アデムパス錠の薬価は、先発品でも後発品登場後に引き下げられることがあり、知らずに算定し続けると医療機関の収益に年間数十万円単位で差が出ます。

アデムパス錠(一般名:リオシグアト)は、バイエル薬品が製造販売する可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬で、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)および肺動脈性肺高血圧症(PAH)に適応を持ちます。日本では2014年に承認され、希少疾患領域における重要な治療選択肢として位置づけられています。
2024年度薬価改定(令和6年度)時点でのアデムパス錠の薬価(1錠あたり)は以下の通りです。
| 規格 | 薬価(円/錠) | 前回改定比 |
|---|---|---|
| アデムパス錠 0.5mg | 1,341.60円 | 引き下げ |
| アデムパス錠 1mg | 1,754.40円 | 引き下げ |
| アデムパス錠 1.5mg | 2,143.10円 | 引き下げ |
| アデムパス錠 2mg | 2,507.90円 | 引き下げ |
| アデムパス錠 2.5mg | 2,869.40円 | 引き下げ |
※上記薬価は参考値です。最新の確定値は厚生労働省の薬価基準収載品目リストで必ず確認してください。
アデムパス錠の用法は原則1日3回投与であるため、例えば2.5mg錠を1日3錠服用する患者の場合、1日薬価は約8,608円、1か月(30日)では約258,000円に相当します。これは患者一人当たりの薬剤費としては高水準で、処方設計の際に医師・薬剤師ともに認識しておくべき数字です。
つまり薬価の変動は患者負担に直結します。
薬価改定は通常2年ごとに実施されてきましたが、2021年度からは毎年改定(中間年改定)が導入されており、乖離率が一定以上の品目は中間年でも引き下げ対象になります。アデムパス錠のような高薬価品は乖離率の監視対象になりやすく、毎年の動向確認が欠かせません。
最新の収載品目リストと薬価基準については下記の厚生労働省公式ページを参照してください。
厚生労働省:令和6年度薬価改定について(薬価基準収載品目リスト含む)
薬価算定には大きく「類似薬効比較方式」と「原価計算方式」の2種類があります。類似薬効比較方式は、既存の類似薬と効能・薬理作用を比較して薬価を設定する方法です。一方、原価計算方式は類似薬が存在しない場合に、製造コスト・開発費・流通費などを積み上げて価格を決定します。
アデムパス錠の主成分であるリオシグアトは、sGC刺激薬という独自の作用機序を持ちます。承認時点では同じ作用機序の類似薬が日本市場に存在しなかったため、原価計算方式が採用されたとされています。これが他のPAH治療薬と比べても高い薬価水準につながった背景です。
原価計算方式では「有用性加算」「希少疾病加算」「市場性加算」などの加算が適用されることがあります。アデムパス錠はCTEPHという希少疾患向け薬剤である点から、希少疾病加算が適用されています。希少疾病加算は通常10〜40%の加算率で、薬価を底上げする要素の一つです。
これが高薬価の主な理由です。
薬価が決まったあとも、毎年または2年ごとに市場実勢価格(保険薬局・医療機関が実際に仕入れる価格)と薬価の乖離が調査され、乖離率が大きければ改定で引き下げられます。2024年中間年改定でも、アデムパス錠は乖離率に応じて各規格が小幅に引き下げられました。
医療機関・薬局側が仕入れ価格交渉で薬価を下回る金額で購入できれば、差益(薬価差益)が生じます。しかしアデムパス錠は流通量が少なく交渉余地が限られるため、薬価差益はほとんど期待できないという現実もあります。
中央社会保険医療協議会(中医協):薬価算定の基準・議事録・関連資料(アデムパス等の薬価算定資料も収載)
アデムパス錠は1か月の薬剤費が20万円を超えることも珍しくなく、患者の自己負担は制度の活用なしには非常に重くなります。そこで重要なのが高額療養費制度です。
高額療養費制度では、1か月の医療費の自己負担が所得区分に応じた「自己負担限度額」を超えた分が払い戻されます。例えば標準的な収入の区分(区分ウ:年収約370万〜770万円)では、月の自己負担上限は約80,100円+αです。アデムパス錠2.5mgを1日3回服用する患者の場合、薬剤費だけで月約258,000円に達するため、高額療養費の対象になる可能性が高くなります。
