「エピナスチン製剤なら全品コンタクトしたまま使える」と患者に伝えると、角膜障害を招くリスクがあります。

多くの点眼薬には、開封後の微生物汚染を防ぐために防腐剤が配合されています。その中でも最も広く使われてきたのが、ベンザルコニウム塩化物(BAC:Benzalkonium Chloride)です。この成分は広域抗菌スペクトルと高い安定性から重宝されてきましたが、コンタクトレンズ、特にソフトレンズとの相性が問題になります。
ソフトコンタクトレンズは含水性が高く、薬剤成分を吸着しやすい素材でできています。BACがソフトレンズに蓄積すると、レンズを介して高濃度のBACが長時間にわたって角膜と接触し続けます。これにより角膜上皮細胞が障害を受けるリスクが報告されており、これが「ソフトコンタクト装用中の点眼は禁忌」という添付文書記載の根拠です。
BACは陽イオン性の界面活性剤で、マイナスに帯電したソフトレンズ素材に電気的に引き寄せられやすい性質があります。これが問題です。涙液による洗い流しだけでは除去が追いつかない場合があるため、添付文書の指示は理にかなっています。
アレジオン点眼液0.05%(先発品)は、2014年12月に防腐剤をBACからリン酸水素ナトリウム水和物とホウ酸へ変更しました。これがコンタクト装用中の使用を可能にした転換点です。ホウ酸は眼科用製剤に古くから使われてきた緩衝剤・等張化剤であり、ソフトレンズへの吸着が起きにくいことが確認されています。アレジオンLX点眼液0.1%(2019年9月発売)はそもそも完全な防腐剤フリー設計で発売されたため、装用中の使用制限がありません。
つまり先発品が「コンタクト可」なのです。
なお、ハードコンタクトレンズ(RGP)は非含水性のため、BACを吸着しにくい素材特性を持っています。まばたきによってレンズが動き、涙液交換も起きやすいため、多くのBAC含有点眼薬でもハードレンズ装用中は使用可とされています。
参天製薬 Medical Channel:アレジオン/アレジオンLX FAQ(医療従事者向け公式情報)- コンタクトレンズ装用中の点眼可否に関する参天製薬の公式見解・臨床試験データが確認できます
現場での誤指導が最も多い落とし穴がここにあります。
「アレジオンと同じエピナスチン塩酸塩の薬だからコンタクトのまま使える」という患者説明は、場合によって誤りになります。エピナスチン塩酸塩のジェネリックには、先発品と異なりベンザルコニウム塩化物を防腐剤として含有している製品が存在するからです。
例えば、アレジオンLX点眼液0.1%の先発品およびオーソライズドジェネリック(AG品・SEC社製)はBAC非含有でコンタクト装用中の点眼が可能です。一方、複数のジェネリックメーカー品にはBACが含まれており、ソフトコンタクトレンズ装用中の使用は避けることとなっています。ジェネリックは有効成分が同一でも、添加剤の構成は製品ごとに異なります。これが原則です。
では実際にどこで確認するか、という話になります。確認先は添付文書の「適用上の注意」の項目です。「ソフトコンタクトレンズを装用したまま点眼することは避けること」という記載があればBAC含有品と判断できます。薬局・病院での薬剤師業務において、患者がジェネリックに変更になった際は必ずこの確認を一工程として組み込む必要があります。
患者への服薬指導では「先発品と同じ成分ですか?」ではなく「防腐剤の種類は同じですか?」という視点での確認が重要です。
Pharmacista:ソフトコンタクトの上から点眼可能な抗アレルギー点眼薬(薬剤師向け解説)- ジェネリック含む各製品のBAC含有状況と添付文書の確認ポイントについて参照できます
ここは見落としやすいポイントです。
アレジオン点眼液0.05%・アレジオンLX点眼液0.1%はともに、通常のソフトコンタクトレンズ(クリアレンズ)については装用したままの点眼が認められています。しかし参天製薬は、カラーコンタクトレンズ(着色レンズ)装用中の点眼については明示的に避けるよう指示しています。
理由は明確です。カラーコンタクトレンズへの点眼液の影響について臨床試験や非臨床試験が実施されておらず、安全性が確認されていないからです。色素を含むレンズ素材は通常のクリアレンズと構成が異なる場合があり、薬剤との相互作用によってレンズの変色や変形を引き起こすリスクが否定できません。これが条件です。
若年層の患者ではカラーコンタクトの使用率が高く、「コンタクトしたまま使えると言われた」という情報が先行して、カラコンにもそのまま使ってしまうケースが起こりえます。医療従事者が処方時・調剤時に「カラーコンタクトは対象外」という点を明確に伝えることが角膜保護の観点から重要です。
なお、カラーコンタクトを装用している患者がアレジオン系点眼薬を使う場合は、カラーコンタクトを外してから点眼し、5分以上経過後に再装用するよう指導します。この手順を守れば問題ありません。
アレジオンシリーズには現在2種類あります。正確に使い分けられているでしょうか?
