エクラー軟膏はストロングランクでも、陰嚢に塗ると前腕の42倍吸収されます。

エクラー軟膏(一般名:デプロドンプロピオン酸エステル0.3%)は、ステロイド外用薬の5段階ランクのうち上から3番目にあたるⅢ群:ストロング(Strong)に分類されます。製造販売元は久光製薬株式会社で、2024年9月に鳥居薬品での販売は終了しましたが、久光製薬からは引き続き販売が継続されています。
ステロイド外用薬のランク分類を整理すると、以下のようになります。
| ランク | 群 | 代表薬 |
|---|---|---|
| Strongest(最も強い) | Ⅰ群 | デルモベート、ダイアコート |
| Very Strong(とても強い) | Ⅱ群 | アンテベート、フルメタ |
| Strong(強い) | Ⅲ群 | エクラー、リンデロンV、ボアラ |
| Medium(普通) | Ⅳ群 | ロコイド、キンダベート |
| Weak(弱い) | Ⅴ群 | プレドニゾロン軟膏 |
ストロングは「5段階中3番目」という位置づけです。これはいわば"中上位"の強さに相当します。
ここで見落とされがちな重要事実があります。同じストロングランクに属するベタメタゾン吉草酸エステル(リンデロンVなど)と比較した際、エクラーの血管収縮作用はベタメタゾン吉草酸エステルより強いと確認されています(巣鴨千石皮ふ科 医院コラム)。血管収縮作用はステロイドの抗炎症効力の指標となるため、同じランク内でも実質的に強い側に位置することを意味します。これは処方選択の際に覚えておきたいポイントです。
ランク分類だけで判断するのは不十分ということですね。同ランク内の微細な差も、長期使用や高吸収部位への使用では臨床的に意味を持ちます。
参考情報:ステロイド外用薬の5段階ランク一覧と各薬剤の分類を詳しく確認したい場合は以下が参考になります。
ランクはあくまでも「薬剤自体の効力」を示すものです。実際の臨床効果は、塗布する部位の経皮吸収率によって大きく左右されます。Feldmanら(1967年)の古典的研究では、前腕内側を基準値1とした際の部位別吸収率が明らかにされています。
| 部位 | 前腕内側比 | イメージ |
|---|---|---|
| 足底 | 0.14倍 | 吸収しにくい |
| 手掌 | 0.83倍 | やや低い |
| 前腕(内側) | 1.0(基準) | 標準 |
| 頭皮 | 3.5倍 | |
| 腋窩 | 3.6倍 | |
| 前頸部 | 6.0倍 | |
| 頬(下顎) | 13倍 | ⚠️ 要注意 |
| 陰嚢 | 42倍 | ⚠️ 特に要注意 |
この数値は非常に実践的な意味を持ちます。たとえばエクラー軟膏をストロングランクとして手の甲に処方する感覚で陰嚢に使い続けると、吸収量は実質的に同量のストロンゲスト相当かそれ以上になる可能性があります。頬への使用も13倍という吸収率ですから、顔面への長期連用では皮膚萎縮や毛細血管拡張といった局所副作用が現れやすくなります。
つまり「ストロングだから安心できる部位・できない部位」があるということです。吸収率の高い部位ほど、使用期間と塗布量の管理が厳格に求められます。
足底はわずか0.14倍と吸収しにくい部位です。足底の角化症や掌蹠膿疱症では、むしろストロング程度でも効果が出にくい場合があり、より強いランクや密封療法が選択肢に上がる場面があります。これは吸収率の低さを逆に意識した処方判断になります。
参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024でも部位別吸収率の数値が掲載されています。
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024 - 日本皮膚科学会
エクラーの剤形には軟膏・クリーム・ローションのほかに、エクラープラスター(テープ剤)があります。有効成分はいずれも同じデプロドンプロピオン酸エステルですが、テープ剤は皮膚への貼付による密封効果(ODT:occlusive dressing technique)が生じるため、吸収量と効力が塗り薬とは別次元に変わります。
薬剤師向けの専門情報サービス「CloseDi」の考察では、「ステロイド軟膏剤がテープ剤になると吸収量が数倍となり、ランクが1〜2ランク上がると考えられる」と記載されています。エクラーの成分はストロング(Ⅲ群)ですが、テープ剤になることでstrongest(Ⅰ群)に相当するという試算です。
この点は実臨床でも重要な意味を持ちます。患者にエクラープラスターを処方・指導する際、「エクラーはStrong(3番目)ですよ」という説明はある意味では不正確です。テープ剤として使用する場合はstrongest相当の効力が出うるという認識のもとで、貼付部位・時間・期間を厳密に管理する必要があります。
