アダラートL錠販売中止で知るべき代替薬の選び方

アダラートL錠は2020年に販売中止、2022年3月末に経過措置が終了しました。代替薬の選択や注意点、妊婦禁忌の改訂など、医療従事者が今すぐ確認すべきポイントを解説します。知っておかないと処方ミスにつながる情報とは?

アダラートL錠販売中止で変わる処方と代替薬の選び方

アダラートL錠を「ニフェジピン後発品に切り替えれば同じ」と思っていると、L錠とCR錠の取り違えで患者に過剰投与が起きます。


この記事の3つのポイント
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販売中止の経緯と背景

アダラートL錠は2020年に販売中止、2022年3月31日に経過措置終了。先発品消滅後もニフェジピンL錠(後発品)は複数メーカーから継続販売中。

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L錠とCR錠の混同リスク

一般名処方での「12時間持続(L錠)」と「24時間持続(CR錠)」の取り違えは重大な調剤過誤につながる。一般名の括弧内の記載を必ず確認すること。

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2022年12月の妊婦禁忌改訂

ニフェジピンの妊娠20週未満禁忌は2022年12月の添付文書改訂で削除。「有益性が危険性を上回る場合に投与可能」へ変更された点を把握しておく必要がある。


アダラートL錠販売中止の経緯と35年の歴史



アダラートL錠(一般名:ニフェジピン)は、1985年に高血圧症・狭心症治療として日本で発売されました。Ca拮抗薬として初めての持続性製剤として登場し、1日2回投与が可能な画期的な製品でした。発売から35年にわたって臨床現場を支えてきた薬剤です。


もともとニフェジピンは、1976年にアダラートカプセルとして日本で販売が始まりました。カプセル剤は速やかに吸収され確実な降圧効果を発揮する一方、作用持続時間が短く、1日3〜4回の服薬が必要でした。服薬コンプライアンスの改善が求められた結果、1日2回投与のアダラートL錠が開発された経緯があります。


その後、さらなるコンプライアンス向上を目的に1日1回投与のアダラートCR錠(1998年発売)が登場すると、処方の主流は急速にCR錠へと移行しました。これが販売中止の直接的な背景です。


アダラートCR錠が主流となり処方が激減した結果、アダラートカプセルは2019年に販売中止(経過措置は2021年3月末で終了)、アダラートL錠は2020年に販売中止となり、経過措置は2022年3月31日をもって完全に終了しました。つまり2022年4月以降、アダラートL錠(先発品)の保険請求はできません。これは原則です。


なお、ニフェジピン製剤の歴史を一覧にすると以下のとおりです。


製剤名 発売年 投与回数 状況
アダラートカプセル 1976年 1日3〜4回 2019年販売中止・2021年3月末経過措置終了
アダラートL錠10mg/20mg 1985年 1日2回 2020年販売中止・2022年3月末経過措置終了
アダラートCR錠10mg/20mg/40mg 1998年 1日1回 現在も販売継続中


バイエル薬品が発表した公式案内でも、2021年5月頃より出荷終了、その後経過措置満了期間を2022年3月末と明記しています。先発品の終焉と後発品の継続、この両方を正確に把握しておくことが重要です。


アダラートL錠(先発品)の販売中止に関するバイエル薬品の公式案内は以下を参照してください。


(ニフェジピン製剤の歴史的経緯と販売中止の詳細が確認できます)

アダラートL錠 販売中止と代替品 | YG研究会 賢く生きる


アダラートL錠販売中止後も後発品は継続、代替薬の選択肢を整理

先発品のアダラートL錠が販売中止になっても、後発品(ジェネリック)であるニフェジピンL錠は複数メーカーから継続販売されています。これは使えそうです。代替薬を選ぶ際は、先発品ブランドの消滅と後発品の継続という2つの状況を明確に分けて理解することが重要です。


主なニフェジピンL錠の後発品メーカーは以下のとおりです。


  • ニフェジピンL錠10mg・20mg「サワイ」(沢井製薬)
  • ニフェジピンL錠10mg・20mg「トーワ」(東和薬品)
  • ニフェジピンL錠20mg「ZE」(全星薬品工業)


