用量変更の疑義照会は、重複投薬・相互作用等防止加算の「残薬調整以外」に区分されます。

重複投薬・相互作用等防止加算とは、薬剤師が処方箋を受け付けた際に、重複投薬・相互作用・その他薬学的問題を発見し、処方医に照会して処方を変更した場合に算定できる加算です。2016年の診療報酬改定で新設され、その後の改定を経て現在の形になっています。
点数は大きく2区分に分かれます。「残薬調整に係るもの」が30点、「残薬調整以外に係るもの」が40点です。用量変更に伴う疑義照会は、この「残薬調整以外」に分類されます。つまり40点が算定できます。
なぜ用量変更が対象になるのか、疑問に思う方もいるかもしれません。理由はシンプルです。用量が不適切であれば、過剰投与による副作用リスクや過少投与による治療効果不足が生じるため、薬剤師が介入する意義がある、と制度が認めているからです。薬剤師の専門性が評価されているということですね。
ただし、ここで注意が必要です。「用量変更の疑義照会をしたら必ず算定できる」というわけではありません。算定には明確な要件があり、その要件を満たさない場合は算定不可となります。加算を算定できる条件が原則です。
参考:厚生労働省による調剤報酬点数表の解釈・算定要件についての詳細は公式の告示・通知を確認することが基本となります。
算定要件は、大きく4つの観点から整理できます。まず理解しておくべきは「照会だけでは算定できない」という原則です。
第一に、薬剤師が処方箋を受け付けた際に、薬学的観点から用量が不適切であると判断できる根拠が必要です。たとえば「患者の腎機能低下に対して用量が過剰である」「年齢・体重に対してガイドラインで推奨される用量を超えている」「他剤との相互作用により代謝が阻害されるため用量調整が必要」といった根拠が薬剤師の判断として求められます。根拠が条件です。
第二に、処方医への疑義照会を実施し、その結果として処方内容が実際に変更されることが必須です。処方医に照会したが「このままでよい」と回答され変更がなかった場合は、加算の算定はできません。変更が確認できることが原則です。
第三に、同一の処方箋において同じ理由による同一加算の算定は1回に限られます。複数の薬剤で用量変更の照会を行ったとしても、1処方箋につき1回の算定です。これは見落としがちなポイントです。
第四に、レセプトへの記載が必要です。疑義照会の内容(どの薬剤のどの用量を変更したか)と、変更後の処方内容を薬剤服用歴等に記録し、調剤録にも残すことが求められます。記録は必須です。
| 区分 | 点数 | 主な対象ケース |
|---|---|---|
| 残薬調整に係るもの | 30点 | 残薬確認による日数・数量調整 |
| 残薬調整以外に係るもの | 40点 | 重複投薬・相互作用・用量変更・剤形変更など |
用量変更は40点の対象です。算定区分をしっかり区別できれば、正確なレセプト請求が可能になります。
実務でどのような場面が対象になるのか、具体的なシナリオで整理します。これを知っているかどうかで算定漏れの件数が変わります。
最も多いのは腎機能低下患者への用量過剰ケースです。たとえばクレアチニンクリアランス(CCr)が30mL/min以下の患者に対して、通常用量のメトホルミンやジゴキシンが処方されているケースがあります。添付文書や腎機能別投与量一覧(腎機能低下患者への投与)を参照し、過剰用量であることを医師に照会→変更された場合に加算を算定できます。
次に多いのは相互作用による代謝阻害で生じる実質的な用量過剰のケースです。CYP3A4を強く阻害するアゾール系抗真菌薬(フルコナゾールなど)が追加処方された際に、すでに処方されているカルシニューリン阻害薬(タクロリムスなど)の用量が調整されていないケースがこれに当たります。血中濃度が過剰になるリスクがあるため、薬剤師が照会して用量変更につながれば加算の対象です。
また、小児や高齢者の体重・年齢に対して用量が過大であるケースも頻繁に見られます。小児の場合、体重1kgあたりの用量が添付文書の推奨量を超えている場合は照会の根拠になります。意外なケースも存在します。
さらに、重複投薬との組み合わせで用量問題が生じる場合も注意が必要です。同効薬が2種類処方されており、合計用量が最大推奨量を超えるケースがこれです。この場合、「重複投薬」と「用量過剰」が重なっており、どちらの視点で照会するかによって記録の書き方も変わります。整理が必要なケースですね。
