ハロペリドール注 添付文書で押さえる禁忌と重大副作用

ハロペリドール注の添付文書を正しく理解できていますか?禁忌・用法用量・QT延長リスク・悪性症候群など、医療現場で見落としがちなポイントを詳しく解説します。あなたの患者管理は本当に安全でしょうか?

ハロペリドール注 添付文書で確認すべき禁忌・用法・副作用の全知識

静脈内注射でアドレナリンを使って昇圧しようとすると、血圧がさらに下がります。


📋 この記事の3ポイント要約
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禁忌は7項目

昏睡状態・重症心不全・パーキンソン病・レビー小体型認知症・アドレナリン併用など、添付文書に定められた禁忌を必ず確認する必要があります。

静脈内注射時は心電図モニタリング必須

QT延長・心室細動・心室頻拍(Torsades de pointes含む)が報告されており、静脈内注射時はバイタルサインの監視が添付文書上で義務付けられています。

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重大副作用は9項目

悪性症候群・心室細動・麻痺性イレウス・遅発性ジスキネジア・SIADH・横紋筋融解症・肺塞栓症・肝機能障害など、生命を脅かす副作用が複数存在します。


ハロペリドール注 添付文書の基本情報:効能・用法用量の正しい理解



ハロペリドール注(代表品:ハロペリドール注5mg「ヨシトミ」、製造販売元:田辺ファーマ株式会社)は、1978年4月から販売が開始された歴史ある第一世代(定型)抗精神病薬です。日本薬局方収載品であり、劇薬・処方箋医薬品に指定されています。最新の添付文書は2025年12月に第3版が改訂されており、医療現場で日常的に使用されているにもかかわらず、内容の変更点を見落としているケースが少なくありません。


効能・効果は「統合失調症、そう病」の2つに限定されています。注射剤であることから、緊急性の高い場面で使用されるのが基本です。つまり緊急対応が前提です。


用法・用量については、「急激な精神運動興奮などで、緊急を要する場合に用いる」と明記されており、定期的な維持投与には適していません。通常成人では1回5mg(1mL)を1日1〜2回、筋肉内または静脈内注射します。年齢・症状により適宜増減としていますが、高齢者では少量からの開始が原則となります。1管あたりに含まれる有効成分は5.0mg、添加物として乳酸6.2mg・ブドウ糖30.0mg・塩酸・水酸化ナトリウムが含まれています。


投与経路として重要なのは、「筋肉内又は静脈内注射にのみ使用すること」と適用上の注意に記載がある点です。皮下注射や点滴静注による持続投与は添付文書外の使用に当たるため、注意が必要です。筋肉内注射を行う際には、同一部位への反復注射を避けること、神経走行部位を避けること、注射針刺入時に激痛や血液逆流があれば即座に針を抜いて部位を変えることが求められます。


JAPIC(日本医薬情報センター):ハロペリドール注射液 添付文書PDF(2025年12月改訂版)


ハロペリドール注 添付文書の禁忌7項目を医療従事者が見落とさないために

添付文書に定められた禁忌は、2025年12月改訂版の時点で計7項目存在します。これらは「投与してはならない」と明確に規定された絶対的禁忌であり、1つでも該当すれば原則として処方・投与は行えません。7項目が基本です。


まず2.1として「昏睡状態の患者」が挙げられています。中枢神経抑制作用により昏睡状態がさらに悪化するおそれがあるためです。2.2では「バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者」が禁忌とされており、フェノバルビタールなどとの薬物相互作用により中枢神経抑制が著しく増強されます。


2.3の「重症の心不全患者」は、心筋に対する障害作用と血圧降下が報告されていることが根拠です。2.4「パーキンソン病又はレビー小体型認知症の患者」は、ドパミンD2受容体遮断作用により錐体外路症状が急激に悪化するおそれがあるため禁忌とされています。レビー小体型認知症への追記は比較的最近(2020年3月)の改訂であり、見落としやすい変更点の1つです。認知症でも種類によって対応が変わります。


