エクセラーゼ配合錠を他の消化酵素製剤に切り替える際、「成分が似ていれば同量で代替できる」と思っていませんか?実は含有酵素の活性単位が製品ごとに大きく異なるため、単純な1錠→1錠の置き換えで消化不良症状が悪化したケースが報告されています。

エクセラーゼ配合錠は、複数の消化酵素を一剤に配合した消化補助薬です。具体的には、セルラーゼAP3(繊維素分解酵素)・プロテアーゼAP6(タンパク質分解酵素)・リパーゼAP12(脂肪分解酵素)・アミラーゼAD(デンプン分解酵素)という4種類の酵素が含まれています。これらはいずれも麹菌(Aspergillus属)由来であり、動物性膵酵素製剤とは由来が異なる点が特徴的です。
この「由来の違い」は、臨床上の大きな差につながります。
動物性膵酵素製剤(代表例:パンクレアチン含有製剤)は膵臓そのものの酵素を補う発想で開発されており、エクセラーゼのような真菌由来製剤とは最適pH帯が異なります。エクセラーゼ配合錠の酵素が活性を発揮しやすいpH域は3.5〜5.5程度とされており、胃内の酸性環境下でも失活しにくい性質があります。一方、膵酵素製剤の多くはpH6〜8の中性〜弱アルカリ性環境で活性が高くなります。
つまり、患者の胃酸分泌状態によって代替薬の効果が変わるということです。
PPI(プロトンポンプ阻害薬)やH2ブロッカーを併用している患者では、胃内pHが上昇しているため、真菌由来酵素製剤の本来の「酸耐性」という強みが発揮されにくくなる場合があります。こうした点を踏まえると、代替薬の選定は患者の併用薬も含めて検討する必要があります。
各酵素活性の表記単位(FIP単位、日局単位など)は製品ごとに異なるため、単純比較には注意が必要です。医療従事者としてはメーカーの添付文書だけでなく、インタビューフォームの酵素活性データを確認するのが確実です。
エクセラーゼ配合錠の代替として現場でよく挙げられる製剤には、以下のようなものがあります。それぞれに特性の違いがあり、「同じ消化酵素薬だから同等」とはなりません。
まず、ベリチーム配合顆粒(田辺三菱製薬)が代表的な代替候補として挙げられます。ベリチーム配合顆粒も真菌由来の多酵素配合製剤であり、エクセラーゼと由来が近いという意味では親和性が高いとされます。ただし、顆粒剤であるため服薬アドヒアランスや味・食感への患者の反応が錠剤と異なる点には配慮が必要です。
次に、コンクライム配合錠やリパクレオン顆粒(ノバルティス製)なども選択肢に入ります。リパクレオンは高力価のリパーゼを含む膵酵素製剤で、慢性膵炎や膵切除後など膵外分泌不全が明確な症例において特に有効性が高いとされています。1回量はリパーゼ活性として10,000〜25,000 FIP単位が目安とされており、欧米のガイドラインでも推奨されている製剤です。
これは使い分けが必要ということですね。
エクセラーゼ配合錠が主に機能性消化不良や食後膨満感に対して処方されるケースが多いのに対し、リパクレオンのような高力価製剤は膵外分泌不全の補充療法として位置づけが異なります。両者を混同して代替すると、過剰補充あるいは不足補充のいずれかのリスクが生じます。
また、タフマックE配合カプセル(あすか製薬)も代替薬として検討されることがあります。タフマックEにはジメチルポリシロキサン(消泡剤)が含まれており、腹部膨満感が主訴の患者にとって付加的な効果が期待できます。消化酵素補充の目的に加えて、ガスによる不快感の軽減を狙う場合に選ばれやすい製剤です。
さらに、OTC(一般用医薬品)として流通している複合消化薬(エビオス錠など)との混同を防ぐことも医療従事者の役割の一つです。これらはあくまで健康補助的な位置づけであり、疾患に基づいた消化酵素補充とは意味が異なります。
切り替えの際に最初に確認すべきは、処方目的の明確化です。エクセラーゼ配合錠が処方されていた理由が「機能性ディスペプシアへの対症療法」なのか「慢性膵炎等による膵外分泌不全への補充療法」なのかによって、適切な代替薬の選択肢が大きく分かれます。
機能性ディスペプシアや食後膨満感が目的であれば、ベリチーム配合顆粒やタフマックE配合カプセルが候補になります。
一方、膵外分泌不全が背景にある場合は、リパクレオンのような高力価製剤への変更が検討されます。この場合、添付文書上の推奨量(リパクレオン顆粒であれば1食あたり1〜2包が目安)を参考に、脂肪便や体重減少などの症状改善を指標に用量調整を行うことが一般的です。
切替後の経過観察も重要です。
消化酵素製剤の効果は主観的な訴えに左右されるため、切替後2〜4週間での患者への聴き取り(腹部症状・排便状況・食欲・体重)が推奨されます。特に脂肪便(灰白色・浮遊する便)の改善・悪化は、リパーゼ活性の充足度を示すシンプルな指標として現場でも活用されています。
また、食事との関係も見落とせないポイントです。消化酵素製剤は原則として食直前または食事中の服用が推奨されており、食後服用では腸管内での酵素と食物の接触時間が短くなります。エクセラーゼ配合錠では食直後の服用が添付文書に記載されていますが、代替薬によっては食直前服用が推奨されているものもあるため、服用タイミングの変更を患者に丁寧に説明することが必要です。