重複投薬・相互作用等防止加算の用量変更算定において、現場で起きやすいミスは主に3種類に分類されます。実際の監査や返還事例からも確認できる内容です。
最も多いのは「照会したが変更なし」のケースで算定してしまうミスです。繰り返しになりますが、処方変更が確定されなければ算定はできません。薬剤服用歴(薬歴)に「処方医に照会したが変更なし→加算算定」と記載されている事例は、保険調剤の監査で返還対象になります。照会のみでは算定不可が原則です。
次に多いのは算定区分の誤りです。残薬調整(30点)と残薬調整以外(40点)を混同し、用量変更なのに30点で算定しているケース、あるいは逆に残薬調整なのに40点で算定しているケースが見受けられます。点数の違いは1件につき10点(10円)ですが、件数が積み重なると年間での差異は無視できない水準になります。
3つ目は薬歴・調剤録の記載不足です。「疑義照会して変更した」という事実はあっても、どの薬剤の何mgを何mgに変更したか、照会理由が何だったか(腎機能低下・相互作用・体重換算など)の根拠が薬歴に記載されていない場合、算定根拠が証明できず返還対象になり得ます。記録が条件です。
対策として有効なのは、薬歴システムへの入力テンプレートの整備です。「照会理由/照会先/処方医の回答/変更内容/算定区分」の5項目を必ず入力するフォーマットを作成しておけば、記録漏れを防げます。また、疑義照会の内容を月次で集計し、スタッフ間で算定のズレが生じていないかを確認するPDCAも有効です。これは使えそうです。
厚生労働省 調剤報酬における疑義照会・薬学管理料の算定要件に関する通知(診療報酬改定関連)
加算の算定件数は、薬剤師の介入品質と薬局経営の両面に直結します。用量変更に関わる介入を適切に増やすためには、仕組み化が欠かせません。
まず取り組みやすいのは、腎機能・肝機能のスクリーニングを処方受付フローに組み込むことです。患者の血液検査データ(eGFRやAST/ALT)を定期的に確認できる体制があれば、用量が不適切なケースを早期に発見できます。お薬手帳アプリや電子薬歴システムの中には、eGFRに基づいた投与量チェック機能を持つものもあります(例:「Pharma ASSIST」などの薬剤師向けデータベース連携ツール)。確認する習慣が大切です。
次に、ポリファーマシー(多剤処方)患者を重点的にフォローする仕組みも有効です。6剤以上の処方を受けている患者は、用量重複・相互作用・腎機能低下による蓄積リスクが高まります。処方箋受付時に6剤以上の患者にフラグを立てるルールを設けるだけで、見落としを減らせます。
もう一点、意外と見落とされがちなのが「変更が口頭で完了したケースの算定」です。処方医に電話照会して用量変更の合意を得たが、処方箋の書き直しをFAXで受け取る前に調剤を完了させてしまい、変更の記録が残りにくいケースがあります。この場合でも、「照会日時・担当医氏名・変更内容・変更後の処方内容」を薬歴に明記すれば算定根拠として成立します。口頭変更でも記録があれば問題ありません。
最後に、スタッフ全員が加算要件を正確に理解しているかの定期確認が重要です。薬局内で月1回程度、算定事例のケーススタディを共有することで、全員のスキルを底上げできます。算定の質が上がることで、不適切算定によるリスク回避と適正な収益確保の両立が実現します。知識の共有が最大の対策です。
| ミスの種類 | 具体的な内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 変更なしで算定 | 照会したが処方変更されなかった | 薬歴に「変更有無」を必ず記録するルール化 |
| 区分誤り | 残薬調整と用量変更を混同 | 算定区分の判断フローチャートを薬局内に掲示 |
| 記載不足 | 照会理由・変更根拠が薬歴に記載なし | 薬歴入力テンプレートに5項目フォームを追加 |
| 算定漏れ | 用量変更したのに算定を忘れる | 疑義照会後に算定チェックリストを確認する手順の義務化 |
一つの工夫で算定漏れを大きく減らせます。薬局全体の仕組みとして定着させることが、長期的な算定精度の向上につながります。
日本薬剤師会 薬学管理・疑義照会に関する実務情報ページ(保険薬局向け)