2.5は「本剤の成分またはブチロフェノン系化合物に対し過敏症の既往歴のある患者」です。2.6「アドレナリンを投与中の患者(ただしアナフィラキシーの救急治療、または歯科領域における浸潤麻酔・伝達麻酔に使用する場合を除く)」については、本剤のα受容体遮断作用によりアドレナリンのβ受容体刺激作用が優位となり、重篤な血圧降下(昇圧反転)が起こりうるためです。2.7は「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」で、動物実験での催奇形性報告や胎児毒性のデータに基づいています。












































禁忌番号 禁忌対象 理由(添付文書より)
2.1 昏睡状態の患者 昏睡状態が悪化するおそれがある
2.2 中枢神経抑制剤強影響下の患者 中枢神経抑制作用が増強される
2.3 重症の心不全患者 心筋障害・血圧降下が報告
2.4 パーキンソン病・レビー小体型認知症患者 錐体外路症状が悪化するおそれがある
2.5 ブチロフェノン系化合物過敏症の患者 過敏反応のリスク
2.6 アドレナリン投与中の患者(例外あり) 血圧降下(昇圧反転)が起こりうる
2.7 妊婦・妊娠の可能性がある女性 催奇形性・胎児毒性の報告


特に高齢者の急性せん妄治療にハロペリドール注を使用する場面が多い救急・ICU領域では、患者背景を素早く確認しながらこれら7項目を照合するワークフローを確立しておくことが、インシデント防止につながります。


PMDA(医薬品医療機器総合機構):ハロペリドール注射液 使用上の注意改訂指示文書


ハロペリドール注 静脈内注射時のQT延長リスクと心電図モニタリングの実際

添付文書の重要な基本的注意(8.1)に明記されているとおり、ハロペリドール注の静脈内投与においては心室細動・心室頻拍(Torsades de pointesを含む)・QT延長が報告されており、心停止に至った例も存在します。これは見た目に地味な注意書きに見えますが、生命にかかわる重大事項です。


静脈内注射時には「心電図や呼吸状態等のバイタルサインの監視を行うなど注意すること」と明示されています。筋肉内注射と比較して静脈内注射はより速やかに血中濃度が上昇するため、心臓への影響が強く出やすい点を理解しておく必要があります。モニタリングは必須です。


QT延長のリスクを高める要因として添付文書が示しているのは、低カリウム血症のある患者(9.1.2)です。低K血症はQTc延長を大きく助長するため、ハロペリドール注投与前の電解質確認は実臨床における重要な確認事項となります。また、10.2の併用注意として「QT延長を起こすことが知られている薬剤」との併用が列挙されており、相加的なQT延長リスクに注意が必要です。具体的にはクロルプロマジン・プロメタジン・キニジンなどが挙げられています。これらが重なると危険が増します。


実臨床では、投与前の12誘導心電図でベースラインのQTc(補正QT間隔)を確認し、QTcが500msec以上に延長している場合は投与を慎重に判断することが推奨されています。QTcの計算にはBazettの式($$QTc = QT / \sqrt{RR}$$)が広く使われており、男性450msec・女性470msecを超えると延長と判定します。


なお、低血圧も重要な副作用の1つです。添付文書の11.2(その他の副作用)には血圧降下・起立性低血圧が記載されており、投与後の血圧モニタリングも怠ることはできません。特に脱水・低栄養状態の患者や心血管疾患の既往がある患者では(9.1.1)一過性の血圧降下に注意が必要です。


note(ebnysk):抗精神病薬がQT延長に及ぼす影響まとめ(臨床的視点からの解説)


ハロペリドール注 添付文書の重大な副作用9項目を現場で早期発見するポイント

添付文書11.1に列記されている重大な副作用は、すべて「頻度不明」と記載されていますが、これは「稀なら無視してよい」という意味ではありません。頻度不明とは、市販後調査等の症例報告から推定できない、または十分なデータが蓄積されていないことを意味します。つまり軽視は禁物です。


① 悪性症候群(11.1.1) は、ハロペリドール注使用中に最も警戒すべき副作用の1つです。無動緘黙・強度の筋強剛・嚥下困難・頻脈・血圧変動・発汗が先行し、その後高熱が出現するという経過をたどります。白血球増加・血清CK上昇がみられることが多く、ミオグロビン尿を伴う腎機能低下や嚥下性肺炎に発展することもあります。死亡例も報告されており、疑いがあれば直ちに投与を中止します。急激な増量は引き金になりうるため(8.4)、増量する場合は慎重に行うことが添付文書上も明記されています。