アレルギー歴の確認も欠かせません。
真菌由来酵素製剤(エクセラーゼ・ベリチームなど)から動物性膵酵素製剤(リパクレオンなど)に切り替える場合、豚膵臓由来成分に対するアレルギー歴を事前に問診することが求められます。インタビューフォームには由来情報が明記されているため、必ず参照してください。
医薬品の供給不足や製造中止は、近年の医薬品業界において珍しくない状況になっています。エクセラーゼ配合錠についても、供給不安定の情報が一部で報告されたことがあり、代替薬への切替対応フローをあらかじめ整備しておくことが現場の安定運営につながります。
まず確認すべきことは2つあります。
1点目は、現在処方されている患者の処方目的(対症療法か補充療法か)の整理です。電子カルテや薬歴から処方理由を確認し、疾患背景別に患者をリスト化しておくと、切替時の対応速度が格段に上がります。
2点目は、採用薬リストの確認と後発品・代替品の在庫状況の把握です。院内の採用薬にベリチーム配合顆粒やタフマックE配合カプセルが含まれているかどうかを薬剤部と連携して確認します。採用されていない場合は、医薬品卸からの供給可否を早めに照会しておくことが重要です。
次に、主治医と薬剤師が連携して代替薬を選定します。この段階では、前述のpH特性・酵素活性・剤形・服用タイミングの違いを踏まえた提案が求められます。薬剤師が主導してトレーシングレポートや処方提案書を作成するフローを整えておくと、スムーズな連携が実現します。
これが代替対応の原則です。
最後に患者への説明を行います。薬が変わることへの不安を軽減するため、「同じ目的で使う消化を助ける薬です」という平易な説明に加え、剤形や服用タイミングが変わる場合はその理由と新しい服用方法を書面で渡すことが推奨されます。口頭説明だけでは約40〜60%の患者が服用方法を誤るというデータもあり、文書化が特に重要です。
なお、日本消化器病学会が公開している機能性消化管疾患の診療ガイドラインや、日本膵臓学会の慢性膵炎診療ガイドラインも、代替薬選択の際の根拠資料として参照価値があります。
日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン」(消化酵素薬の位置づけや処方根拠の確認に有用)。
日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン|日本消化器病学会
日本膵臓学会「慢性膵炎診療ガイドライン2021」(膵外分泌不全における消化酵素補充療法の根拠として参照可能)。
慢性膵炎診療ガイドライン2021|日本膵臓学会
ここでは、検索上位の記事ではあまり取り上げられていない視点を紹介します。それは「患者の食事内容によって、同じ代替薬でも効果が大きく変わる」という点です。
消化酵素製剤の酵素活性は、食事中に含まれる基質(タンパク質・脂肪・炭水化物・繊維)の量と比率によって、必要とされる酵素の種類と量が変動します。たとえば、高脂肪食(脂質40g以上/食)の場合はリパーゼ活性が特に重要となり、脂肪含有量の少ない食事であれば相対的にアミラーゼ・プロテアーゼが主役になります。
エクセラーゼ配合錠はバランス型の多酵素配合製剤ですが、代替薬によっては特定酵素に偏った組成を持つものもあります。意外ですね。
特に高齢患者や食事制限を受けている患者(腎臓病食・糖尿病食など)では、食事の内容が均一でないため、一定量の消化酵素製剤を処方しても日によって効果にムラが出ることがあります。この「効果のムラ」が患者から「薬が合わない」「調子が日によって違う」という訴えにつながっていることも少なくありません。
対処法としては、食事記録と症状日記を組み合わせた評価が有効です。
栄養士と連携して食事内容の脂肪量・タンパク量を推定し、それに合わせた消化酵素製剤の選択・用量調整を行うアプローチは、個別化医療の観点から理にかなっています。特に消化酵素製剤の切替後に症状改善が不十分な場合は、用量の問題と食事内容の問題を切り分けて評価することが、解決への近道になります。
また、高齢者では唾液分泌の減少による口腔内消化能力の低下も見落とされがちです。アミラーゼは唾液中にも含まれており、口腔内でのデンプン消化が低下している高齢者では、胃腸管での補充がより重要になります。このような背景から、アミラーゼ活性を比較的多く含むベリチーム配合顆粒は高齢者の炭水化物中心食との相性が良いとも考えられています。
代替薬の選択は成分比較だけでは不十分です。
患者の食生活・年齢・併用薬・疾患背景・剤形への適応という5つの要素を総合的に評価した上で、最適な代替薬を選ぶことが消化器領域の医療従事者に求められる臨床的な視点といえるでしょう。現場での判断に迷った際は、院内外の消化器専門医や薬剤師との情報共有を積極的に活用することをお勧めします。

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