アンカーボルトの種類と規格を材質・用途別に解説

アンカーボルトの種類・規格について、JIS B 1220のABR・ABMの違いから施工方法・材質まで徹底解説。金属加工現場で間違えやすいポイントも網羅。正しい選定で損失を防ぐには?

アンカーボルトの種類と規格を正しく理解して施工ミスを防ぐ

JIS規格品を選んでいても、ABRとABMを混同するだけで現場に3,600万円超の損害賠償が発生した事例があります。


この記事のポイント3つ
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種類と施工方法の対応

構造用(ABR/ABM)・あと施工・ケミカルなど、アンカーボルトの種類は10種以上。施工方法・母材によって選ぶべき種類が異なります。

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JIS規格の正しい読み方

JIS B 1220:2015では、転造ねじ(ABR)と切削ねじ(ABM)で適用サイズと強度特性が大きく異なります。規格表の読み間違いがコスト損失に直結します。

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規格選定ミスのリスク

アンカーボルトの施工不良は引渡し後にも発見されやすく、国土交通省の調査では修補命令324件中265件がアンカーボルト関連という統計があります。


アンカーボルトの基本的な種類と用途の違い


アンカーボルトとは、基礎コンクリートに埋め込み、鋼材や設備機器などが分離・転倒・移動しないように固定するボルトです。引張力やせん断力に抵抗する役割を持ち、建物と基礎をつなぐ重要な構造部材として機能します。


一口に「アンカーボルト」と言っても、種類は大きく分けて10種類以上が存在します。種類ごとに使える母材や施工方法、対応荷重が異なるため、現場の条件に合わせた選定が求められます。


まず、大分類として「先付けアンカーボルト」と「あと施工アンカーボルト」に分かれます。先付けは、コンクリート打設前に鉄筋と結束して埋め込む方法で、構造用アンカーボルト(ABR/ABM)が代表格です。あと施工は、コンクリート硬化後にハンマードリルで穿孔してから取り付ける方式で、リフォーム・改修工事での採用が多いです。


以下に主な種類を整理します。






















































種類 施工方法 主な用途
構造用アンカーボルト(ABR/ABM) 先付け(コンクリート打設前) 鉄骨柱脚・基礎接合
芯棒打ち込み式アンカー あと施工・打込み固定 設備固定・取付物上施工
内ねじアンカー あと施工・打込み固定 吊りボルト・六角ボルト接続
ケミカルアンカー(接着系) あと施工・接着固定 耐震補強・重量設備
締付けアンカー あと施工・トルク締付け 精度が求められる設備固定
溶接用アンカー 溶接固定 サッシ・シャッター枠
ボードアンカー 石膏ボード・中空壁への差込み 内壁への軽量物取付け
ALC用アンカー 締付け固定(ALC専用) ALC板への金具取付け
中空壁用アンカー(ITハンガー等) 中空壁内での回転固定 押出成形セメント板


つまり、母材の素材と施工タイミングで選択肢が絞られます。


特に金属加工現場で注意したいのは、「構造用アンカーボルト」と「あと施工アンカー」の混用です。構造的な接合部に、本来は構造用として設計されていない製品を流用すると、荷重計算が大きく狂います。これは原則として禁止されています。


参考:日本建築あと施工アンカー協会による種類・施工手順の詳細は以下でも確認できます。


日本建築あと施工アンカー協会 ─ あと施工アンカーの施工手順と種類分類(JCAA)


アンカーボルトのJIS規格「JIS B 1220」をどう読むか

構造用アンカーボルトには、JIS B 1220:2015「構造用両ねじアンカーボルトセット」という規格が定められています。この規格は、2000年に制定された日本鋼構造協会(JSS)規格をもとに、2010年にJIS化され、さらに2015年12月に大きく改正されました。


改正のポイントは3点です。ABRにM18サイズが追加されて13種類になったこと、表面処理として溶融亜鉛めっき(HDZ35)と電気めっきが明記されたこと、そしてこれまで別立てだったJIS B 1220(ABR)とJIS B 1221(ABM)が統合されたことです。


規格の中身は、ボルト本体の形状・寸法だけではありません。1つの「セット」として、直線状の両ねじアンカーボルト1本・ナット4個・平座金1枚の3点構成が規定されています。これが基本です。


