「高配当だから安定」と思って買うと、特許の崖で資産が30%以上消える可能性があります。

ブリストルマイヤーズスクイブ(Bristol Myers Squibb、以下BMS)は、1887年創業という長い歴史を持つ米国最大手のバイオ製薬企業のひとつです。ティッカーシンボルは「BMY」で、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しています。2026年3月時点の株価は約57〜58ドル、時価総額は約1,160億ドル(約18兆円)と、世界的な製薬株の中でも屈指の規模を誇ります。
医療従事者がBMY株に注目する理由は明確です。免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ(Opdivo)」、抗凝固薬「エリキュース(Eliquis)」、多発性骨髄腫薬「レブラミド(Revlimid)」など、日々の臨床現場で実際に使用している薬剤を製造・販売している企業だからです。
つまり原則です。自分が処方・使用している薬剤の開発元を株主として見るという視点が持てるのは、医療従事者ならではの強みと言えます。
BMYの主な事業領域は以下の通りです。
| 疾患領域 | 代表製品 | 2023年売上(概算) |
|---|---|---|
| 血液がん・固形がん | オプジーボ、ヤーボイ、レブラミド | 約100億ドル超 |
| 血液凝固・心血管 | エリキュース(ファイザーと共販) | 約120億ドル超 |
| 自己免疫疾患 | ソーティクツ(Sotyktu)、オレンシア | 拡大中 |
| 神経・精神科 | コベンフィ(Cobenfy) | 発売直後 |
| CAR-T細胞療法 | ブレヤンジ、アベクマ | 急成長中 |
医療従事者にとっては、製品の臨床的価値を現場感覚で評価できるという他の投資家にはない優位性があります。これは情報を得た読者がメリットを得やすい重要なポイントです。
配当の継続性という点でも、BMYは過去19年間にわたって毎年配当を支払っており、製薬株としての安定性を示しています。2026年4月に1株0.63ドルの四半期配当が発表されており、年換算で2.52ドルの配当が確定しています。
参考:BMS日本法人の会社概要(公式サイト)
ブリストル マイヤーズ スクイブ 会社概要|BMS Japan公式
2026年3月時点のBMYの配当利回りは約4.1〜4.4%と、製薬業界平均(約2.45%)の約2倍水準です。これは魅力的に映ります。
では、なぜこれほど利回りが高いのでしょうか。
結論は株価が低迷しているからです。一般的に配当利回り=年間配当額÷株価で計算されるため、株価が下がると利回りが上昇します。2024年から2026年にかけてBMY株は大手製薬株指数を下回るパフォーマンスが続いており、52週高値は63.33ドルに対し、安値は42.52ドルと約30%もの開きがありました。
高配当だけが条件です。高配当利回りは魅力的ですが、株価の低迷が原因の場合は「配当利回りの罠(Dividend Yield Trap)」に陥るリスクがあります。企業業績が悪化すれば減配・無配に転じる可能性があり、その場合は配当収入も株価含み益も失う「二重の損失」となります。
ただし、BMYの実質的なキャッシュ創出力は依然として強力です。2024年のフリーキャッシュフローは約139億ドルを記録しており、これは年間配当総支出(約40〜50億ドル)を大きく上回っています。配当の維持・継続という観点では、直近の財務基盤は安定しています。
配当履歴を確認したい場合、StockScanやStockEvents.appなどの配当追跡ツールを使うと、配当落ち日・支払い日を一元管理できます。1つのアプリ確認だけで済みます。
医療従事者ならエリキュースもオプジーボも処方経験があるはずです。だからこそ「特許切れ」の意味を実感として理解できます。
特許の崖(Patent Cliff)とは、大型医薬品の特許期間が終了した後、ジェネリック医薬品(後発品)が市場に参入し、先発品の売上が急落する現象です。後発品参入後の先発品の価格は、場合によっては95%以上下落することもあります。痛いですね。
BMSが直面している「特許の崖」は規模が特に大きく、以下の2品目がその象徴です。
