手術前日もバルサルタンを飲み続けると、麻酔中に制御困難な低血圧に陥ることがあります。

バルサルタン錠40mg「サンド」は、サンド株式会社が製造・販売するアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の後発医薬品(ジェネリック医薬品)です。先発品はノバルティスファーマの「ディオバン錠」であり、有効成分バルサルタンを1錠あたり40mg含有します。
薬効分類は「選択的AT₁受容体ブロッカー(薬効分類番号:2149)」に属します。つまり降圧薬です。YJコードは2149041F2230で、規制区分は処方箋医薬品です。2025年9月改訂版の添付文書が最新となっています。
薬価は以下の通りです。
| 販売名 | 薬価(1錠) |
|---|---|
| バルサルタン錠20mg「サンド」 | 10.4円 |
| バルサルタン錠40mg「サンド」 | 10.4円 |
| バルサルタン錠80mg「サンド」 | 13.2円 |
| バルサルタン錠160mg「サンド」 | 18.2円 |
40mgと20mgの薬価は同額です。これは意外に思われる方もいるかもしれません。ジェネリック医薬品は薬価改定のたびに変動するため、最新薬価の確認は怠らないようにしましょう。
先発品「ディオバン錠40mg」の薬価(2024年時点で約53.2円/錠)と比較すると、後発品は約20%水準です。1日1錠・30日処方の場合、薬剤費の差は約1,000円以上になります。患者負担の軽減という観点から、後発品の意義は大きいといえます。
後発品への変更可能処方箋の場合、薬局での変更調剤が可能です。変更の際は、添付文書の内容に準拠した規格・剤形であることを確認したうえで対応してください。
KEGGデータベース:バルサルタン商品一覧・薬価一覧(薬価の比較確認に有用)
効能または効果は「高血圧症」のみです。他の適応はありません。シンプルではありますが、ARBのなかでバルサルタンは小児高血圧への適応を有する数少ない薬剤であるという点は覚えておく価値があります。
成人の用法・用量は次の通りです。
> バルサルタンとして40〜80mgを1日1回経口投与。年齢・症状に応じて適宜増減。1日最大160mgまで。
開始量は40mgが基本です。降圧効果が不十分な場合には80mg、さらに必要であれば160mgへと段階的に増量します。つまり40mgは出発点です。
一方、小児(6歳以上)への用量は体重で分かれています。
- 🔹 体重35kg未満:20mgを1日1回(最大40mg)
- 🔹 体重35kg以上:40mgを1日1回(最大用量は成人に準じる)
バルサルタン40mg錠「サンド」は、体重35kg以上の6歳以上の小児にも対応できる規格です。小児への処方時は体重確認を必ず行い、適切な規格を選択してください。
また、国内においては小児に対して1日80mgを超える使用経験がないことが添付文書に明記されています。成人と同様に「最大160mgまで」と思い込んでいた場合は要注意です。国内エビデンスの範囲内で投与することが原則です。
服用タイミングに関する制限は特に設けられていません。食前・食後を問わず1日1回投与が可能です。ただし、毎日同じ時間帯に服用するよう患者に説明することが血圧コントロールの安定につながります。
オレンジブック:バルサルタン錠40mg「サンド」の効能・用量情報(生物学的同等性の確認にも利用可)
禁忌事項を正確に把握しておくことは、処方設計・調剤・服薬指導のいずれの場面においても必須です。以下の3つが絶対的な禁忌です。
| 禁忌 | 理由 |
|---|---|
| ① 本剤成分への過敏症既往 | 過敏反応再発のおそれ |
| ② 妊婦または妊娠の可能性のある女性 | 胎児・新生児への腎不全・頭蓋形成不全等のリスク |
| ③ アリスキレン投与中の糖尿病患者(※例外あり) | 非致死性脳卒中・腎機能障害・高K血症・低血圧リスク増加 |
③の「アリスキレンとの併用禁忌」は「糖尿病患者への使用」が条件です。ただし他の降圧治療を行ってもなお血圧コントロールが著しく不良の場合は除外されます。判断が難しい場面では主治医への確認が優先です。