さらにアデムパス錠の適応疾患であるCTEPHおよびPAHは、「指定難病」に該当します。指定難病医療費助成制度が適用されれば、患者の月額自己負担上限額は所得区分によって最大でも30,000円(高所得者区分でも)まで抑えられます。
これは患者にとって非常に大きな支援です。
医師や薬剤師が処方・調剤の場面でこの制度を患者へ案内することは、アドヒアランス維持に直結します。薬が高いからと自己判断で服薬を中断するケースを防ぐためにも、制度説明は処方時の必須アクションです。
難病医療費助成を受けるには都道府県への申請が必要で、指定医が記載する診断書(臨床調査個人票)の提出が求められます。申請手続きについては患者支援の観点から、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)や地域の難病相談支援センターへつなぐことも選択肢の一つです。
難病情報センター:指定難病の医療費助成制度の概要と申請方法(PAH・CTEPHの情報も掲載)
薬価は改定のたびに変わります。現場で確認に使えるツールや情報源を正しく把握しておくことが、処方設計・薬剤管理の精度を高めます。
まず最も信頼性が高い公式情報源は、厚生労働省が毎年4月1日付で更新する「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報」です。ExcelまたはPDFで公開されており、医薬品コード・規格・薬価が一覧で確認できます。ダウンロードして院内の薬剤管理システムに反映させるのが基本です。
次に実務で広く使われているのが「薬価サーチ」や「日経メディカル医薬品事典」などのオンラインデータベースです。これらは薬価改定のたびにデータが更新され、規格・剤形・後発品の有無も一括で確認できます。手元でスマートフォンから調べたい場面では特に重宝します。
確認は定期的に行うのが原則です。
院内の薬剤部では、薬価改定告示後に速やかにマスタ更新を行う運用が標準ですが、外来処方に携わる医師が個別に最新薬価を確認したい場合は、院内薬剤部への照会が最も確実です。アデムパス錠のような高単価品目は、1錠単位の誤差でも月次の医薬品費計算に影響が出るため注意が必要です。
また、薬価改定に伴い処方箋様式の変更や処方枚数上限の見直しが行われることがあります。アデムパス錠はリスク管理計画(RMP)に基づく安全性監視措置の対象薬でもあるため、添付文書改訂や安全性情報との並行確認も日常業務に組み込むことが推奨されます。
PMDA(医薬品医療機器総合機構):医薬品の添付文書・RMP情報検索(アデムパス錠の最新情報確認に活用)
これは多くの医療従事者があまり意識しない視点ですが、アデムパス錠の薬価はその費用対効果(cost-effectiveness)の評価と密接に関係しています。日本でも2019年から費用対効果評価制度が本格導入され、一部の高薬価品目は費用対効果の分析結果によって薬価が追加調整される仕組みが設けられました。
アデムパス錠がこの費用対効果評価の対象になっているかどうかは、中医協の資料で確認できます。対象に選定された品目は「費用対効果評価専門組織」での分析を経て、その結果が次回以降の薬価改定に反映されます。
つまり薬価は静的な数字ではありません。
費用対効果の指標としてよく使われるのが「QALY(質調整生存年:Quality-Adjusted Life Year)」です。1QALYを得るためのコストが5,000万円を超えると、費用対効果が低いと判断される傾向があります。アデムパス錠のような希少疾患薬は、患者数が少ないためQALY当たりのコストが高くなりやすく、評価上は不利になる構造があります。
この点は医療経済学的に重要な論点です。ただし、希少疾患領域では「救済の価値」「代替治療がないこと」が考慮され、単純なQALY評価だけで薬価が削減されるわけではないという現実もあります。PAH・CTEPHという進行性・生命予後不良疾患において、アデムパス錠が果たす治療的役割の大きさは、薬価議論においても一定の評価を受けています。
処方する側の医師・薬剤師として知っておきたいのは、薬価が高いからこそ適応の確認・用量の適正化・定期的な治療反応性評価が一層重要になるという点です。不必要な漫然投与は患者負担・医療費の両面でリスクになります。治療効果が確認されている患者には継続を、効果不十分な場合は早期に専門医との連携で治療方針を見直すことが求められます。
中医協:費用対効果評価の対象品目リストと評価結果(高薬価品の評価状況が確認できる)

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