この2品目を合わせると2023年の全売上収益(約450億ドル)の実に約47%に相当します。つまり売上の半分近くが将来消える可能性があるということです。これは投資家が深刻なリスクとして受け止めている核心部分です。
加えて、多発性骨髄腫治療薬のレブラミド(レナリドミド)については、すでに2022年からジェネリック参入が進んでおり、実際に2024年Q4決算でレガシーポートフォリオの売上が前年同期比14%減となったことが確認されています。
さらに見落とせないのが、米国の薬価交渉制度(インフレ削減法:IRA)の影響です。エリキュースはIRAによる最初の10薬品の価格交渉対象に選ばれており、特許切れの前から政府による価格引き下げ圧力がかかる構造です。エリキュース単独のリスクはかなり大きいということです。
BMY株への長期投資を検討するなら、この特許切れのタイムラインを「リスクカレンダー」として意識しておくことが重要です。具体的には証券会社のリサーチレポートや、日経BPのバイオテク情報などを定期購読することで最新動向を追いやすくなります。
参考:特許切れとBMSへの影響(日経ビジネス)
巨大製薬会社も悩ます「特許の崖」 米BMSのCEOが語る3つの突破口|日経ビジネス
特許切れという課題を知ったうえで、次に確認すべきはBMSの反撃戦略です。
BMS日本法人の勝間英仁社長は2026年3月16日の記者会見で、「成長製品群の売上収益は2025年に前年比17%増と2桁成長を確保した」と述べ、2032年に売上高を現在の2倍にする目標が「順調に進んでいる」と強調しました。2027年には新薬の承認・発売ラッシュが始まる見通しも示されています。
この「2倍戦略」を支える成長ポートフォリオの主役となる製品群は以下の通りです。
2024年通年で成長ポートフォリオの売上は226億ドル(前年比+17%)に達し、レガシーポートフォリオの売上(約240億ドル)に肩を並べる水準まで来ました。これは使えそうです。
さらに日本特有の視点として、BMSは「ドラッグロス(海外の薬が日本で承認されない問題)」の解消に向け、2024年12月に4つの新薬候補を日本で開発することを発表し、日本法人への100億円規模の追加投資も明らかにしています。31年までに新薬を承認取得し、2032年に日本での売上を倍増させる計画は着実に進んでいます。
ただし正直なところ、パイプラインの成功は保証されていません。2025年だけで4つの主要臨床試験が失敗しており、投資家は新薬開発の不確実性を常に念頭に置く必要があります。
参考:BMS日本法人の2032年売上倍増戦略
新薬ラッシュ期迎えた米BMS社日本法人、主力製品の成長で2032年に売上倍増へ|日経バイオテク
医療従事者がBMY株を検討するとき、一般投資家にはない「処方現場の情報」という強みを活かせます。これが原則です。
例えば、「コベンフィは添付文書上どう位置づけられているか」「ブレヤンジの適応拡大で自院の患者への使用頻度が上がりそうか」「エリキュースの後発品が保険上どう扱われるか」といった判断は、医療従事者だからこそ現場感覚で評価できます。ただし「インサイダー情報」には当たらない一般的な処方動向として合法の範囲での活用が条件です。
では、投資を検討する際の具体的なチェックポイントを整理します。
BMY株を持つことで生まれる視点があります。日々処方している薬剤の企業が「どういう経営判断をしているか」「次の主力薬は何か」を知ることで、処方選択の背景知識も自然と深まります。投資と知識のアップデートが同時にできるのは医療従事者ならではです。
一方、注意すべき点もあります。医療従事者は高収入な分、投資においても「高配当だから安心」という過信が生じやすい傾向があります。BMYは高配当銘柄ですが、2028年前後の特許切れによる業績悪化リスクは実在します。100万円をBMY一点集中に投じるよりも、製薬セクターETF(例:XBI、IHI)などと組み合わせたポートフォリオ構成が、リスク分散の面で現実的な選択です。
投資は自己責任が原則です。本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身でご確認ください。
参考:BMY株の最新配当・株価情報
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ【BMY】株価・株式情報|Yahoo!ファイナンス