エクラープラスターの主な適応疾患は、湿疹・皮膚炎群・結節性痒疹・乾癬・肥厚性瘢痕・ケロイド・扁平紅色苔癬・慢性円板状エリテマトーデス・環状肉芽腫などです。特にケロイドや肥厚性瘢痕の治療では、ドレニゾンテープ(weakベース→strong相当)との使い分けが必要で、より難治性の病変にはエクラープラスターが選ばれることが多くなっています。
貼付時間は12時間または24時間ごとの貼り替えが基本です。患者が「24時間貼り続けた方が効く」と自己判断して貼付時間を延ばすことがありますが、これは副作用リスクの増大につながるため注意が必要です。
参考:CloseDiにおけるエクラープラスターのランク考察
【Q】ステロイド貼付剤のステロイドランクは? - CloseDi
エクラーには4つの剤形があり、それぞれ適した場面・部位が異なります。
🟡 エクラー軟膏0.3%:油中水型の基剤で刺激が少なく、乾燥した病変からびらん・ジュクジュク部位まで幅広く使用できます。保湿効果も期待でき、汎用性が高い剤形です。
🟢 エクラークリーム0.3%:べたつきが少なく伸びが良いため、患者の使用感は良好です。一方、傷口や亀裂部位では刺激を感じることがあります。外観を気にする患者や日中の使用に向いています。
🔵 エクラーローション0.3%:白い懸濁液体で、頭皮など毛髪が生えている部位への使用に適しています。使用前によく振る必要があり、患者への指導が必要な点を忘れないようにしましょう。
🔴 エクラープラスター:上述のとおり、密封効果でstrongest相当の効力を持つテープ剤です。
🧪 FTU(フィンガーティップユニット)による適正量指導
外用ステロイドの使用量の目安として、FTU(Finger Tip Unit)という指標があります。5mm口径のチューブから人差し指の先端〜第一関節まで絞り出した量が1FTUで、約0.5gに相当します。1FTUで大人の手のひら2枚分(体表面積の約2%)に塗るのが適切な量です。
これはポストカード1枚分の面積(縦10cm×横14.8cm)の約1.5倍に相当します。実際の指導場面では患者が「少なすぎて効かない」または「大量に塗りすぎる」ことが起こりやすいため、FTUを使った具体的な量の説明が副作用防止に有効です。
各部位に必要なFTUの目安は下記の通りです。
| 部位 | 必要なFTU |
|---|---|
| 顔・首 | 約2.5 FTU |
| 胸・腹(片側) | 約7 FTU |
| 背中(臀部含む) | 約7 FTU |
| 片腕 | 約3 FTU |
| 片手(両面) | 約1 FTU |
| 片足全体 | 約6 FTU |
少なすぎても多すぎても問題が生じます。これが基本です。
エクラー軟膏の副作用で臨床上もっとも問題になるのは、長期使用・高吸収部位での局所性副作用です。主なものとして、ステロイドざ瘡(毛囊炎様白色丘疹の多発)、皮膚萎縮・線条(ストレッチマーク状の変化)、毛細血管拡張、ステロイド性酒皶様皮膚炎などが挙げられます。
禁忌については、以下の病態・部位への使用が絶対禁忌となっています。
- ✅ 細菌・真菌・ウイルス・スピロヘータ皮膚感染症(カンジダ、白癬、ヘルペスなど)
- ✅ 動物性皮膚疾患(疥癬、けじらみ)
- ✅ 鼓膜穿孔のある湿疹性外耳道炎
- ✅ 潰瘍・第2度深在性以上の熱傷・凍傷
- ✅ プラスターは加えて、浸出液がある部位・発汗の強い部位も禁忌
独自視点:皮膚感染症との鑑別ミスが治療長期化を招く
ここで医療従事者が特に注意すべきなのは、「湿疹に見える皮膚感染症(白癬・カンジダ)にエクラーが処方され、かえって悪化する」というパターンです。足白癬の体部への自家感作、体幹部のカンジダ症、顔面の毛包炎などは、初診時に湿疹・皮膚炎と区別しにくいことがあります。
ステロイドを塗布してから数日で悪化する、または境界が不明瞭に拡大するという経過は、感染症への誤処方を疑うサインです。この場合、エクラーによる免疫抑制が感染を増悪させており、抗真菌薬・抗菌薬への切り替えが必要になります。
実際に皮膚感染を合併している場合でも「やむを得ず使用する場合は、あらかじめ適切な抗菌剤や抗真菌剤による治療を行う、またはこれらとの併用を考慮する」と添付文書に記載されています(エクラー添付文書、久光製薬)。ただしこれは例外的判断であり、鑑別診断が確定してから処方変更を検討するのが原則です。
また、まぶた近傍への使用では眼圧上昇・緑内障・後嚢白内障のリスクがあります。長期使用中に急激な視力低下・目のかすみ・まぶしさを訴えた場合は、すみやかに眼科受診を促す必要があります。エクラーはあくまで皮膚科外用薬であり、眼科用としては使用しません。厳しいところですね。
参考:エクラーの添付文書(久光製薬・PMDA掲載版)
エクラー軟膏0.3%/エクラークリーム0.3% 添付文書 - PMDA
参考:ステロイド外用薬の副作用と適切な指導方法についての詳細情報

ビオスリーHi錠 270錠【指定医薬部外品】 整腸剤 酪酸菌 乳酸菌 糖化菌 おなかの不調 便秘 軟便 腸内フローラ改善 腸活