ベンズブロマロン錠の副作用と医療従事者が知るべき安全管理

ベンズブロマロン錠は痛風・高尿酸血症に用いられる尿酸排泄促進薬ですが、劇症肝炎をはじめ見落としやすい副作用が潜んでいます。医療従事者として把握すべき副作用の全貌とは?

ベンズブロマロン錠の副作用と安全な使用のために知っておくべきこと

6ヶ月間モニタリングを怠ると、死亡例6件と同じ轍を踏みます。


この記事の3ポイント要約
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劇症肝炎リスクは投与開始6ヶ月以内に集中

PMDAの緊急安全性情報では、ベンズブロマロンによる劇症肝炎の死亡例が6例報告されており、肝機能検査を少なくとも6ヶ月間は定期的に実施することが「警告」として添付文書に明記されています。

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投与初期の痛風発作誘発リスクに注意

尿酸値が急激に低下することで、投与開始後に痛風発作が誘発されることがあります。発作中の投与開始は禁忌であり、発作鎮静後から少量(25mg)で開始するのが原則です。

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ワルファリンとの併用でPT-INRが大幅上昇

ベンズブロマロンはCYP2C9を阻害するため、ワルファリンの血中濃度が高まりPT-INRが約50%上昇する可能性があります。抗凝固療法中の患者への処方時は厳重なINRモニタリングが必須です。


ベンズブロマロン錠の作用機序と高尿酸血症における位置づけ



ベンズブロマロン錠は、1978年から日本で使用されている尿酸排泄促進の代表格です。高尿酸血症の病態は大きく「尿酸排泄低下型」「尿酸産生過剰型」「混合型」の3つに分類されますが、日本人患者の約60%は尿酸排泄低下型であるとされています。そのため、排泄を促進するベンズブロマロンは多くの患者にとって理論上は非常に合致した薬剤です。


作用機序の核心は、腎臓の近位尿細管に存在する尿酸トランスポーター1(URAT1)の阻害です。URAT1に対するIC50値は0.29μMと強力で、このトランスポーターを阻害することで尿酸の再吸収を抑え、尿中への排泄を増やします。投与開始後1週間で血清尿酸値が平均25%低下し、4週間後には最大35%まで低下するという臨床データがあります。


通常用量は1日50〜150mgで、成人では1回25〜50mgを1日1〜3回経口投与するのが一般的です。血清尿酸値のモニタリング結果に応じて用量を段階的に調整します。尿酸排泄低下型の患者では特に高い効果を示す一方で、後述する重篤な副作用リスクを常に念頭に置く必要があります。これが基本です。


高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインにおいても、尿酸排泄促進薬の位置は明確で、尿酸排泄低下型には第一選択として推奨されています。ただし、ガイドラインは同時に「尿アルカリ化薬の併用」と「定期的な肝機能モニタリング」を必須条件として強調しています。


参考:ベンズブロマロンの作用機序と薬物動態に関する詳細情報はこちら
ベンズブロマロン(ユリノーム)– 代謝疾患治療薬|神戸岸田クリニック


ベンズブロマロン錠の最重要副作用:劇症肝炎と肝機能障害

劇症肝炎リスクは、医療従事者がベンズブロマロンを使用する際に絶対に見落としてはならない副作用です。PMDAが2000年2月に発出した緊急安全性情報によれば、ベンズブロマロンとの因果関係が否定できない劇症肝炎が当時合計8例報告されており、そのうち6例が死亡という深刻な転帰をたどっています。推定使用患者数が年間約30万人という規模の中でのことです。


肝障害の発現頻度を重症度別にみると、重度肝障害が0.5〜1%、中等度肝障害が2〜3%、軽度肝障害が3〜5%と報告されています。重大な点は、これらの肝障害の多くが投与開始6ヶ月以内に発現するという時間的集中性です。発生までの期間は投与開始から2.5ヶ月〜6ヶ月の範囲に多く集中しています。


添付文書の「警告」欄には、以下の内容が明記されています。


  • 投与開始後少なくとも6ヶ月間は必ず定期的に肝機能検査を行うこと
  • 投与開始前に肝機能検査を実施し、肝障害のないことを確認すること
  • 肝障害のある患者は禁忌であること
  • 食欲不振・全身倦怠感等の症状が現れた場合は直ちに服用を中止して受診するよう患者に事前説明を行うこと


臨床現場での実践として、東和薬品の安全性情報では「投与開始から6ヵ月間は3ヵ月に1回以上の肝機能検査の実施」を推奨しており、6ヵ月経過後も定期的な検査継続が求められています。モニタリングが条件です。


