アモルファスコア モータの省エネ効果と加工課題を徹底解説

アモルファスコア モータはなぜ金属加工の現場で注目されているのか?鉄損を電磁鋼板の1/10に抑える驚きの性能から、プレス加工の課題まで、金属加工業者が押さえるべき最新情報をまとめました。あなたの工場にどう活かせるでしょうか?

アモルファスコア モータの仕組みと金属加工業者が知るべき実態

アモルファスコア モータが「省エネなら何でも得意」という認識は間違いで、実は低速・高負荷域では電磁鋼板モータに効率で逆転される場合があります。


📌 この記事の3つのポイント
鉄損は電磁鋼板の1/10以下

アモルファス合金の板厚は約0.025mm(電磁鋼板の約1/14)。高速回転時の渦電流損を大幅に抑え、IE5相当の効率96%超を実現できます。

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プレス加工は「超硬合金製金型」が必須

アモルファス合金の硬度はHV約900と高く、通常の金型では短命に終わります。ゼロクリアランス金型で100万ショット/メンテナンスが新たな目標値です。

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金属加工業者に新たなビジネス機会

アモルファスコア量産化に向けた加工技術は今まさに確立途上。打ち抜き・接着積層・異常検知の3分野で技術を持つ企業に大きなチャンスがあります。


アモルファスコア モータとは何か:電磁鋼板との根本的な違い



モータのコアに使われる材料は、そのモータの性能をほぼ決定づけます。一般的な産業用モータでは「電磁鋼板」が使われていますが、アモルファスコア モータはそのコア素材を「アモルファス合金(非晶質合金)」に置き換えたものです。


電磁鋼板の板厚が約0.35mmなのに対し、アモルファス合金は約0.025mm——つまり約1/14の薄さです。薄さのイメージでいうと、電磁鋼板1枚がコピー用紙3〜4枚分の厚さであるのに対し、アモルファス箔はラップフィルムに近い薄さです。この超薄板構造が、渦電流損を根本から小さくするカギになっています。


アモルファス合金は「原子が規則正しく並んでいない(非晶質)」という特殊な構造を持ちます。結晶構造を持たないため、磁区の移動が滑らかで、磁界をかけたり取り除いたりするたびに発生するヒステリシス損が非常に小さくなります。この2つの損失(ヒステリシス損+渦電流損)を合わせたものが「鉄損」で、アモルファス合金の鉄損は電磁鋼板の1/10以下とされています。


つまり省エネの本丸です。


産業用モータは日本の年間電力消費量の約55%を占めており、そのうち工場設備の空気圧縮機やポンプ、ブロアが大きな割合を担っています。アモルファスコア モータを導入すれば、鉄損が大幅に低減し、最高効率IE5(96%以上)が見えてきます。IE4(従来の高効率機)からさらに数ポイント改善できるという点は、工場全体の電力コストに直接影響します。







































項目 電磁鋼板コア アモルファスコア
板厚 約0.35mm 約0.025mm(約1/14)
鉄損 基準値 約1/10以下
飽和磁束密度 高い(基準) 電磁鋼板の約3/4
効率規格(例) IE3〜IE4相当 IE5相当(96%超)
プレス加工性 高い 非常に困難(硬度HV約900)
積層枚数(同じ厚さのコアを作る場合) 基準 数倍〜10倍程度必要


参考:アモルファスコアを用いたモータの開発・実用化データ(電磁鋼板との鉄損・効率比較)
株式会社明和製作所 技術者ブログ「アモルファスコアを用いたモータの開発・実用化」


アモルファスコア モータの効率特性と「苦手な回転数域」

アモルファスコア モータを選ぶ際に多くの人が見落としているのが、回転数域ごとに効率の優劣が変わるという点です。これが冒頭の「驚きの一文」にも通じる重要な話です。


株式会社明和製作所の比較試験では、高速回転域(9,000〜12,000rpm)においてアモルファスコアモータは電磁鋼板モータより効率が約15%高いという結果が出ています。低鉄損の恩恵が大きく出るのは、この高速回転域です。


