短冊公表後に対応を後回しにすると、改定施行日から算定漏れが発生し、月単位で数万円単位の減収が続く場合があります。
「短冊」という言葉を初めて聞いた方もいるかもしれません。診療報酬・調剤報酬の改定プロセスでは、中央社会保険医療協議会(中医協)が改定内容を審議する過程で、個々の点数や算定要件の見直し案を横長の表形式の資料として公表します。この資料が縦長の短冊に見立てられることから、業界内で「短冊」と呼ばれるようになりました。
2年に1度実施される診療報酬改定のうち、調剤報酬に関わる部分は薬局経営に直結します。短冊は告示・通知よりも早い段階で示されるため、変更点の全体像をいち早くつかむための一次情報源として機能します。つまり、短冊を読めば準備の先手が打てます。
短冊の構造は大きく「現行点数/新点数」「算定要件の変更箇所」「加算・減算の条件」の3列で整理されていることが多く、差分を縦に追うことで改定の方向性が見えてきます。2026年度改定では、特に対人業務の評価強化・かかりつけ薬剤師機能の充実・管理料体系の見直しが焦点とされています。
短冊は中医協の公式サイトや厚生労働省のページで公開されます。最新の資料は以下のページから確認できます。
中医協の審議資料・答申書は厚労省HPで公開されています。短冊はこのページ内の「総会資料」から確認できます。
短冊が公表される時期は例年、改定前年度の末から改定年の2〜3月にかけてです。2026年4月施行を想定した今回の改定では、2026年初頭に詳細な短冊資料が出そろう見込みです。施行日まであまり時間がないということですね。
調剤基本料は、薬局の規模・集中率・処方箋枚数によって区分されており、大型チェーン薬局ほど低い点数が適用される体系が維持される見通しです。2026年改定では、現行の「調剤基本料1(42点)」「調剤基本料2(26点)」「調剤基本料3イ・ロ」「特別調剤基本料(11点)」という区分が整理・見直される方向が示されています。
注目すべき点は、集中率の判定基準が厳格化される可能性が示唆されていることです。現行では特定の医療機関からの処方箋集中率が70%を超えると基本料が下がりますが、2026年改定ではこの閾値や対象範囲の見直しが検討されています。これは意外ですね。
集中率が高い門前薬局では、基本料が1区分下がるだけで、1処方あたり16点(160円)の差が生じます。月間処方箋枚数が1,000枚の薬局であれば、月16,000点=16万円の収入差になる計算です。痛いですね。
また、調剤基本料に付随する「地域支援体制加算」の要件も連動して見直される見込みです。2024年改定で強化された夜間・休日対応実績や在宅実績の数値要件が、2026年改定でさらに上積みされる方向性が示されています。地域支援体制加算は最大39点であるため、算定できるかどうかで年間を通じた収益に大きな差が出ます。加算の要件確認は最優先事項です。
| 区分 | 現行点数(参考) | 2026年改定の主な動向 |
|---|---|---|
| 調剤基本料1 | 42点 | 集中率・処方箋枚数要件の見直し検討 |
| 調剤基本料2 | 26点 | 大型チェーン等の集中率判定厳格化 |
| 特別調剤基本料 | 11点 | 医薬品安全管理体制との連動が検討 |
| 地域支援体制加算 | 最大39点 | 在宅・夜間対応の実績要件上積み見込み |
2026年改定のもう一つの大きな柱は、服薬管理指導料と関連加算の再編です。現行では「服薬管理指導料1(45点)」「同2(45点)」「同3(45点)」「同4(オンライン)」という区分が設けられており、かかりつけ薬剤師指導料(76点)と組み合わせることで対人業務の評価が積み上がる構造になっています。
2026年改定では、対面・オンライン・在宅の三つのモードをより明確に区別し、実施形態ごとに点数を差別化する方向性が示されています。特にオンライン服薬指導については、2024年改定で算定要件が緩和されたことを受けて、普及状況に応じたさらなる点数体系の整備が議論されています。これが基本です。