② 心室細動・心室頻拍(11.1.2) はQT延長と密接に関連します。前述のとおり、静脈内注射時に特にリスクが高まります。


③ 麻痺性イレウス(11.1.3) については、注意が必要な落とし穴があります。腸管麻痺による悪心・嘔吐が、本剤の制吐作用によって不顕性化される可能性があると添付文書に明記されています(8.3)。つまり、腸閉塞や脳腫瘍などによる嘔吐がハロペリドール注の投与によって抑え込まれ、重篤な病態の発見が遅れるリスクがあります。これは経験の浅いスタッフが見落としやすいポイントです。


④ 遅発性ジスキネジア(11.1.4) は長期投与後に出現する口周部・四肢の不随意運動で、投与中止後も持続することがあり、抗パーキンソン剤でも症状が軽減しない場合があると記載されています。


⑤ SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、11.1.5) は、低Na血症・低浸透圧血症・痙攣・意識障害を伴う病態です。ハロペリドール投与中に原因不明の意識障害や電解質異常を認めた際はSIADHも鑑別に挙げる必要があります。


その他、⑥無顆粒球症・白血球減少・血小板減少(11.1.6)、⑦横紋筋融解症(11.1.7)、⑧肺塞栓症・深部静脈血栓症(11.1.8)、⑨肝機能障害・黄疸(11.1.9)が重大な副作用として列挙されています。横紋筋融解症では筋肉痛・脱力感・CK上昇・ミオグロビン尿が早期サインとなります。肺塞栓症では息切れ・胸痛・四肢の疼痛・浮腫に注意します。



  • 🔴 悪性症候群:筋強剛+発熱+CK上昇→即時中止

  • 🔴 心室頻拍・QT延長:モニタリングで早期検出

  • 🟡 麻痺性イレウス:制吐作用で嘔吐が隠れる点に注意

  • 🟡 SIADH:低Na血症・意識障害出現時に疑う

  • 🟡 遅発性ジスキネジア:長期使用後に出現・中止後も持続の可能性

  • 🟡 横紋筋融解症:筋肉痛・CK上昇で疑い、腎障害に波及しうる

  • 🟡 肺塞栓症・DVT:不動状態・長期臥床患者でリスク上昇

  • 🟡 肝機能障害・黄疸:肝機能障害患者では血中濃度が上昇しやすい


PMDA:薬剤性せん妄に関する安全対策情報(副作用の早期発見と対応の解説)


ハロペリドール注 添付文書が医療従事者に伝えきれていない独自視点:制吐作用が招く見落としリスク

ハロペリドール注はドパミンD2受容体遮断作用を持つため、嘔吐中枢(化学受容器引き金帯:CTZ)への抑制作用も発揮します。これは緩和医療領域では悪心・嘔吐の対症療法として活用される特性ですが、注射剤を救急・一般病棟で使用する場面では思わぬ落とし穴になりえます。


具体的には、腸閉塞・脳腫瘍・薬物中毒などによる嘔吐がハロペリドール注の投与によって抑制され、本来は自覚症状として表れるはずの重篤な病態が隠れてしまう危険性があります。添付文書8.3に「本剤は制吐作用を有するため、他の薬剤に基づく中毒、腸閉塞、脳腫瘍等による嘔吐症状を不顕性化することがあるので、注意すること」と記載されていますが、この一文の重大性が現場で十分に共有されているとはいえません。これが見落とされやすい落とし穴です。


実臨床において、「精神運動興奮+嘔吐」の患者にハロペリドール注を投与した結果、嘔吐が消失したために「改善した」と判断されてしまうケースは理論的にありえます。腸閉塞のサインである腹部膨満・腸蠕動音の消失・便秘などが身体所見として残っているにもかかわらず、嘔吐という訴えがなくなることで見逃しにつながる可能性があります。


同様に、麻痺性イレウスそのものが発現している場合にも(11.1.3)、「悪心・嘔吐は本剤の制吐作用により不顕性化することもある」と添付文書に記載されています。つまりイレウスが副作用として起きていても、嘔吐という症状が表に出ない状態になりうるのです。身体診察で補うことが必要です。


