後発品から切り替えた先発品の薬価は、1錠あたり後発品より約1.3円以上高く、患者負担が増えます。
グリクラジド錠20mgの後発品(ジェネリック医薬品)は、2024年〜2026年にかけて主要メーカーから相次いで販売中止が告知されました。以下がその一覧です。
| 製品名 | 販売会社 | 在庫消尽時期 | 経過措置期限 |
|---|---|---|---|
| グリクラジド錠20mg「トーワ」 | 東和薬品 | 2024年12月 | 2026年3月末 |
| グリクラジド錠20mg「サワイ」 | 沢井製薬/メディサ新薬 | 2025年3月 | 2026年3月末 |
| グリクラジド錠20mg「NP」 | ニプロ | 2025年内予定 | 2027年3月末(延長) |
| グリクラジド錠20mg「日新」 | 日新製薬 | 在庫消尽次第 | 2026年3月末 |
中止理由として各社が挙げているのは、需要の減少とともに、委託製造工場の老朽化・閉鎖が主要因です。東和薬品の告知では「需要状況並びに20mg製剤の製造設備老朽化に伴う閉鎖等により」と明記されています。要するに需要と供給の両面から継続困難になったということです。
特筆すべきは、20mg規格には代替候補品(同一成分・同一含量の後発品)が存在しないという点です。40mg規格ではグリミクロン錠40mgなど後発品から先発品への切り替えが案内されていますが、20mg規格においては各社の販売中止案内文書に「20mg製剤の代替候補品はございません」と明示されています。
なぜ20mgだけ代替品がないのかというと、後発品が出揃っていた市場において複数社が同時期に撤退したため、新たに参入する後発品メーカーも現れなかったことが背景にあります。結果として、現在20mg規格で唯一入手可能なのは先発品である住友ファーマ「グリミクロンHA錠20mg」(薬価7.40円/錠)のみとなっています。
参考情報として、東和薬品による2023年度の販売実績は20mg規格で年間7,558,400錠(市場シェア約26%)に上っており、少なくとも年間2,900万錠超が市場から消えた計算になります。影響を受けた患者数は相当数にのぼると考えられます。
参考:東和薬品によるグリクラジド錠20mg/40mg「トーワ」販売中止のお知らせ(全日本病院協会掲載)
グリクラジド錠 20mg/40mg「トーワ」 販売中止のお知らせ(PDF)
経過措置とは何かを改めて確認しておきましょう。医薬品が薬価基準から削除される際には、医療機関や薬局が代替品への切り替えを準備できるよう、一定期間「保険請求は可能だが在庫があれば使用してよい」という猶予期間が設けられます。これが経過措置期間です。
グリクラジド錠20mg後発品については、多くの品目で2026年3月末が経過措置期限として設定されています(ニプロ「NP」のみ延長され2027年3月末予定)。この時点で在庫を保有していても保険請求ができなくなります。
2026年3月末が過ぎた現在(本記事執筆時点:2026年3月23日)、すでに大半のグリクラジド錠20mg後発品は経過措置期限に差し掛かっており、保険適用での調剤・処方は事実上終了しています。
医療機関側で注意が必要なのは、経過措置品目を誤って処方・調剤すると保険請求が通らないリスクがある点です。請求を受け付ける審査の仕組み上、算定誤りが発覚した場合は返還請求の対象となります。薬剤師としては現時点で在庫を持ち越していないか、確認が急務です。
一般名処方箋への対応でも注意点があります。「グリクラジド錠20mg」という一般名処方が出た場合、後発品の在庫が経過措置期限切れとなっていれば、自動的にグリミクロンHA錠20mg(先発品)での調剤が必要になります。患者への薬価変更の説明も必要になります。薬価が6.10円から7.40円に変わることは患者にとっても影響のある変化です。
参考:ニプロ経過措置品目一覧(グリクラジド錠20mg「NP」の経過措置期限延長を確認できます)
ニプロ 経過措置品目一覧(医療関係者向け)
グリクラジド錠20mg後発品から先発品(グリミクロンHA錠20mg)への切り替えは、同一成分・同一含量のため、原則として用量変更は不要です。生物学的同等性試験でも両者の同等性は確認されています。切り替えに際して別途用量調整の指示がなければ、そのまま継続で問題ありません。
