用剤のような疾患特異的栄養剤においても、この傾向は同様です。肝疾患患者の多くは長期服用を求められるため、1回の味に対する不満が積み重なると、数週間のうちに自己中断に至るケースが臨床現場でも多く報告されています。
これは見逃せませんね。
特に注目すべきは、BCAA(分岐鎖アミノ酸)を高濃度に含む製剤特有の「苦み」や「えぐみ」です。ヘパンED配合内用剤は、肝性脳症の予防・改善を目的としてBCAA比率が高く設計されているため、フレーバーなしでは多くの患者が「飲みにくい」と訴えます。フレーバーはこの苦みをマスキングする重要な役割を担っています。
実際に、患者が「前回と同じ味にしてください」とリピートを希望する場合、その背景にはすでに服薬継続への意欲があるサインと読み取れます。逆に、「どれでもいいです」という反応が続く場合は、服薬への関心低下を示すサインである可能性があり、モニタリングが必要です。
フレーバー選択は患者との会話のきっかけになります。
医療従事者として、定期的に「今の味は続けやすいですか?」と一言確認するだけで、アドヒアランスの問題を早期に捉えられます。この確認は診察時間に大きな負担をかけるものではなく、処方継続率の向上に直結する実践的な介入です。
フレーバーは「飲む瞬間」だけの問題ではありません。保管環境によっても風味は変わります。
ヘパンED配合内用剤は粉末状の製剤であり、開封後は湿気・高温・直射日光の影響を受けやすい性質があります。特に夏季(室温が30℃を超える環境)では、フレーバー成分が劣化し、本来の香りや甘みが失われる場合があります。その結果、患者が「なんか前と味が違う」と感じて服薬意欲が低下するケースも報告されています。
意外ですね。
添付文書上、ヘパンED配合内用剤の保管条件は「室温保存(1〜30℃)」とされています。しかし在宅患者の場合、夏場に室内が30℃を超えることは珍しくありません。特にエアコン非使用の高齢者世帯では、保管環境が適正範囲を超えることが多く、フレーバーの風味劣化リスクが高まります。
こうした在宅患者への指導として、以下の点を伝えることが実践的です。
また、溶解後の保管も注意が必要です。水に溶かした後は、時間が経つにつれてフレーバーの香りが揮発し、風味が弱まります。溶解後はできる限り早めに(30分以内が目安)飲むよう患者へ伝えることが、風味を保つうえで大切です。
保管と溶解タイミングが条件です。
PMDA 添付文書情報:ヘパンED配合内用剤(保管条件・使用上の注意の一次情報として参照)
フレーバーを選ぶ以前に、「何を飲んでも飲みにくい」という患者が一定数います。これは現場でよく直面する問題です。
特に以下のような患者では、どのフレーバーを選んでも服薬への抵抗感が生じやすい傾向があります。
味覚障害がある場合、フレーバーの効果は限定的になります。これは押さえておくべき点です。
亜鉛欠乏は肝硬変患者の約60〜80%にみられるとされており、味覚障害の主要因のひとつです。この場合、フレーバーを変えても根本的な解決にはなりません。亜鉛製剤(例:プロマック顆粒やノベルジン錠など)を併用して亜鉛の補正を行いながら、段階的に服薬環境を整えることが優先されます。
また、飲み方の工夫として「冷やして飲む」「氷を浮かべて飲む」などの温度調整も、フレーバーの感じ方を変える手段として有効です。冷温ではBCAA特有の苦みが感じにくくなるため、フレーバーの甘みが相対的に際立ちやすくなります。これは医療従事者からの一言アドバイスとして伝えやすいポイントです。
これは使えそうです。
さらに、どうしても経口での継続が困難な場合には、経鼻胃管や胃瘻(PEG)を介した投与への切り替えを検討する必要があります。フレーバー対応の限界を見極め、栄養投与ルートそのものを再評価することも、医療従事者としての重要な臨床判断です。
フレーバーの好みは、カルテに記録されないことが多い情報です。しかしそれが服薬中断の引き金になる場合があります。
病棟での入院管理から外来への移行、あるいは在宅医療への移行の場面で、「どのフレーバーを好んでいたか」という情報が引き継がれないことがあります。その結果、新しい担当者が別のフレーバーを処方し、患者が「前の味と違う」と感じて飲まなくなるという事態が実際に起きています。
フレーバー情報の引き継ぎが基本です。
この問題を防ぐためには、服薬指導記録や栄養管理計画書に「使用フレーバー:フルーツミックス味(患者希望)」のように明記する習慣が有効です。電子カルテのサマリーや薬歴に一行残すだけで、次の担当者が迷わずに同じフレーバーを継続処方できます。
多職種連携の観点では、管理栄養士・薬剤師・看護師・医師がそれぞれの接点で患者のフレーバーに関する反応を把握し、情報を共有することが理想的です。特に訪問看護や在宅医療の場面では、訪問時に「今日の味はどうでしたか?」と聞いた看護師が得た情報を、次の外来処方に活かす連携ができているかどうかが、長期的な栄養管理の質を左右します。
こうした取り組みは一見地味ですが、脱落率の低下=栄養状態の維持=入院リスクの抑制という形で、医療経済的なインパクトにもつながります。肝硬変患者の再入院コストは1件あたり数十万円規模になることも少なくなく、服薬継続支援は費用対効果の高い介入のひとつです。
多職種で共有することが条件です。
ヘパンED配合内用剤のフレーバー選択は、処方箋の一行に見えますが、その背後には長期的な栄養管理・患者QOL・医療資源の活用という大きなテーマが隠れています。医療従事者として、フレーバーに真剣に向き合う視点を持ち続けることが、患者の予後を支えるうえで意味ある実践となります。
日本静脈経腸栄養学会(JSPEN):経腸栄養剤の服薬アドヒアランスや栄養管理に関する学術情報として参照(J-STAGE掲載論文)

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