さらに、材質の組合せにも厳格なルールがあります。炭素鋼製ボルトにはナットも座金も炭素鋼製を使い、ステンレス鋼製ボルトにはすべてステンレス鋼製の部品を合わせなければなりません。表面処理についても同様で、ボルトに施した処理と同等の処理をナットと座金にも施す必要があります。


また、重要な数値として「長さは25d以上、ねじ部の長さは3d以上、軸部長さは15d以上」という下限が設けられています(dはねじの呼び径)。たとえばM20(d=20mm)なら全長は500mm以上、ねじ部は60mm以上が必要ということになります。全長500mmはちょうど500mlペットボトルの高さほどです。


意外なのは、JIS規格アンカーボルトは「両ねじ形状のみ」という制限です。片側だけにねじがあるタイプや、一方を曲げたL型・J型は、JIS B 1178(基礎ボルト)の規格品を除き、JIS B 1220のJIS規格アンカーボルトには該当しません。この点は、見た目だけで判断すると間違えやすいところです。


参考:JIS規格アンカーボルトの詳細寸法表と構造特性は以下を確認してください。


建築鉄骨構造技術支援協会(SASST) ─ アンカーボルトのJIS改正内容と構造特性の解説


ABRとABMの違い──転造ねじ・切削ねじと強度の関係

金属加工の現場に携わる方なら、「転造ねじ」と「切削ねじ」の差は感覚でわかるかもしれません。この2つの加工方法の違いが、そのままABRとABMの性格の違いになっています。


ABR(転造ねじ)は、ダイスで材料を押しつぶしてねじ山を形成します。この方法では、金属組織のファイバーが山から谷へ連続しているため切断されません。その結果、切削ねじと比較して強度が5〜20%高く、伸びも約20%大きくなります。対応サイズはM16〜M48で、中小径の量産に向いています。


ABM(切削ねじ)は、刃物で材料を削り出してねじを作ります。ファイバーが切断されるため強度はやや落ちますが、加工機と刃物が安価で、少量生産や大径ボルトに適しています。対応サイズはABM400でM24〜M48、ABM490ではM24〜M100に対応し、M48を超える太物ではABMが事実上の選択肢となります。


ABMは細目ねじを採用している点も重要です。ねじのピッチを細かくすることで、ねじ部有効断面積と軸部断面積の比率を並目ねじよりも大きくし、伸び性能を確保しています。これにより地震などでアンカーボルトが破断しにくい構造になっています。


































項目 ABR(転造ねじ) ABM(切削ねじ)
ねじ加工方法 転造(押しつぶし) 切削(削り出し)
ねじの種類 メートル並目ねじ メートル細目ねじ(M24〜M48)/ 並目(SUS)
対応サイズ M16〜M48(13種類) M24〜M100(炭素鋼)/ M24〜M48(SUS)
相対強度 切削比で5〜20%高い 標準(細目ねじで伸び5%確保)
主な用途 M48以下の標準施工 M48超の大径・少量生産


ABMの材料には「降伏比が小さい」ことが求められます。降伏比とは「降伏強度÷引張強度」の比率で、この値が低いほど破断前に大きく変形(エネルギー吸収)できます。これが基本です。


かつてはSS材(一般構造用圧延鋼材)が使われていましたが、現在のJIS規格ではSNR材(建築構造用圧延棒鋼、JIS G 3138)の使用が前提となっています。SNR材はSS材と比べて寸法精度や伸び能力が高く、アンカーボルトの構造的信頼性を高めるために採用されています。


参考:転造ねじと切削ねじの製法・強度の詳細については以下が参考になります。


株式会社ヤマダ ─ JIS規格アンカーボルトの転造・切削ねじの製法と性能比較(製造メーカーによる解説)


規格を誤ると発生する具体的な損失リスク

アンカーボルトの種類・規格を正しく理解しておく実益は、コスト損失や法的リスクの回避に直結しています。感覚論ではなく、具体的な数字で確認しておくべきです。


まず施工不良の発生率について。国土交通省関連の調査(平成17年)によれば、引渡し後に発見された修補命令324件のうち265件がアンカーボルトの施工不良に起因していました。全体の8割以上がアンカーボルト絡みです。厳しいですね。


