うつ病治療でSSRIと一緒に処方しても、単独では効果が公式に認められていません。

アリピプラゾール錠1mg「サワイ」は、沢井製薬が製造・販売する抗精神病薬(非定型抗精神病薬)のジェネリック医薬品です。先発品である大塚製薬の「エビリファイ錠」に対応する後発品として、2022年6月17日に薬価収載されました。薬効分類番号は1179(精神神経用剤)に属しています。
薬価は1錠あたり6.1円と、先発品と比較してコスト面で大きなメリットがあります。これは、長期継続投与が必要な精神疾患患者にとって、経済的負担の軽減という意味で重要です。
この薬の特徴として、生物学的同等性の確認方法が挙げられます。アリピプラゾール錠1mg「サワイ」は、「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドライン」に基づき、アリピプラゾール錠3mg「サワイ」を標準製剤として溶出挙動の同等性が確認されています。つまり直接的なヒト試験ではなく、溶出挙動の比較によって生物学的同等性が担保されています。
剤形は素錠(割線なし)で、直径6.0mm・厚さ2.6mm・重量90mg・色調は微赤白色です。錠剤本体には「アリピプラゾール1 サワイ」と刻印されており、3mg錠(青色)や6mg錠(白色)と色で区別できます。保管条件は室温(1〜30℃)・直射日光・湿気を避けた環境での保存が必要です。
参考:沢井製薬 アリピプラゾール錠「サワイ」患者向医薬品ガイド(添付文書情報)
https://med.sawai.co.jp/file/pr42_4568.pdf
本剤の効能・効果は、含量によって一部異なります。1mg錠が有する適応は以下の4つです。
| 効能・効果 | 対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 統合失調症 | 成人 | 開始量6〜12mg/日、維持量6〜24mg/日 |
| 双極性障害における躁症状の改善 | 成人 | 開始量24mg/日、維持量12〜24mg/日 |
| うつ病・うつ状態(既存治療で効果不十分な場合) | 成人 | 通常3mg/日(SSRI/SNRIとの併用が必須) |
| 小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性 | 原則6歳以上18歳未満 | 開始量1mg/日、維持量1〜15mg/日 |
小児ASDへの適応は原則として6歳以上18歳未満に限られます。これが基本です。6歳未満(低出生体重児・新生児・乳児・6歳未満の幼児)を対象とした有効性・安全性を指標とした臨床試験は実施されていないため、この年齢範囲での使用には十分な注意が必要です。
一方、うつ病・うつ状態に対してはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)またはSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)との併用が必須条件となっています。添付文書(7.4)には「うつ病・うつ状態に対して本剤単独投与での有効性は確認されていない」と明記されており、単剤投与での使用は認められていません。つまりSSRI/SNRIとの必ず組み合わせが条件です。
また、24歳以下の患者では、抗うつ剤の投与により自殺念慮・自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、処方の際はリスクとベネフィットを十分に考慮し、投与開始後の経過観察を慎重に行う必要があります。
参考:KEGG医薬品データベース アリピプラゾール錠1mg「サワイ」添付文書情報
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00070477
本剤を使用するうえで、多くの医療従事者が見落としがちなポイントがあります。それが「定常状態到達に要する時間」です。
アリピプラゾールの半減期は約65〜75時間(活性代謝物のデヒドロアリピプラゾールの半減期は約94時間)と非常に長いため、定常状態に達するまでに約2週間を要します。このため、添付文書(7.1)は「2週間以内に増量しないことが望ましい」と明記しています。
統合失調症の用量調整にはもうひとつ重要な点があります。添付文書(7.2)は「増量による効果の増強は検証されていない」と明記しています。臨床現場では「効果が出ないから増量する」という判断をしやすいですが、アリピプラゾールに関しては増量がそのまま効果増強につながるエビデンスが不十分なため、慎重な用量調整が求められます。
他の抗精神病薬からの切り替えも注意が必要です。新規に統合失調症治療を開始する患者は、他の抗精神病薬からの切り替え患者と比較して副作用が出やすいことが知られており、より慎重な観察と用量調整が必要になります。
参考:今日の臨床サポート アリピプラゾール錠1mg「サワイ」用法・用量
https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=70477
アリピプラゾール錠1mg「サワイ」の重大な副作用は、医療従事者として必ず頭に入れておく必要があります。なかでも特に注意を要するのは以下の副作用です。
特に見逃されやすいのが「衝動制御障害」です。これは他の抗精神病薬ではあまり注目されない副作用であり、アリピプラゾールの部分作動薬としての薬理学的特性に関連すると考えられています。
