テープを剥がした翌日も直射日光を避けるよう患者に伝えないと、光線過敏症が出て皮膚トラブルの責任問題につながります。

ブロナンセリンテープは、住友ファーマが製造販売する統合失調症治療薬で、商品名は「ロナセンテープ」です。2019年9月に発売され、統合失調症治療薬としては日本初の経皮吸収型テープ製剤として注目を集めました。国内で初めて承認された剤形であり、2019年時点では海外での使用実績がない、日本発の製剤という点も特徴的です。
規格は3種類あります。
| 販売名 | ブロナンセリン含量 | 薬価(1枚) |
|---|---|---|
| ロナセンテープ20mg | 20mg | 229円 |
| ロナセンテープ30mg | 30mg | 332.5円 |
| ロナセンテープ40mg | 40mg | 429.1円 |
添付文書は2024年10月に第9版へ改訂されており、禁忌薬の追記が行われています。最新版の確認が必須です。
作用機序はドパミンD2受容体サブファミリー(D2、D3)およびセロトニン5-HT2A受容体への選択的拮抗作用が主体です。アドレナリンα1受容体やヒスタミンH1受容体、ムスカリン受容体への親和性はきわめて低いため、過鎮静や抗コリン系の副作用が出にくいとされています。つまりSDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)に分類されるということですね。
貼付剤であることの最大のメリットは、初回通過効果を受けない点です。肝臓や消化管でのCYP3A4による代謝の影響が経口剤より小さく、食事の影響もありません。また目視で服薬確認ができるため、アドヒアランスの評価が容易というメリットもあります。過量投与が疑われた際に「剥がす」という形で投与を中断できる点も経口剤にはない特徴です。
一方で、効果発現まで時間がかかるという点には注意が必要です。定常状態に達するまでに7〜10日程度かかるため、即効性が求められる急性増悪期には不向きです。これが基本です。
KEGGデータベース:ロナセン(ブロナンセリン)添付文書情報(2024年10月改訂版)
添付文書上の用法・用量は、成人に対してブロナンセリンとして40mgを1日1回貼付することが標準です。患者の状態に応じて最大80mgまで増量可能ですが、1日量は80mgを超えてはなりません。貼付部位は胸部・腹部・背部のいずれかに限定され、24時間ごとに貼り替えます。
貼り替え時には必ず前回貼付したすべてのテープを剥がしたことを確認してから新しいテープを貼るよう、患者・家族への指導が必要です。剥がし忘れたまま新しいテープを重ねて貼った場合、血中濃度が上昇し過量投与となるリスクがあります。貼り忘れたことに気づいた場合は、気づいた時点で1回分を貼付し、次回の貼り替えは通常の24時間後を目安にします。絶対に2回分を一度に貼ってはいけません。
経口剤から本剤に切り替える場合は、次の投与予定時刻に切り替え可能です。用量の換算は以下の表を参考にします。
| ロナセン錠(経口剤)用量 | ロナセンテープ用量 |
|---|---|
| 8mg/日 | 40mg/日(20mg×2枚 または 40mg×1枚) |
| 12mg/日 | 60mg/日(20mg×3枚 または 30mg×2枚) |
| 16mg/日 | 80mg/日(20mg×4枚 または 40mg×2枚) |
経口剤の最大用量は24mg/日ですが、テープ剤の最大用量は80mg/日です。換算比は「経口剤1mg=テープ剤5mg」が目安となります。ただし、ブロナンセリンには活性代謝物が存在しており、テープ剤は初回通過効果を受けないため、単純に血中濃度だけで換算することには注意が必要です。臨床試験の換算表を基準として選択した上で、効果を観察しながら調整することが推奨されています。