ところが、通常の産業用モータが使われる低速回転域(2,800〜4,400rpm)での比較は少し違います。


低速・高負荷域では、電磁鋼板のほうが飽和磁束密度が高い(アモルファスの約4/3)ため、磁気飽和を起こしにくく銅損が小さくなります。一方のアモルファスコアは、高負荷になると電流値が高くなって銅損が増加し、効率差がほぼなくなる傾向があります。プロテリアル社の技術レビューでも、大電流域ではアモルファスモータのトルクが電磁鋼板モータの約95%にとどまるというデータが示されています。


苦手な条件が明確にあります。


ただし、同じ低速でも低負荷域では、鉄損が小さいアモルファスコアのほうが効率は約10%優位です。つまり、アモルファスコア モータの実力を最大限に引き出すには「どの回転数で、どの程度の負荷で使うか」を事前に整理することが前提条件になります。


🔎 使用条件別の効率優位性(目安)
- 高速回転(9,000rpm以上)+あらゆる負荷 → ✅ アモルファスが優位(効率差 約3〜15%)
- 低速回転(3,000rpm前後)+低負荷 → ✅ アモルファスがやや優位(効率差 約10%)
- 低速回転(3,000rpm前後)+高負荷 → ⚠️ 電磁鋼板と同等かやや劣る場合あり


ドローン・EV・オイルフリー空気圧縮機のような高速回転が当たり前の用途では、アモルファスコア モータの採用効果は非常に大きいです。日立製作所は2024年に、24,000rpmでのラジアルギャップ型アモルファスモータの動作試験を開始しており、従来比1/5の小型化も実現しています。


参考:高速回転と高効率の両立を目指すラジアルギャップ型アモルファスモータの研究開発詳細
日立製作所 研究開発グループ「高速回転と高効率を両立したラジアルギャップ型アモルファスモーターの開発」


アモルファスコア モータの加工課題:プレス金型が「すぐ死ぬ」理由

金属加工業者がアモルファスコアの量産に挑む際、最初に直面するのが「加工の難しさ」です。これは決して誇張ではなく、業界全体が長年苦しんできた構造的な課題です。


アモルファス合金箔の硬度はHV約900。これは一般的な電磁鋼板(HV150〜200程度)の4倍以上の硬さです。しかも板厚は25μm(0.025mm)と非常に薄く、脆い性質も持っています。硬くて薄くて脆い——この三重苦が、通常のプレス金型では到底対応できない理由です。


加えて、アモルファスコアとして同じ厚みのコアを作ろうとすると、電磁鋼板に比べて積層枚数が数倍から最大10倍程度必要になります。電磁鋼板1枚が0.35mmなのに対し、アモルファスは0.025mmですから、同じ10mmのコアを積み上げるには電磁鋼板なら約29枚で済むところ、アモルファスなら約400枚が必要です。東京スカイツリーの高さ634mを、1円玉(厚さ約1.5mm)を積み上げて作るようなイメージです。積層工数の多さがコスト増加に直結します。


工数が増えるほどコストも増えます。


この加工課題を解決するために、ナカムラマジック株式会社(長野県)は中小企業庁の戦略的基盤技術高度化・連携支援事業(サポイン事業)を活用し、「ゼロクリアランス金型」の研究開発に取り組みました。使用する刃物には、アモルファス合金の2倍以上の硬度を持つ超微粒子超硬合金を採用し、クリアランス2μm±1μmという精度で仕上げることに成功しています。この技術により、従来困難だった100万ショット/メンテナンスでの連続打ち抜きを達成し、特許も取得しています。


また、小松精機工作所(長野県諏訪市)も独自のアモルファス打ち抜き・積層技術で特許を取得しており、試作から量産化対応が可能な体制を整えつつあります。


金属加工業者にとって、ここに大きなビジネスチャンスが眠っています。


参考:アモルファス合金箔への高耐久金型開発・100万ショット達成に関する中小企業庁公式掲載資料
中小企業庁サポイン事業「アモルファス合金箔の高耐久プレス金型およびプレス技術の研究開発」


アモルファスコア モータが金属加工業者に与えるビジネスチャンス

アモルファスコアの量産化は「モータメーカーだけの話」と思っている方がいれば、それは機会損失につながる思い込みです。実際の量産サプライチェーンを見ると、金属加工業者こそ最重要の担い手です。


