摘要欄の記載を省いても、継続投与なら査定されないと思っていませんか?

デュピクセント皮下注(一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え))は、最適使用推進ガイドラインに基づく管理が保険請求の前提となっています。まず「施設要件」と「医師要件」を正確に把握しておくことが出発点です。
アトピー性皮膚炎に対してデュピクセントを使用する場合、治療責任者として配置されている医師は以下のいずれかを満たしている必要があります。
- 初期研修2年修了後、5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること(施設要件ア)
- 初期研修2年修了後、6年以上の臨床経験のうち3年以上はアトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っていること(施設要件イ)
- 小児に投与する場合は、初期研修2年修了後に3年以上の小児科診療と3年以上のアレルギー診療の臨床研修を含む6年以上の臨床経験(施設要件ウ)
これは算定条件の根幹です。
レセプトの摘要欄には、この医師要件のうちどれに該当するかを明記する必要があります(「施設要件ア」「施設要件イ」「施設要件ウ」のうち該当するものを記載)。見落とされがちなのが、2023年9月の通知改正で小児患者への投与に関する施設要件ウが新設された点です。小児アトピー性皮膚炎患者に投与を開始した際は、旧様式ではなく改正後の様式に沿った記載が求められます。
また施設には、喘息等のアレルギー疾患の担当医との連携体制やアナフィラキシー発生時の対応体制も必要です。これらは直接レセプト記載の対象ではないものの、指導・監査時に問われる事項のため、体制を整えておくことが重要です。
薬価については、現行の薬価(2025年度)として、デュピクセント皮下注300mgシリンジは1筒あたり53,493円、300mgペンは1キットあたり53,659円、200mgシリンジは1筒あたり39,549円、200mgペンは1キットあたり39,706円です(しろぼんねっと掲載情報より)。初回投与は600mg(2本)のため、薬剤料だけで約10万円超となり、高額薬剤として請求ミスが生じると機関への影響が大きくなります。施設要件が満たされているかどうかから確認しておきましょう。
参考:デュピルマブ製剤の最適使用推進ガイドラインに係る保医発通知(令和5年9月25日改正版)
保医発0925第4号(令和5年9月25日)|地方厚生局九州
アトピー性皮膚炎に対するデュピクセント皮下注のレセプト摘要欄には、投与開始時に次の項目を記載することが義務付けられています。
| 記載項目 | コード |
|---|---|
| 施設要件(ア/イ/ウのいずれか) | 830600097〜830600099 |
| 前治療要件(ア/イ/ウのいずれか) | 820600181〜820600183 |
| IGAスコア | 830600107 |
| 全身または頭頸部のEASIスコア | 830600108 |
| 体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合(%) | 830600109 |
| 小児の場合:体重(kg) | 830600110 |
ここで注意したいのが「継続投与時の扱い」です。投与開始時に一度記載すれば、その後は書かなくていい、と思っている方もいるかもしれません。これが誤りです。通知では「本製剤の継続投与に当たっては、投与開始時の情報を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること」と明記されています。つまり毎月のレセプトに投与開始時の情報を繰り返し記載する必要があります。
「投与開始時の情報」とは、IGAスコアやEASIスコアなどの疾患活動性の数値を指します。これらはあくまで「投与開始前の情報」であり、毎月再評価した値ではありません。投与開始前に取得したスコアをそのまま毎月記載する形になります。
前治療要件については、成人の場合はストロングクラス以上のステロイド外用薬やカルシニューリン阻害外用薬による直近6か月以上の治療を行っても効果が不十分であることの確認が必要です。小児ではミディアムクラス以上が基準となります。副作用等により継続困難なケースは「前治療要件ウ」として記載します。条件の区分が変わっているので確認が必要です。
レセプトシステムによっては自動挿入されるコードが古い場合があるため、2023年以降の改正通知と照らし合わせた運用が欠かせません。
参考:診療報酬明細書「摘要」欄への記載事項等一覧(薬価基準)別表Ⅱ
別表Ⅱ(薬価基準)|石川県保険医協会
デュピクセント皮下注でよくある算定誤りのひとつが、注入器加算と注射針加算の誤請求です。これは意外と抜けやすいポイントです。
デュピクセント皮下注300mgシリンジ・300mgペン・200mgシリンジ・200mgペンのすべては、針付注入器一体型のキット製品です。このため、在宅自己注射指導管理料(C101)を算定する場合においても、以下の加算は算定できません。
- C151 注入器加算
- C153 注入器用注射針加算