逆にテープ剤から経口剤へ切り替える場合は、ブロナンセリン錠の用法・用量にしたがって1回4mg、1日2回食後経口投与より開始し、徐々に増量します。経口剤と本剤を同時期に投与することで過量投与になる可能性があるため、切り替えのタイミングに細心の注意が必要です。
ファーマシスタ:ロナセンテープ使い方・用量・注意事項まとめ(薬剤師向け解説)
添付文書の禁忌には5項目が定められています。これは必須の確認事項です。
とりわけ実臨床で見落とされやすいのが、CYP3A4強阻害薬との併用禁忌です。2024年10月改訂版では、従来のアゾール系抗真菌剤・HIVプロテアーゼ阻害剤に加えて、エンシトレルビル(ゾコーバ) および ロナファルニブ(ゾキンヴィ) が新たに禁忌薬として追記されました。
エンシトレルビルはCOVID-19治療薬として広く使われているため、統合失調症患者がCOVID-19に罹患した際に誤って処方されるリスクがあります。これは見逃すと重大です。
現行の添付文書における併用禁忌薬の一覧を整理します。
| 分類 | 代表的な薬剤名 |
|---|---|
| アゾール系抗真菌剤(外用剤を除く) | イトラコナゾール、ボリコナゾール、ミコナゾール(経口・口腔用・注射)、フルコナゾール、ホスフルコナゾール、ポサコナゾール |
| HIVプロテアーゼ阻害剤など | リトナビル含有製剤(パキロビッド含む)、ダルナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル |
| その他CYP3A4強阻害薬 | エンシトレルビル(ゾコーバ)、コビシスタット含有製剤、ロナファルニブ |
なお、CYP3A4阻害作用があるエリスロマイシン・クラリスロマイシン・シクロスポリン・ジルチアゼムは「併用注意」の扱いです。禁忌ではありませんが、必要に応じて減量や低用量からの開始が求められます。
貼付剤は初回通過効果を受けないため、経口剤と比較してCYP3A4阻害薬との相互作用の影響が「小さい」とされています。しかし影響がゼロではなく、強阻害薬との併用では血中濃度が大幅に上昇するため、依然として禁忌扱いとなっています。厳しいところですね。
PMDA:ブロナンセリン及びポサコナゾールの「使用上の注意」改訂について(添付文書改訂通知)
ブロナンセリンテープの副作用は、臨床試験の結果から発現頻度が明確に示されています。国内第3相長期投与試験(安全性解析対象例500例超)での主な副作用発現率は次のとおりです。
| 副作用 | 発現率 |
|---|---|
| 適用部位紅斑(貼付部位の赤み) | 22.0% |
| プロラクチン上昇 | 14.0% |
| パーキンソン症候群 | 12.5% |
| 適用部位そう痒感 | 10.0% |
| アカシジア(静坐不能) | 9.0% |
| 不眠 | 8.0% |
適用部位紅斑が22%という数字は、約5人に1人に皮膚症状が出るということです。無視できない頻度です。皮膚症状を予防するためには、毎回貼付部位をずらすこと、皮膚を優しく洗い日常的に保湿剤でケアすること、テープを剥がす際はゆっくり丁寧に行うことが重要です。
錐体外路症状(パーキンソン症候群13.6%、アカシジア10.4%)も頻度が高い副作用です。手足のふるえや筋強剛、じっとしていられない感覚など、患者が自発的に申告しにくい症状も含まれます。定期的な問診と観察が原則です。
添付文書上の重大な副作用として、以下が挙げられています。
高血糖・糖尿病性ケトアシドーシスについては、添付文書の「重要な基本的注意(8.4)」で特に強調されています。糖尿病や肥満・高血糖などのリスク因子がある患者では、口渇・多飲・多尿・頻尿などの症状出現時に速やかに対応する必要があります。血糖値の定期的モニタリングが条件です。
病棟での検査値モニタリングとしては、白血球数・CPK・肝酵素(AST/ALT/γ-GTP/ALP)・血糖値・電解質(Na/K)・BUNなどを定期的に確認することが推奨されます。
ケアネット:ロナセンテープ20mgの効能・副作用(副作用発現率を含む添付文書情報)