妊娠可能な女性への投与に際しては、開始前に妊娠していないことの確認、投与中の定期的な妊娠確認、そして妊娠が判明した場合の即時中止が求められます。これは単なる「注意」ではなく、添付文書上の明確な記載です。
特定の背景を有する患者への注意ポイントもまとめます。
- 🔺 両側性腎動脈狭窄患者:急速な腎機能悪化のおそれ。原則として投与回避
- 🔺 高カリウム血症患者:高K血症の増悪リスク。原則として投与回避
- 🔺 脳血管障害患者:過度の降圧により脳血流不全が悪化する可能性
- 🔺 厳重な減塩療法中の患者:初回投与後に一過性の急激な血圧低下(失神・意識消失を伴うケースも)
- 🔺 重篤な腎機能障害患者(Cr≧3.0mg/dL):投与量の減量等を含む慎重な管理が必要
- 🔺 胆汁性肝硬変・胆汁うっ滞患者:胆汁中への排泄が主経路のため、軽度〜中等度の肝障害患者でも血漿中濃度が健康成人の約2倍に達することが海外データで報告されている
肝障害患者での約2倍という数字は、頭に入れておくべき情報です。投与量の調整検討が必要な場面を見逃さないためにも、初診時・フォローアップ時の肝機能確認を怠らないようにしましょう。
KEGG医療用医薬品情報:バルサルタン錠「サンド」添付文書全文(禁忌・特定背景患者の注意事項を詳細に確認できる)
相互作用は大きく「併用禁忌」と「併用注意」に分かれます。この違いをしっかり伝えることが、患者・医師・薬剤師の連携を支える基盤です。
【併用禁忌】
アリスキレンフマル酸塩(ラジレス)との併用は、糖尿病患者に対しては原則禁忌です。非致死性脳卒中・腎機能障害・高K血症・低血圧のリスクが増加するとの臨床試験結果があります。
【主な併用注意】
| 相互作用薬 | 影響内容 |
|---|---|
| ACE阻害薬 | 腎機能障害・高K血症・低血圧のリスク増加 |
| 利尿降圧剤(フロセミド等) | 初回投与後の急激な血圧低下(失神・意識消失のリスク) |
| カリウム保持性利尿剤・K補給剤 | 高カリウム血症(腎機能障害が危険因子) |
| NSAIDs(インドメタシン等) | 降圧作用の減弱・腎機能悪化(高齢者で特に注意) |
| ビキサロマー(キックリン) | バルサルタンの血中濃度が約30〜40%低下し、降圧効果が減弱 |
| リチウム製剤 | リチウム中毒のリスク(ナトリウム排泄亢進によるリチウム蓄積) |
| ドロスピレノン含有製剤 | 血清K値の上昇(腎障害患者・高K患者で危険度が増す) |
| シクロスポリン | 高K血症リスクの相互増強 |
| トリメトプリム含有製剤 | 血清K値の上昇 |
特に臨床上の盲点になりやすいのがビキサロマーとの相互作用です。高リン血症を合併した高血圧患者(慢性腎臓病など)でバルサルタンとビキサロマーが同時に処方されることがあります。この組み合わせで「血圧が思ったより下がらない」と感じたとき、ビキサロマーが血中濃度を30〜40%程度引き下げている可能性があります。この情報が条件です。
服用タイミングをずらす(例えばビキサロマーは食直前、バルサルタンは就寝前など)ことで影響を軽減できる場合があります。処方が重なっている患者には、具体的な服薬時刻の確認を行いましょう。
NSAIDsとの併用も日常診療でよく見られます。バルサルタンを服用中の患者が、痛み止めとして市販のNSAIDsを自己購入しているケースは少なくありません。降圧作用の減弱だけでなく、腎機能へのダメージリスクもあることを患者に具体的に伝えておくことが重要です。
服薬指導で伝えるべき実践的なポイントは以下の通りです。
- 🔸 毎日同じ時間に服用し、飲み忘れに気づいたらできる限り早く服用する
- 🔸 次の服用時刻が近い場合は1回分を飛ばし、2回分を一度に飲まない
- 🔸 市販の痛み止め・漢方薬・サプリメントを使い始めるときは事前に相談する
- 🔸 立ちくらみ・めまいを感じる場合は、高所作業・自動車運転を控える
めまい・ふらつきが基本です。この点は特に高齢患者への説明で欠かせません。
