HDの方がLDより含量が多いのに、薬価はHDの方が安い——知っていましたか?

2025年6月13日、厚生労働省は後発医薬品の薬価追補収載を官報告示し、エクメット配合錠LD・HDに初めて後発品が薬価収載されました。統一ブランド名は「メホビル配合錠」です。製造販売承認を取得したのは東和薬品・日新製薬・ダイトの3社でしたが、ダイトは安定供給の面で不安があるとして収載を見送りました。
実際の発売は2025年9月にずれ込みました。東和薬品の「メホビル配合錠LD/HD「トーワ」」は9月8日発売開始でしたが、発売当初から出荷調整が生じていたため、現場では日新製薬の「メホビル配合錠LD/HD「日新」」(9月10日発売)を採用した薬局も多く見られました。
これは押さえておく必要があります。収載から発売まで約3か月のタイムラグがあった点は、在庫調整計画のうえで混乱を招きやすいからです。供給状況は今後も変動する可能性があるため、複数社の採用状況を随時確認する姿勢が大切です。
| 販売名 | 製造販売元 | 薬価(1錠) | 発売 |
|---|---|---|---|
| エクメット配合錠HD(先発) | ノバルティスファーマ | 46.5円 | 2015年〜 |
| メホビル配合錠HD「トーワ」 | 東和薬品 | 23.3円 | 2025年9月 |
| メホビル配合錠HD「日新」 | 日新製薬/高田製薬 | 23.3円 | 2025年9月 |
薬価は先発品46.5円に対し後発品は23.3円。つまり対先発比50%の水準です。1日2錠服用の患者では、1錠あたり23.2円の差が生まれます。365日・1日2錠で換算すると、年間約1万6千円超の患者負担軽減になる計算です。これは大きいですね。
参考:エクメット配合錠HDの先発品・後発品(ジェネリック)検索
データインデックス:エクメット配合錠HDの薬価・後発品一覧
「メトホルミン含量が多いHDの方がLDより薬価が安い」——これは初めて見ると首をかしげる事実です。意外ですね。
もともと2015年のエクメット発売時、HDもLDも同じ87.7円/錠で設定されていました。その後、薬価改定のたびに市場実勢価格に基づいた引き下げが繰り返された結果、使用量が多いHDの方が価格交渉が多く進み、LDよりも安くなりました。現在の先発品薬価はHD46.5円・LD47.2円と、わずかながら逆転が生じています。後発品でも同様の構造が引き継がれ、HD23.3円・LD23.6円となっています。
この逆転現象が医療現場で引き起こしうるリスクがあります。「高用量のHDの方が安い」という事実を知らない医療従事者が、誤ってHD→LDに切り替えると、患者負担が増えるだけでなく、メトホルミン投与量が半減してしまう可能性があります。規格変更は投与量変更に直結するということですね。
HDとLDでビルダグリプチンの含量は同じ50mgですが、メトホルミン塩酸塩の含量は2倍差があります。切り替え時は必ずLD/HDを処方箋・薬歴・実物の3か所で照合することが原則です。東和薬品はこのリスクを意識し、PTPシートの両面にLD/HDを大きく表示するデザインを採用しています。一包化監査の際にも視認性が高く、現場負担の軽減に配慮した設計です。
参考:薬価逆転現象の解説(くすりの勉強)
エクメットHDよりLDの薬価が高い理由——薬価逆転現象の仕組み
メホビル配合錠HDへの切り替え前に確認すべき最重要事項の一つが、患者の腎機能評価です。これが基本です。
添付文書では、eGFR30mL/min/1.73m²未満の患者または透析患者は禁忌とされています。血清クレアチニン値だけでは不十分で、必ずeGFRで評価することが求められます。高齢者では筋肉量が少ないため、血清クレアチニン値が正常範囲でもeGFRが大幅に低下しているケースがあります。「Cr正常だからOK」は危険な思い込みです。
特に75歳以上の高齢者では、添付文書上で「投与の必要性を慎重に検討すること」と明記されています。