この点は、平成30年の薬価収載通知から繰り返し明示されており、令和5年11月の通知(保医発1121第1号)や令和7年11月の通知(保医発1111第6号)でも改めて確認されています。シリンジタイプとペンタイプの両方に共通するルールです。
通常のインスリン製剤などであれば注入器と針を別々に購入するケースがあり、その際はC151やC153が算定できます。しかしデュピクセントは注入器・針が一体化された製品として供給されているため、別途加算することはできません。算定してしまうと查定対象となります。
レセプト点検時に「デュピクセントを処方しているのにC151が計上されている」というケースは审査でも検知されやすい誤請求パターンのひとつです。レセコン(レセプトコンピューター)の設定でデフォルトに注入器加算が含まれている場合、手動で削除する運用が必要になります。定期的なレセプト点検を行うことが確認の一歩です。
参考:針付注入器一体型製品に係る注入器加算等の取扱い(令和7年11月11日通知)
保医発1111第6号(令和7年11月11日)|地方厚生局近畿
デュピクセント皮下注を在宅自己注射として管理する場合、在宅自己注射指導管理料(C101)と導入初期加算の正確な算定フローを押さえておく必要があります。
在宅自己注射指導管理料(C101)の点数体系は以下のとおりです:
- 複雑な場合:1,230点(月1回)
- 2型糖尿病以外で月27回以下:650点
- 2型糖尿病以外で月28回以上:750点
デュピクセントは2週間ごとの投与のため、月2回の注射となります。「月27回以下」に分類されます。
導入初期加算(580点) は、初回の在宅自己注射指導を行った月を起点に、3か月以内の期間に月1回に限り算定できます。3か月が経過したら算定終了です。ただし、処方内容(注射薬の種類や用量)に変更があった場合は、さらに1回のみ追加で算定できる例外規定があります。デュピクセントの剤形変更(例:シリンジからペンへの切り替え)は変更として扱われるケースがあるため、都度確認が必要です。
現場でよく混乱するのが、「初回院内注射と在宅移行が同月になったケース」です。例えば10月1日に院内でデュピクセントを注射し、同月31日に在宅自己注射に移行した場合、手技料の扱いが問題になります。この点についてはしろぼんねっとなどの専門Q&Aサイトでも繰り返し質問が上がっており、基本的には「在宅自己注射指導管理料を算定した月は、同一月内の院内注射の手技料は算定不可・薬剤料はOK」という取り扱いが原則となっています。
バイオ後続品(バイオシミラー)がある薬剤でバイオ後続品に切り替えた場合は「バイオ後続品導入初期加算(150点)」も別途算定できます。デュピクセントは現時点では後続品は承認されていませんが、今後の動向を注視する必要があります。
導入初期加算の算定タイミングを誤ると、取り下げ・再請求の手続きが必要になります。最大でも3か月分の機会損失を防ぐために、管理料開始月の記録を正確に残しておくことが重要です。
参考:在宅自己注射指導管理料と導入初期加算の算定要件解説
在宅自己注射指導管理料と導入初期加算について|クレドメディカル
デュピクセント皮下注は複数の適応症を持つ薬剤です。それぞれの適応症によって、レセプト摘要欄への記載事項が異なります。この違いを把握しておかないと、適応症が変わった場面や、複数疾患を持つ患者で誤った記載をしてしまうリスクがあります。
適応症ごとの主な摘要欄記載事項の違い:
🔹 アトピー性皮膚炎:施設要件・前治療要件(6か月以上の外用治療歴)・IGAスコア・EASIスコア・体表面積に占めるアトピー病変の割合(成人は300mg、小児は体重に応じた200mg or 300mgの剤形が使い分けられる)
🔹 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎:施設要件・前治療要件(全身性ステロイドによる治療歴)・鼻茸スコア・鼻づまりスコア
🔹 気管支喘息:施設要件・前治療要件(中等量以上の吸入ステロイドによる治療歴)・治療前の年間増悪回数・呼吸機能検査の数値
🔹 結節性痒疹:施設要件・前治療要件(外用薬や抗ヒスタミン薬などによる治療歴)・皮疹数・そう痒スコア(2024年以降の適応)
🔹 COPD(慢性閉塞性肺疾患):好酸球数(300/μL以上)の確認・既存吸入療法歴・年間増悪回数(2024年適応追加)
同一患者で複数の疾患にデュピクセントを使用するケースでは、主病名に対応する記載事項を正確に選択することが求められます。病名記載の漏れや誤った適応への紐付けは査定リスクに直結します。
転院時の取り扱いについては特に注意が必要です。前医から引き継いでデュピクセントの継続投与を行う場合、転院先のレセプト摘要欄に「前医からの引き継ぎによる継続投与」である旨を記載したうえで、投与開始時(前医で実施した時点)のIGAスコア・EASIスコア等を記載することが求められます。新規投与と誤解して自施設での現在スコアを記載してしまうと、前治療要件との整合性が取れなくなり返戻の原因となります。
転院後の記載は前医から診療情報提供書などを受け取り、投与開始時の評価指標を確認してから記載するのが原則です。転院時の申し送り漏れが査定につながるリスクがある点を事務スタッフと医師が共有しておくと安心です。
参考:デュピクセント適応症ごとの最適使用推進ガイドライン一覧(PMDA)
最適使用推進ガイドライン(デュピルマブ)|医薬品医療機器総合機構(PMDA)