この視点から、ハロペリドール注を使用している患者には定期的な腹部観察(腹部膨満・排便状況・聴診)を継続することが推奨されます。嘔吐の「有無」だけでなく「腹部症状の全体」を評価する習慣を持つことが、見落としリスクを下げることに直結します。


また、添付文書15.1.1には「本剤による治療中、原因不明の突然死が報告されている」という一文が記載されています。さらに15.1.2では外国での疫学調査として「定型抗精神病薬も高齢認知症患者において死亡率の上昇に関与する」との報告が引用されています。高齢者へのBPSD対応でハロペリドール注を使用する際には、この点を念頭に置いた説明と観察が不可欠です。


日本緩和医療学会:せん妄の治療・ケアガイドライン(抗精神病薬の使用と注意点を詳解)


ハロペリドール注 添付文書の相互作用と過量投与時の対応を正しく知る

ハロペリドール注は主にCYP2D6およびCYP3A4で代謝されます(16.4.1)。この代謝経路の特性から、複数の薬剤との相互作用が生じます。添付文書10.2の併用注意には、臨床現場でよく使われる薬剤が多数含まれているため、特に注意が必要です。


CYP3A4を誘導する薬剤(カルバマゼピン・リファンピシンなど)との併用では、ハロペリドールの血中濃度が低下して効果が減弱するおそれがあります。一方、CYP3A4を阻害する薬剤(イトラコナゾールなど)やCYP2D6を阻害する薬剤(キニジン・プロメタジン・クロルプロマジンなど)との併用では、ハロペリドールの血中濃度が上昇して副作用が増強されるおそれがあります。血中濃度の変動に注意が必要です。


また、リチウムとの併用には特別な注意が必要です。心電図変化・重症の錐体外路症状・持続性のジスキネジア・突発性の悪性症候群・非可逆性の脳障害を起こしたとの報告があり、観察を十分に行い、そのような症状が現れた場合には投与を中止するよう記載されています。リチウムとの組み合わせは特に慎重に判断します。


ドパミン作動薬(レボドパ・ブロモクリプチンなど)とは作用が拮抗し、これらの薬効が減弱することがあります。パーキンソン病患者への処方は禁忌ですが、片頭痛などで処方されているブロモクリプチンとの併用には注意が必要です。


過量投与時(13.)の対応について、特に押さえておくべき点があります。主な症状は低血圧・過度の鎮静・重症の錐体外路症状(筋強剛・振戦・ジストニア)であり、呼吸抑制を伴う昏睡状態・心電図異常(Torsades de pointesを含む)もみられます。処置として低血圧・循環虚脱には輸液・血漿製剤・アルブミン製剤・ノルアドレナリン等の昇圧剤を使用しますが、ここで重要なのが「アドレナリンは禁忌」という点です(13.2)。


なぜアドレナリンを使ってはいけないのか。これはハロペリドールのα受容体遮断作用が背景にあります。通常、アドレナリンはα・β両受容体を刺激して血圧を上昇させますが、ハロペリドールによってα受容体がすでに遮断されている状態でアドレナリンを投与すると、β受容体刺激による血管拡張作用が優位となり、逆に血圧がさらに低下する「昇圧反転」が起こります。つまり善意の昇圧処置が逆効果になります。ハロペリドール使用中・使用後の血圧低下時には、ノルアドレナリンを選択するという知識は、救急・集中治療の現場でも再確認が必要な情報です。



  • 💊 CYP3A4誘導薬(カルバマゼピン等):ハロペリドールの血中濃度が低下→効果減弱

  • 💊 CYP阻害薬(イトラコナゾール・キニジン等):血中濃度上昇→副作用増強

  • 💊 リチウム:重症錐体外路症状・悪性症候群・脳障害のリスク

  • 💊 中枢神経抑制剤・アルコール:中枢抑制作用が増強

  • 💊 抗コリン薬:腸管麻痺などの抗コリン系副作用が増強

  • 💊 QT延長薬(クロルプロマジン等):相加的なQT延長のリスク

  • 🚨 過量投与時の昇圧:アドレナリンは禁忌→ノルアドレナリンを使用すること


厚生労働省:アドレナリン製剤の使用上の注意の改訂について(α遮断薬との昇圧反転に関する解説)






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