かかりつけ薬剤師指導料については、算定要件として「6か月以上の継続的な関与」「24時間対応体制」「研修認定薬剤師等の資格」などが現行でも求められており、2026年改定でも要件の質的向上が求められる見込みです。この指導料は1回76点であり、月4回算定できれば月304点、年間では約36,000点(約36万円)の積み上げになります。結論は継続的な患者関与が収益の安定につながります。
また、服薬情報等提供料については、医療機関との連携実績を問う形での要件強化が検討されています。トレーシングレポートの送付件数や処方医へのフィードバック実績が問われるようになる可能性があり、記録・報告体制の整備が急務です。記録は必須です。
服薬情報等提供料・薬学的管理料に関する算定要件の詳細は、以下の厚労省通知ページで確認できます。
在宅領域は2026年改定において最も手厚く評価される分野の一つです。在宅患者訪問薬剤管理指導料(単一建物1人:650点)は、在宅医療を担う薬局にとって高収益の算定項目ですが、2026年改定ではこの点数体系に「関与の質」を問う要件が加わることが検討されています。
具体的には、医師・看護師・ケアマネジャーとの連携記録の整備、カンファレンスへの参加実績、服薬アドヒアランスの評価記録などが算定根拠として必要になる可能性があります。単に訪問して指導するだけでは算定が認められにくくなるということですね。
介護保険の居宅療養管理指導費との整合性も引き続き論点になっています。薬剤師が行う居宅療養管理指導は、要介護の患者では介護保険が優先されますが、末期がん患者など一定の条件下では医療保険優先となるため、保険種別の判断を誤ると返戻・査定リスクがあります。これは見落としやすい落とし穴です。
在宅業務に必要な訪問件数・記録の基準については、以下の資料が参考になります。
注目したいのは、「麻薬管理指導加算(100点)」と「乳幼児加算(12点)」といった在宅関連加算群の見直しです。在宅患者が増加する中、これらの加算を正確に算定している薬局とそうでない薬局では、年間の収益差が数十万円単位になることがあります。これは使えそうです。
在宅算定をこれから強化したい薬局については、算定件数の管理や訪問記録の効率化に特化したシステムを活用することが有効です。在宅患者の訪問スケジュールと算定要件チェックを一元管理できるツールを導入することで、記録漏れによる算定漏れを防ぐことができます。
短冊が公表された段階では、まだ「改定の方向性」が示されているにすぎません。実際の算定には「告示」「通知」「疑義解釈(Q&A)」の三段階を経て確定した要件を正確に把握する必要があります。この流れを理解しておくことが大前提です。
改定スケジュールの一般的な流れは以下のとおりです。
届出が必要な加算については、施行日(4月1日)から算定を開始するために、原則として3月末までに地方厚生局へ届出を完了させる必要があります。届出が1日遅れるだけで、4月1日から算定できなくなります。期限があります。
特に「地域支援体制加算」「在宅薬学管理料」「かかりつけ薬剤師指導料」などは届出が必須の施設基準を含んでいます。現行の届出内容が2026年改定後の要件を満たすかどうかを改定前に確認し、不足があれば体制を整備してから届け出る必要があります。
地方厚生局への届出様式や手続きは、各地方厚生局のWebサイトで確認できます。
地方厚生局ポータルサイト(各局の届出関係ページへのリンクあり)
実務的な観点から一つ見落とされがちなポイントがあります。それは「現に届け出ている加算の要件が改定後も継続して満たされているかの確認」です。改定前に届け出た加算であっても、要件が変わった場合は改めて適合性を確認し、場合によっては届出の変更・取り下げが必要になります。確認だけは怠れません。
薬局経営において改定情報を効率よくキャッチアップするためには、日本薬剤師会や各都道府県薬剤師会が発行するメールマガジンや研修資料の活用が効果的です。短冊公表から施行日まで数週間しかない中で、正確な情報を素早くチームに共有することが、算定漏れ・過誤算定の両方を防ぐ最短経路になります。