患者が自覚できる肝障害の初期症状としては、食欲不振・悪心・嘔吐・全身倦怠感・腹痛・下痢・発熱・尿の濃染・眼球結膜の黄染(黄疸)などがあります。これらの症状を患者本人に事前説明し、異常があればすぐに受診するよう指導することが医療従事者の責務です。


肝障害重症度 発現率 主な発現時期
重度肝障害(劇症肝炎含む) 0.5〜1% 投与開始1〜3ヶ月
中等度肝障害 2〜3% 投与開始2〜6ヶ月
軽度肝障害(検査値異常) 3〜5% 不定


参考:PMDAによる緊急安全性情報の原文はこちら
ベンズブロマロンによる劇症肝炎について(緊急安全性情報)|PMDA


ベンズブロマロン錠の副作用:投与初期の痛風発作誘発リスク

「尿酸を下げる薬を飲んでいるのに痛風発作が出た」という患者の訴えは、実はベンズブロマロンの薬理学的特性から説明できます。意外に思われるかもしれませんが、これは薬の失敗ではありません。


ベンズブロマロンは血清尿酸値を短期間で急激に低下させる薬剤です。投与開始後1週間で平均25%もの尿酸値低下が起こります。この急激な変動が、関節に沈着していた尿酸結晶を不安定化させ、痛風発作を誘発する引き金になります。添付文書の「重要な基本的注意」にも「本剤の投与初期に痛風発作を誘発することがある」と明記されています。これは重要です。


実際、両国東口クリニックの報告では、25mgという最低用量から開始した場合でも、血清尿酸値の急速な低下によって投与開始初期に痛風発作が誘発されるケースが確認されています。このリスクを軽減するために、一部の施設では極めて少量から段階的に増量する方法を採用しています。


この副作用に対して医療現場でとられる主な対策は以下の通りです。


  • 急性痛風発作が完全に鎮静してから投与を開始する(発作中の開始は禁忌)
  • 投与開始用量を25mgと低く設定し、段階的に増量する
  • 投与開始後しばらくはコルヒチンを予防的に併用する
  • 患者に「最初しばらくは発作が出やすい」と事前に十分説明しておく


患者への事前説明を怠ると、「薬が効いていない」「副作用が怖い」という理由で自己判断で服薬を中断するケースが起こりえます。アドヒアランスの低下は治療目標の達成を遅らせるため、適切な説明は治療成功の鍵となります。


参考:尿酸降下薬使用時の痛風発作誘発に関する解説はこちら
ユリノーム(ベンズブロマロン)の作用機序と副作用【高尿酸血症・痛風】|PASSMED


ベンズブロマロン錠の副作用:ワルファリンをはじめとする薬物相互作用

ベンズブロマロンは肝臓の薬物代謝酵素CYP2C9を強力に阻害する性質を持っています。この特性が、臨床上きわめて重要な薬物相互作用を引き起こします。なかでも特に注意が必要なのが、抗凝固薬ワルファリン(商品名:ワーファリン)との相互作用です。


ワルファリンはCYP2C9で代謝されるため、ベンズブロマロンと併用するとワルファリンの代謝が阻害され血中濃度が上昇します。その結果、PT-INRが約50%上昇するリスクがあるとされています。実際の症例報告では、ベンズブロマロン100mg/日へ増量後の1週間でINRが4.8にまで上昇し、ワルファリンを中止する事態になったケースも報告されています。PT-INRが過度に高まれば、脳出血・消化管出血などの重篤な出血リスクが急増します。痛いですね。


この相互作用はワルファリンに限らず、CYP2C9で代謝される薬剤全般に及びます。代表的な影響を受ける薬剤としては以下が挙げられます。


薬剤分類 代表的薬剤名 相互作用の内容
抗凝固薬 ワルファリン PT-INR約50%上昇、出血リスク増大
免疫抑制剤 シクロスポリン 腎機能約30%低下リスク
抗結核薬 ピラジナミド 尿酸排泄阻害による尿酸値上昇
サリチル酸製剤 アスピリン(低用量含む) 尿酸排泄への拮抗作用


ベンズブロマロンを処方する際は、患者の内服薬一覧を必ず確認するのが原則です。特にワルファリン服用中の患者にはベンズブロマロンの追加を慎重に検討し、やむを得ず併用する場合はPT-INRのモニタリング頻度を増やして対応します。服薬情報の確認は必須です。


電子カルテの薬剤相互作用チェック機能や調剤薬局の薬歴照会システムを活用すれば、併用禁忌・注意薬剤の確認漏れを防ぐことができます。処方前に確認する、という一手間が重大な有害事象を防ぎます。