ただし、実際の切り替えには以下のような実務的な注意点があります。
この切り替え対応を機に、そもそもグリクラジド(SU薬)を継続すべきかを再評価する好機ともなります。現在の糖尿病治療では、DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬といった低血糖リスクが低く、心血管・腎保護効果を持つ薬剤の選択肢が広がっています。処方変更のタイミングで主治医と連携し、患者の状態に応じた治療の見直しを提案することも、薬剤師の重要な役割です。
グリクラジドはスルホニルウレア(SU)系経口血糖降下薬であり、膵β細胞のSU受容体(SUR1)に結合することでATP感受性Kチャネルを閉鎖し、インスリン分泌を促進します。血糖値に依存しない作用機序を持つため、血糖降下効果は確実で強力です(HbA1c低下効果は−1.0〜−1.5%程度)。
SU薬の中でもグリクラジドは比較的安全性が高いとされています。その理由はいくつかあります。
このような安全性プロファイルから、現在でも「SU薬を使うならグリクラジドかグリメピリド」という考え方が主流です。需要の減少傾向はあるものの、高齢者の維持療法や低コストでの血糖管理において一定の需要が残っているのが実情です。
ただし、グリクラジドを含むすべてのSU薬には低血糖リスクが伴います。重要なのは低血糖が単なる副作用に留まらないという点です。ADVANCE試験をはじめとする大規模臨床試験のデータでは、重症低血糖の経験者は全死亡リスクが約2.7倍、心血管死リスクが上昇することが報告されています。低血糖を単なる症状ではなく予後イベントとして捉える視点が必要です。
また、DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬との併用時には低血糖リスクが有意に上昇することも確認されています。10のRCTを統合したメタ解析では、SU薬にDPP-4阻害薬を上乗せすると低血糖リスクがRR 1.52(1.29〜1.80)と約50%増加したとされています。グリクラジド処方患者がインクレチン関連薬を追加されていないか、確認は必須です。
参考:グリクラジド(グリミクロン)の作用・特性・低血糖リスクに関する詳細
グリクラジド(グリミクロン) – 代謝疾患治療薬(神戸きしだクリニック)
グリクラジド錠20mg後発品の販売中止は、単に銘柄を変えるだけでなく、その患者にとってSU薬継続が最善かを見直す機会でもあります。この視点は、特に長年同じ処方が続いている外来糖尿病患者を担当している場合に重要です。
SU薬からの切り替えを検討する際のポイントを整理すると、以下のような状況が切り替え検討の目安になります。
グリクラジドからの変更先として、他のSU薬に切り替える選択肢もあります。同じSU薬であれば、グリクラジド40mg(グリミクロン錠40mg)に変更する方法も実臨床では検討されます。グリクラジドの通常維持量は1日40〜120mg(20mg×2〜6錠相当)であり、40mg製剤に統一することで投与錠数と管理を簡略化できるケースもあります。なお、等価用量の目安として、グリベンクラミド1.25mg錠はグリクラジド40mg錠とおおむね等価とされていますが、個々の患者状態に応じた慎重な用量設定が必要です。
SU薬以外への変更では、DPP-4阻害薬(シタグリプチン、アログリプチンなど)が低血糖リスクの低さと使いやすさから代替候補として挙げられます。ただし「等価交換と思うと痛い目を見る」と糖尿病専門医が指摘するように、SU薬からDPP-4阻害薬への単純な切り替えはHbA1cの悪化を招く場合があります。切り替え後は1〜3ヶ月でのHbA1c確認が必要です。
切り替えの意思決定には主治医との密な連携が前提となります。薬剤師として貢献できるのは、処方薬の現状整理・低血糖リスクの確認・患者の服薬状況の把握といった情報提供です。これらを整理して処方医にフィードバックすることで、処方再評価が円滑に進みます。
参考:SU薬の最新の使い方・考え方(2026年版、Dr.U@糖尿病メモ)
SU薬の使い方・考え方(2026年)|Dr.U@糖尿病メモ