| 製品名 | 濃度 | 用法 | 防腐剤 | コンタクト可否 |
|---|---|---|---|---|
| アレジオン点眼液0.05% | 0.05% | 1日4回(朝・昼・夕方・就寝前) | BAC非含有(ホウ酸) | ソフト・ハード:可/カラコン:不可 |
| アレジオンLX点眼液0.1% | 0.1% | 1日2回(朝・夕) | 防腐剤フリー | ソフト・ハード:可/カラコン:不可 |
アレジオンLXは2019年に発売された高濃度タイプで、1日2回点眼で十分な効果が得られる8時間持続型製剤です。参天製薬の調査によると、患者の64%が「効果が長続きしてほしい」、43%が「1日2回の点眼を希望する」と回答しており、このニーズに応えて開発されました。アドヒアランス改善の面でも有利です。
0.05%と0.1%の有効成分濃度の違いは2倍ですが、点眼1回あたりの量は通常1滴なので、1日の総投与量もLXの方が多くなります。眼そう痒感に対しては、非臨床試験において点眼8時間後でも0.05%製剤の点眼4時間後と同等の効果が維持されることが確認されています。
働き世代やコンタクト常用患者には、アドヒアランスの高さからLXが適していることが多いです。これは使えそうです。ただし12歳未満の小児・妊婦への使用については処方医の判断が必要であり、両製品とも安易な勧奨は控えます。
参天製薬 Medical Channel:アレジオンLX 1日2回点眼の根拠について(医療従事者向け)- 非臨床・臨床試験データを含む用法用量の詳細が記載されています
現時点でコンタクト装用のまま使える処方抗アレルギー点眼薬は、実質的にアレジオン系(エピナスチン製剤の先発品・一部AG品)のみです。これが原則です。よく処方される他の主な処方点眼薬を以下に整理します。
| 薬剤名(成分) | コンタクト可否 | 備考 |
|---|---|---|
| アレジオン点眼液0.05%(エピナスチン) | 可(クリアレンズのみ) | 先発品・AG品に限る |
| パタノール点眼液0.1%(オロパタジン) | 不可(SCL) | BAC含有 |
| ザジテン点眼液0.05%(ケトチフェン) | 不可(SCL) | BAC含有、15分後再装用 |
| クロモリール点眼液2%(クロモグリク酸Na) | 不可(SCL) | BAC含有、5〜10分後再装用 |
| リザベン点眼液0.5%(トラニラスト) | 原則不可 | BAC含有 |
パタノール、ザジテン、クロモリールはいずれもBAC含有であり、ソフトコンタクト装用前後での使用が必要です。特にザジテンは点眼後15分以上経過してから再装用するよう指示されており、コンタクト常用患者にとっては利便性が低下します。
服薬指導の実務では、以下の確認を徹底することが角膜障害のリスク回避につながります。
なお、アレルギー性結膜炎の治療原則として、日本コンタクトレンズ学会のガイドラインでは「治療期間中はコンタクトレンズの装用を中止することを考慮する」ことを推奨しています。症状が軽度であればアレジオン系を使いながらコンタクト継続も選択肢になりますが、症状が中等度以上に進行した段階でコンタクトレンズ装用の一時中止を患者に提案することが重要です。コンタクトレンズはアレルゲンを角膜面にトラップする構造的特性を持ち、症状を遷延させる要因になりえます。厳しいところですね。
アレルギー性結膜炎の重症度判定には、眼そう痒感・結膜充血・乳頭増殖・眼瞼の腫脹などの所見が指標となります。重症度が高い場合はステロイド点眼薬の追加も検討されますが、この時点ではコンタクト装用の中止が前提となることを患者に伝えておくと、後々の指導がスムーズです。
日本アレルギー学会:アレルギー性結膜疾患Q&A(患者・一般向け)- コンタクトレンズ装用との関係、抗原回避のための生活指導内容が参照できます

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