ブロナンセリンテープ特有の副作用として、光線過敏症があります。内服薬にはない副作用であるため、経口剤からの切り替え時に患者・家族への新たな指導が必要になります。意外ですね。
添付文書の「8.6 重要な基本的注意」には、以下のように明記されています。
> 光線過敏症が発現するおそれがあるので、衣服で覆う等、貼付部位への直射日光を避けること。また、本剤を剥がした後1〜2週間は、貼付していた部位への直射日光を避けること。
「テープを剥がしたらもう大丈夫」と患者が思い込み、剥がした翌日に日光を浴びて皮膚症状が出るケースがあります。剥がした後1〜2週間は注意が必要という点が、服薬指導で最も伝えきれていないポイントのひとつです。
貼付部位は胸部・腹部・背部のみに限定されていることも、光線過敏症対策と関係があります。腕や手などの露出しやすい部位は貼付箇所として認められていないため、衣服で覆いやすい場所に限定されているという意図があります。夏場に薄着の患者への指導では、貼付部位が衣服で覆われているかを特に確認することが求められます。
皮膚症状が出た際の対応は、症状の強さによって異なります。軽度の紅斑・かゆみであれば貼付部位の変更・保湿強化・ステロイド軟膏の併用などで対応できます。症状が強い場合は、本剤の休薬または中止が必要です。
光線過敏症の予防を含む皮膚トラブル全般を防ぐために有用な行動を、患者への指導の場面でまとめると次のとおりです。
これらの指導を文書化したリーフレットを渡すことで、患者の記憶に残りやすくなります。これは使えそうです。
PMDA:ロナセンテープを使用されている方へ(患者・家族向け公式資材)
添付文書の「14.3.2 薬剤貼付時の注意」には、「本剤をハサミ等で切って使用しないこと」という記載があります。この一文の背景にある製剤設計上の理由は、あまり知られていません。
ロナセンテープは、薬剤を含む膏体をライナー(剥離フィルム)と支持体で挟んだ「マトリックス型」の製剤です。ニトロダームTTSのように放出速度を調節する「膜制御型(放出制御膜使用型)」とは構造が異なります。マトリックス型では膏体内に薬剤が均一に分散しているため、理論上は切断しても薬剤量は面積に比例して分配されます。
では、なぜ切ってはいけないのか。理由は大きく2点です。まず切断後の切り口から薬剤や添加剤が漏れ出し、皮膚刺激が強くなる可能性があること。そして承認された臨床試験は整品(切断していない製品)で実施されており、切断後の安全性・有効性が保証されていないことです。保険給付や副作用救済制度の対象外になる可能性もあるため、注意が必要です。
少量から開始したい場合や微調整を行いたい場合は、20mg・30mg・40mgの3規格の組み合わせで対応するのが正しいアプローチです。40mg1枚を基本として、20mgを加えると60mg、40mgを加えると80mgになります。枚数が複数になる場合、テープ同士が重ならないように貼付することが添付文書でも注意喚起されています。
また、包装袋を開封せずに交付することも添付文書(14.1.1)で明記されています。これは本剤の品質が光の影響を受けるためです。開封前と開封後では保存条件が異なりますので、患者に対して「もらったらすぐに貼る」という指導も行いましょう。開封後は速やかに貼付することが原則です。
経口剤では「1錠を半分に割る」という対応が実臨床でよく行われますが、テープ剤でそれをやってしまうと添付文書違反になります。同様の感覚で指示してしまう医師や薬剤師が出ないよう、特に経口剤からの切り替え時に確認することが求められます。これは見落としがちな落とし穴のひとつです。
添付文書の適正使用情報を正確に把握したうえで服薬指導を行うことで、患者の安全を守り、医療従事者としての説明責任を果たすことができます。
ドットファーマシー:ブロナンセリンテープ(ロナセンテープ)の特徴・使い方・注意点(薬剤師向け詳細解説)