ベンズブロマロン錠の副作用:尿路結石と光線過敏症への対処

ベンズブロマロンによる副作用として、肝障害や薬物相互作用と並んで重要なのが尿路結石光線過敏症です。いずれも「知っていれば防げる」副作用であり、医療従事者の事前対応が患者のQOLを左右します。


まず尿路結石について説明します。ベンズブロマロンは尿酸の尿中排泄を促進するため、尿中の尿酸濃度が高まります。尿が酸性側に傾いていると(尿pH5.5未満)、尿酸が尿路に析出し結石を形成しやすくなります。尿路結石が生じると、血尿・排尿痛・排尿障害といった症状が起こり、患者の日常生活に大きな支障をきたします。高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは、尿酸排泄促進薬を使用する際は尿アルカリ化薬を必ず併用するよう推奨されています。


尿アルカリ化薬としては、重曹(炭酸水素ナトリウム)またはクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤(ウラリット®など)が一般的に使用されます。目標尿pHは6.0〜7.0に設定し、1日1〜6gを分割服用します。これが原則です。


なお、すでに尿路結石の既往がある患者や現在結石を有している患者には、原則としてベンズブロマロンの投与は避けるべきとされています。


次に光線過敏症についてです。ベンズブロマロンの添付文書には「光線過敏症」が副作用として記載されています。これは日光や紫外線にあたった皮膚部位に炎症・発赤・水疱などが生じる皮膚反応です。夏季や屋外活動が多い患者では特に注意が必要です。患者には「日差しの強い日は肌の露出を減らし、日焼け止めを使用する」よう指導することが重要です。これは使えそうです。


皮膚症状全般として、そう痒感・発疹・蕁麻疹・顔面発赤・紅斑も過敏症として報告されています。皮膚症状が出現した場合は、重症度を評価した上で投与継続の可否を判断します。軽度であれば経過観察で対応できる場合もありますが、重症の場合は投与中止が必要です。


副作用 主な症状 対策
尿路結石 血尿・排尿痛・排尿障害 尿アルカリ化薬(ウラリット等)の必須併用、水分摂取励行
光線過敏症 日光あたり部位の発赤・水疱 日焼け止め使用・肌の露出を控えるよう指導
そう痒感・発疹・蕁麻疹 皮膚のかゆみ・赤み 重症度評価・必要に応じ投与中止


医療従事者が見落としがちな、ベンズブロマロン錠の禁忌・慎重投与と代替薬の選択

ベンズブロマロンを処方する前に、禁忌条件を正確に把握しておくことは医療安全の基本中の基本です。添付文書に明記された禁忌は以下の通りです。


  • 肝障害のある患者(劇症肝炎リスクがさらに高まる)
  • 高度の腎機能障害患者(尿酸排泄促進の効果が期待できない、かつ薬剤蓄積リスク)
  • 尿路結石を有する患者・尿路結石の既往がある患者
  • 妊婦または妊娠している可能性のある患者


慎重投与が求められる患者群には、eGFRが低下している中等度腎機能障害患者(eGFR 30〜60 mL/min/1.73m²)、75歳以上の高齢者、CYP2C9で代謝される薬剤を複数内服している患者などが含まれます。


禁忌・慎重投与に該当する場合は、代替薬への切り替えを積極的に検討します。尿酸産生抑制薬(フェブキソスタット、アロプリノール)は肝代謝経路の違いから、ベンズブロマロンとは異なる安全プロファイルを持ちます。2021年のFrontiers in Pharmacologyに掲載された研究では、ベンズブロマロンとアロプリノールを無症候性高尿酸血症患者で比較した場合、2型糖尿病の発症リスク抑制効果において差があることも報告されており、個々の患者背景に応じた薬剤選択の重要性が示されています。意外ですね。


また、2020年に承認された新規尿酸排泄促進薬ドチヌラド(ユリス®)は、URAT1に対するより高い選択性を持ち、肝毒性プロファイルの改善が期待されています。臨床試験では、ドチヌラド群の副作用発現率がベンズブロマロン群より低い(6.9% vs 11.1%)というデータも示されています。ベンズブロマロンのリスクが高い患者において、ドチヌラドへの変更を検討することも選択肢の一つです。


つまり、ベンズブロマロンは有効性が高い一方で使用条件が明確に限定される薬剤です。禁忌の確認・代替薬との比較検討を怠らないことが、医療従事者として患者を守るための重要な実践です。


参考:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(日本痛風・核酸代謝学会)の要点はこちら
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版|日本痛風・核酸代謝学会


参考:ベンズブロマロンの肝機能モニタリングに関するPMDA資料はこちら
痛風・高尿酸血症治療薬ベンズブロマロンの定期的な肝機能検査の実施について|PMDA






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