切り替え時に禁忌に該当する患者が発覚した場合、疑義照会を行うことが必須です。「先発品を使っていたから大丈夫」というわけにはなりません。先発品から後発品に切り替わるタイミングは、禁忌・慎重投与の再確認を行う絶好の機会と捉えることが大切です。
腎機能の定期モニタリングには、かかりつけ薬局での薬歴管理システムや、電子お薬手帳のデータ連携を活用することで、直近のeGFR値を把握しやすくなります。確認する習慣が、乳酸アシドーシスという致死的リスクの回避に直結します。
参考:メトホルミン含有配合錠の後発品発売に関する医薬品安全使用ニュース(愛媛大学医学部附属病院)
メトホルミン含有配合錠後発品発売に関する安全使用ニュース(PDF)
メホビル配合錠HDに含まれるメトホルミン塩酸塩は、ヨード造影剤との併用により乳酸アシドーシスを起こすリスクがあります。これは先発品・後発品を問わず共通のリスクです。
具体的なルールは「造影剤使用前後2日間(計4日間前後)の休薬」が原則です。ヨード造影剤が腎機能を一時的に低下させ、腎排泄型のメトホルミンが体内に蓄積し、血中乳酸値が上昇するという機序です。乳酸アシドーシスは発症頻度こそ稀(10万人年あたり約9人)ですが、一旦発症すると致死率が高い点で軽視できません。痛いですね。
問題となりやすいのは、患者が外来でCT検査(造影)を予定しているにもかかわらず、処方薬の休薬指示が院内・薬局間で共有されないケースです。特に、エクメットからメホビルへの切り替えが行われた直後は、患者本人が「薬の名前が変わった」という認識にとどまり、「休薬が必要な薬」とは意識しない場合があります。
緊急の造影検査が必要な場合は休薬できないこともありますが、その際は事後の腎機能確認と状態観察が一層重要になります。「先発から後発に変わっただけ」と思って服薬指導が簡略化されることが最もリスキーです。切り替えタイミングこそ、服薬指導を丁寧に行う機会です。
参考:ヨード造影剤使用時のビグアナイド系糖尿病薬の休薬に関する解説
朝霞地区薬剤師会:ヨード造影剤使用時の休薬(PDF)
メホビル配合錠HDの適応症は「2型糖尿病」のみです。この点は医療現場で見落とされがちな事実です。
近年、メトホルミンやDPP-4阻害薬ビルダグリプチンを含む配合剤は、糖尿病のみならず心不全や慢性腎臓病(CKD)の領域でも注目が集まっています。しかし、エクメット配合錠HD・メホビル配合錠HDは、現時点で2型糖尿病以外の効能効果は承認されていません。心不全患者の血糖管理目的でも、処方箋上の病名・適応を必ず確認する必要があります。
この点が見落とされると、適応外使用となり、保険請求上の問題や、患者への不適切な薬剤投与につながるリスクがあります。これは注意が必要です。
また、2025年時点でのジェネリック市場を見渡すと、DPP-4阻害薬単剤(ビルダグリプチン:エクア)には2024年12月に9社の後発品が収載されており、こちらは先行してジェネリック化が進んでいます。メホビル配合錠はこの流れに続く形での参入です。
今後、配合剤へのジェネリック置き換えが加速する中で、「先発配合剤のジェネリック=単剤ジェネリックを2錠に分けるより服薬数が減る」というアドヒアランス上のメリットを患者に正確に伝えることも、薬剤師・医師の重要な役割になります。
さらに、後発品への変更調剤を行う際には、処方箋の「変更不可」欄の確認と、保険薬局での後発医薬品調剤体制加算の取り扱いも関連します。メホビル配合錠HD/LDはいずれも「後発品(加算対象)」に該当しますが、制度上のルール変更が生じた場合は随時確認が必要です。つまり制度と実務を両輪で押さえることが条件です。
参考:エクメット後発品の薬価収載に関する日経メディカルの解説
日経メディカル:エクメットとクレナフィンの後発品が薬価収載(2025年6月)

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