現在、アモルファスコアの製造には大きく3つの加工工程があります。


1つ目はプレス打ち抜き加工です。アモルファス箔を所定のコア形状に切り出すこの工程は、高硬度・超薄板という素材の特性から、通常の電磁鋼板加工の延長では対応できません。専用の金型開発と工程設計が必要です。


2つ目は積層・接着工程です。打ち抜いた薄板を数百枚単位で積み上げ、絶縁層を保ちながら固定する技術です。接着剤の均一塗布・真空含浸・占積率の確保が品質の要になります。プロテリアル社は2024年に独自の接着層制御技術で占積率90%以上を実現する積層接着リボンを開発したと発表しており、業界内でも注目されています。


3つ目は品質検査・異常検知です。アモルファス素材の脆さゆえ、加工中に2枚打ちなどの不良が発生しやすく、リアルタイムの検知システムが必要です。AEセンサ(音響放出センサ)を活用した異常検知システムの開発も、付加価値の高い技術領域になっています。


これは使えそうです。


自動車・EV・ドローン・産業用圧縮機など、アモルファスコアモータの需要分野は急速に広がっています。市場調査データによると、非晶質モーター(アモルファスモータ)の世界市場は2030年に向けて大きな成長が見込まれており、量産サプライヤーへの需要が確実に増します。既存のプレス加工・積層コア製造の技術を持つ企業が、専用金型の開発や積層工法のノウハウ蓄積に今から取り組む意義は非常に大きいと言えます。


参考:プロテリアル社によるアモルファス合金積層接着リボンの開発発表(占積率・接着技術の詳細)
PROTERIAL「モーターコア用アモルファス合金積層接着リボンを開発」


アモルファスコア モータ導入時に見落とされがちな注意点と今後の展望

アモルファスコア モータは省エネの切り札として期待されていますが、導入・設計時に見落とされがちな注意点がいくつかあります。技術的な特性を正確に理解してこそ、現場での失敗を防げます。


まず飽和磁束密度の問題です。アモルファス合金の飽和磁束密度は電磁鋼板の約3/4と低めです。これは、高負荷・大トルクが求められる用途では磁気飽和が起こりやすく、電流が増えて銅損が拡大することを意味します。単純に「アモルファスに替えれば省エネになる」とはならず、コア形状の最適化設計が必要です。磁束飽和を考慮したコア形状に改善することで、オールラウンドな効率向上が見込めます。コア設計が条件です。


次に、アモルファスは熱に弱い側面があります。アモルファス合金は約400℃で結晶化が始まるとされており、製造工程での熱処理(磁気焼鈍を含む)の温度管理が非常に重要です。温度管理を誤ると磁気特性が劣化し、省エネ効果が著しく低下します。


さらに積層後の変形リスクも現実的な課題です。超薄板のアモルファス箔は打ち抜き後の真円度が接着鋼板と比較して歪みが出やすく、積層コアの内外でのバラつきが生じる可能性があります。これが量産品の品質安定性に影響します。厳しいところですね。


今後の展望についても触れておきます。日立製作所のラジアルギャップ型アモルファスモータ開発は、2024年にNEDO省エネルギー技術開発賞の理事賞を受賞しており、技術的な信頼性は着実に高まっています。また、NCT(ネクストコアテクノロジーズ)が開発したアモルファス合金積層コアを使用した試作モータは、最高効率98.3%という驚異的な数値を達成しています。


| 課題 | 内容 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| 飽和磁束密度の低さ | 高負荷時に銅損増加 | コア形状最適化設計 |
| プレス加工の困難さ | 金型摩耗・短寿命 | 超硬合金製ゼロクリアランス金型 |
| 積層枚数の多さ | コスト増加 | タンデムライン・自動化 |
| 熱処理の難しさ | 400℃以上で結晶化 | 精密温度管理プロセス |
| 積層後の変形 | コア品質バラつき | AEセンサ異常検知システム |


参考:IE5相当の効率を実現した日立グループのアモルファスモータの技術詳細と受賞情報
日立産機システム「IE5:アモルファスモータ」






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