次に費用面のリスクです。2024年に名古屋地裁岡崎支部が下した判決では、基礎部分におけるアンカーボルトの施工不良(台直しなど)が原因で契約解除が認められ、施工業者に原状回復費用として約3,600万円の支払いが命じられました。これは中小の金属加工業者にとって事業継続を脅かすレベルの金額です。


規格選定ミスが招く具体的なトラブルパターンは以下の通りです。


- サイズ誤り(M20とM22の取り違え):ベースプレートの穴径と合わなくなり、基礎コンクリートを部分的に壊して打ち直しが必要になるケースがあります。


- ABRとABMの混用:転造ねじの並目と切削ねじの細目では山の形状が異なるため、同じ呼び径でもナットが正常に締まらないことがあります。


- 強度グレード誤り(ABR400とABR490の誤選定):引張降伏耐力はM20で比較するとABR400が57.6kN以上、ABR490が79.6kN以上と約38%の差があります。荷重計算が正しくても、グレード誤りで強度不足になります。


- 表面処理の不整合:ボルトが溶融亜鉛めっきなのに、ナットや座金がめっきなしの「生地」では、異種組合せとなりJIS規格セットとして認められません。


あと施工アンカー(ケミカルアンカー含む)についても、令和4年3月31日施行の告示改正で「新築建築物の構造耐力上主要な部分」にも条件付きで使用可能となりました。ただし、強度指定申請が必要であり、無届けで使用すると建築基準法上の問題になります。条件の確認が必須です。


参考:アンカーボルト施工ミスのリスクと判例については以下の情報が参考になります。


施工管理ナビ ─ 台直し施工が発覚した基礎工事の契約解除・損害賠償事例の詳細解説


現場での種類・規格の選び方と確認ポイント

理論を整理したうえで、実際の現場における選定の流れを確認します。アンカーボルトの選定ミスは、コンクリート硬化後は基本的に修正が困難です。これは使えそうですね。


ステップ1:先付けかあと施工かを決める


コンクリート打設前に施工できる場合は先付け(構造用ABR/ABM)を選びます。既存コンクリートへの取付けや改修工事の場合は、あと施工アンカーから適切な種類を選びます。


ステップ2:母材の種類と強度を確認する


コンクリート・ALC・石膏ボード・中空壁など、母材によって使用できるアンカーの種類が異なります。特にALCは締付け式のALC専用品を使わないと、パネルが割れるリスクがあります。


ステップ3:サイズと強度グレードを図面で確認する


設計図書に「M□□・ABR490」などの指定がある場合は、グレードまで一致させることが必須です。ABR400とABR490は見た目が同じです。梱包のラベルで必ず確認してください。


ステップ4:セット構成を確認する


JIS規格アンカーボルトは、ボルト1本・ナット4個・平座金1枚の3点セットが規格要件です。現場で「ナットが足りない」「座金サイズが合わない」という事態を防ぐために、購入時にセット構成を確認する習慣をつけることが大切です。


ステップ5:表面処理と材質の整合を取る


ボルトがABR400(炭素鋼、溶融亜鉛めっき)なら、ナット・座金も同等の溶融亜鉛めっき品でなければなりません。ステンレス製(ABR520SUS)なら、全部品をステンレス製で揃えます。これが条件です。


なお、アンカーボルトの水平方向の設置許容誤差は、構造用で±5mm以下、建て方用で±8mm以下と定められています。±5mmは親指の幅1本分程度の精度感です。アンカーフレームを使用すると、この誤差管理が大幅に楽になります。複数のアンカーボルトを所定の位置で固定する治具で、正確な位置決めが可能です。







































確認項目 チェック内容 見落としリスク
先付け/あと施工の区別 施工タイミングと母材を確認 構造部位への流用事故
ABR/ABMの種別 設計図書の記号を確認 ねじ形状不一致・ナット不適合
強度グレード 400/490/520SUSの別 引張強度不足(最大38%差)
セット構成 ボルト×1、ナット×4、座金×1 JIS規格セット不成立
表面処理の一致 ボルト・ナット・座金で揃える 規格外品扱い・腐食促進
設置誤差管理 構造用±5mm、建て方用±8mm 鉄骨建て方での位置不一致


参考:アンカーボルト選定・仕様の体系的な情報は以下で確認できます。


建築用アンカーボルトメーカー協議会(JFMA) ─ JIS規格アンカーボルトの公式規格表と寸法データ






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