2016年にFDAが警告を発し、日本でも2018年1月に添付文書(8.5)が改訂されています。具体的な症状としては「病的賭博(ギャンブル依存)」「病的性欲亢進」「強迫性購買」「暴食」などが含まれます。FDAへの報告例ではギャンブルへの強迫的行動が最多(164例)でした。これは使えそうな知識ですね。
こうした症状は患者自身が副作用とは気づかず、医師にも申告しないケースが多いため、定期的な問診の中に衝動制御に関する確認を組み込むことが推奨されます。症状が出た場合には、減量または投与中止を含めた対応が必要です。
また、血糖管理の観点からも注意が必要です。アリピプラゾールは他の非定型抗精神病薬と比較して代謝系副作用が少ないとされていますが、警告(1.1、1.2)に明記されているように、糖尿病や肥満・家族歴がある患者への投与には特別な配慮が求められます。投与中は口渇・多飲・多尿・頻尿・脱力感などの高血糖サインに常に注意し、定期的な血糖モニタリングが重要です。
参考:m3.com アリピプラゾールの衝動リスクに関するFDA警告の解説
https://www.m3.com/clinical/news/423285
アリピプラゾールは主に肝代謝酵素CYP3A4とCYP2D6によって代謝されます。この2つの代謝経路に関わる薬剤との相互作用は、臨床上の大きな問題になり得ます。CYP相互作用の把握が条件です。
| 併用薬 | 相互作用の種類 | 影響 | 対応 |
|---|---|---|---|
| パロキセチン(CYP2D6阻害) | アリピプラゾールAUC↑ | Cmax 39%↑、AUC 140%↑ | アリピプラゾールの減量を検討 |
| キニジン(CYP2D6阻害) | アリピプラゾールAUC↑ | AUC 107%↑(外国人データ) | アリピプラゾールの減量を検討 |
| イトラコナゾール(CYP3A4阻害) | アリピプラゾールAUC↑ | Cmax 19%↑、AUC 63%↑ | アリピプラゾールの減量を検討 |
| カルバマゼピン(CYP3A4誘導) | アリピプラゾールAUC↓ | 経口クリアランス増加 | アリピプラゾールの増量を検討 |
| アドレナリン(エピネフリン) | 血圧への影響 | 血圧降下増強のおそれ | 原則として併用禁忌(救急・歯科局所麻酔は除く) |
特に見落としが多いのが、うつ病の補助療法としてアリピプラゾールとパロキセチン(Paxil:SSRI)を同時に処方するケースです。うつ病・うつ状態への適応ではSSRI/SNRIとの併用が必須ですが、パロキセチンは強力なCYP2D6阻害作用を持つため、アリピプラゾールのAUCが140%増加するというデータがあります。AUCが2.4倍になると考えると、副作用リスクが実質的に大幅に跳ね上がる可能性があります。
この状況では、アリピプラゾールの用量を通常よりも少なく設定するか、フルボキサミン・エスシタロプラムなどCYP2D6への影響が比較的少ないSSRIへの切り替えを検討することが合理的です。処方前の確認が、副作用リスクを大きく下げる一手です。
逆に、カルバマゼピン(抗てんかん薬)との併用では、CYP3A4が誘導されてアリピプラゾールの代謝が促進されるため、血中濃度が低下して治療効果が減弱するリスクがあります。てんかん合併の精神疾患患者では特に注意が必要な組み合わせです。
参考:KEGG医薬品データベース アリピプラゾール薬物相互作用情報
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00070478
アリピプラゾール錠1mg「サワイ」の1mg規格が特に活躍するのが、小児期の自閉スペクトラム症(ASD)に伴う易刺激性の治療場面です。この適応では開始量が「1日1mg」と規定されており、この低用量からのスタートを支える製剤として1mg規格は臨床上重要な位置を占めています。
ASDの易刺激性とは、ちょっとした刺激で強い怒り・癇癪・自傷行為・攻撃行動などが出現する状態を指します。アリピプラゾールはこうした行動症状を和らげることが示されており、小学校入学前後(6〜7歳)から使用される場面も少なくありません。
用量の増量は「1日量として最大3mg/日ずつ」という縛りがあり、急速な増量は認められていません。維持用量の上限は1日15mgです。子どもの体重や発達段階・個人差を考慮した慎重な用量設定が求められます。
見落とされやすい重要な点として、添付文書(8.16)では「定期的に安全性及び有効性を評価し、漫然と長期にわたり投与しないこと」と明記されています。ASDの行動症状は成長とともに変化することがあり、症状改善後に継続の必要性を定期的に見直すことが推奨されています。漫然投与は回避が原則です。
また、他の抗精神病薬を使用していた患者に本剤を投与した場合、血清プロラクチン濃度が低下し月経が再開することがあります(8.7)。思春期の女性患者では月経過多・貧血・子宮内膜症の発現に注意が必要で、これは保護者への十分な事前説明が欠かせない情報です。
さらに、アリピプラゾールが誤嚥性肺炎リスクを高め得る「嚥下障害」を引き起こす可能性も示されています(8.8)。口腔ケアが不十分な患者や、もともと飲み込みにくさのある患者への投与では特に注意が必要です。ものが飲み込みにくい・むせる・咳き込むといった変化を保護者や介護者が見逃さないよう、あらかじめ情報提供しておくことが大切です。
参考:沢井製薬 効能追加及び添付文書改訂のお知らせ(小児ASD適応追加)
https://med.sawai.co.jp/file/pr7_4569_6.pdf