CareNet:バルサルタン錠40mg「サンド」の効能・副作用・相互作用(医師向け薬剤情報の確認に最適)
添付文書の「重要な基本的注意」8.2項には次のように明記されています。
> 手術前24時間は投与しないことが望ましい。
> アンジオテンシンII受容体拮抗剤投与中の患者は、麻酔及び手術中にレニン-アンジオテンシン系の抑制作用による低血圧を起こす可能性がある。
術中低血圧は全身麻酔下の手術患者の約30%で発生するといわれており、術後の心筋障害・急性腎障害・脳卒中の独立した危険因子として知られています。そのリスクのひとつとして、ARBの継続投与が挙げられています。
ACE阻害薬・ARBを術前に休薬することで、継続投与群と比較して術中低血圧の発生率が有意に低下したという14件のRCT(計4,063例)のメタ解析結果もあります(CareNet 2025年9月報告)。数字で示されると、休薬の意義がより明確です。
ただし「24時間は投与しないことが望ましい」とあるのは「禁忌」ではなく「望ましい」という表現です。手術の内容・緊急性・患者の血圧状態によって判断が変わるため、麻酔科医・主治医との事前確認が不可欠です。手術予定患者への服薬確認の際には、バルサルタンを含むARBが処方されていないか必ずチェックしましょう。
手術日の朝薬に「バルサルタンを含めてしまった」というヒヤリ・ハットは臨床現場で実際に起きています。周術期管理のチェックリストにARB・ACE阻害薬の記載欄を設けている施設も増えています。これは使えそうです。
術前休薬の指示を受けた患者が「いつから飲まないの?」と混乱するケースも多いため、術前説明では「手術の前日の夜から飲まないでください」と具体的な言葉で伝えることが実務上有効です。
愛媛大学医学部附属病院:手術前の休薬を考慮する降圧薬について(術前休薬の根拠と具体的な対応を解説)
医療従事者として現在最も把握しておくべき実務情報のひとつが、バルサルタン錠「サンド」の出荷調整問題です。
サンド株式会社は2024年3月より、海外製造元からの入荷遅延を理由に、バルサルタン錠20mg・40mg・80mg・160mg「サンド」のすべての規格について割当出荷による限定出荷(出荷調整区分B)を継続しています。2025年4月の最新通知でも「製造元の供給回復の見込みが立たないため、通常出荷再開時期を延期せざるを得ない」と発表されており、現在も状況は続いています。
長きにわたる出荷調整は患者の服薬継続に支障をきたすおそれがあります。薬局・病院薬剤師にとって、代替品への変更対応は急務です。
バルサルタン40mgの代替候補となるジェネリック品の一例は以下の通りです(代替品の選択は各施設・処方医との連携のもとで行ってください)。
- 💊 バルサルタン錠40mg「サワイ」(沢井製薬)
- 💊 バルサルタン錠40mg「DSEP」(第一三共エスファ)
- 💊 バルサルタン錠40mg「トーワ」(東和薬品)
- 💊 バルサルタン錠40mg「JG」(日本ジェネリック)
いずれも薬価は10.4円/錠(2025年4月時点)で同等です。変更の際は添付文書の内容確認・患者への説明・処方医への報告が原則です。
出荷調整情報の確認には、医薬品供給状況データベース「DSJP(Drug Shortage Japan)」や「CloseDi」が役立ちます。最新情報をリアルタイムで確認できるため、在庫管理担当者は定期的なアクセスを習慣にすることが推奨されます。
DSJP(医療用医薬品供給状況データベース):バルサルタン錠40mg「サンド」の最新出荷状況(定期確認に活用)
サンド株式会社:バルサルタン錠「サンド」限定出荷継続に関する最新通知PDF(2025年4月発表)
出荷調整が長引くほど、代替品に切り替えた患者の管理が複雑になります。切り替えのタイミングで血圧が変動するケースも想定されるため、変更後しばらくは血圧モニタリングを強化することをあわせて患者に伝えましょう。

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