ただし、後発品への変更は単純ではありません。「ニフェジピンL錠」と「ニフェジピンCR錠」は同じニフェジピン製剤でも、製剤設計が根本から異なります。L錠は薬効が12時間持続するため1日2回投与、CR錠は24時間持続するため1日1回投与です。これが原則です。


さらに、アダラートL錠からCR錠へ剤形変更する際は、「同一有効成分の製剤変更」であっても単純な量換算での切り替えが困難な場合があります。特に妊娠高血圧症候群への使用や、狭心症での使用では、用法変更が患者の血圧コントロールに直接影響します。安易に置き換えない姿勢が基本です。


また、セパミット®(ニフェジピンの別先発品)の後発品という扱いになる「ニフェジピン細粒」なども存在しますが、適応や用法が異なるため、代替薬として使用する際は添付文書を必ず確認してください。


アダラートLをセパミットRに変更する際の注意点について詳しくは以下を参照してください。


(製剤特性の違いによる変更時の注意事項が解説されています)


アダラートL錠販売中止後の一般名処方における調剤過誤リスク

アダラートL錠の販売中止以降、一般名処方において特に注意が必要な落とし穴があります。意外ですね。それは「ニフェジピン徐放錠(12時間持続)」と「ニフェジピン徐放錠(24時間持続)」という、名称がきわめて類似した2種類の製剤が一般名処方上に混在していることです。


一般名処方での表記は以下のように分かれます。


一般名処方の記載 対応する製剤 投与回数
【般】ニフェジピン徐放錠20mg(12時間持続) L錠(アダラートL錠・後発品含む) 1日2回
【般】ニフェジピン徐放錠20mg(24時間持続) CR錠(アダラートCR錠・後発品含む) 1日1回


実際に旭川薬剤師会の事例報告では、「調剤者がニフェジピンだけを見て規格を確認せず、12時間持続製剤と24時間持続製剤を取り違えた」というヒヤリハット事例が報告されています。括弧内の「持続時間の記載」を見落とすと、患者に1日2回投与すべき薬剤を1日1回にしたり、逆に1日1回のCR錠を1日2回調剤するという重大な過誤につながります。痛いですね。


特に薬局側では、電子処方箋システムで「ニフェジピン徐放錠」の表示だけを見て自動入力してしまうリスクがあります。アダラートL錠の販売中止で「L錠という選択肢がなくなったのでは」と誤解している医療従事者が一定数存在することも、混乱の一因です。実際には後発品が継続しているため、一般名処方でL錠が選択されるケースはまだ存在します。


処方・調剤の現場では、括弧内の持続時間(12時間か24時間か)に注意すれば大丈夫です。この確認を標準業務に組み込むことで、取り違えリスクを大幅に低減できます。


一般名処方における調剤注意事項については以下も参照してください。


(ニフェジピン徐放錠の12時間持続と24時間持続の取り違え事例が詳細に掲載されています)

一般名処方で調剤・入力に注意が必要な薬剤 | ファーマシスタ


アダラートL錠販売中止後も残る用途、妊娠高血圧症候群と高地肺水腫

通常の高血圧治療においてはCR錠が主流となり、アダラートL錠の処方は激減しました。しかし、ニフェジピンL製剤が臨床上まだ重要な意味を持つ場面が2つあります。妊娠高血圧症候群と高地肺水腫です。


妊娠高血圧症候群(HDP)での活用について。妊娠高血圧症候群とは、妊娠20週以降の分娩12週までに高血圧が認められる状態、または高血圧に蛋白尿を伴うものを指します。収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上で高血圧と診断されます。


この領域では、降圧目標として「平均動脈圧を15%程度低下させる」か、「重症域(収縮期160mmHg以上)から脱する」ところまで血圧を安定させることが目標です。使用される降圧薬としてニフェジピン徐放剤(L錠・CR錠)のほか、メチルドパ(アルドメット錠)、ラベタロール塩酸塩(トランデート錠)が挙げられます。これが条件です。


ここで重要な情報があります。2022年12月の添付文書改訂により、ニフェジピン(アダラートCR錠・後発品含む)の妊婦禁忌は大きく変更されました。従来は「妊娠20週未満禁忌」とされていたニフェジピン全製剤の妊婦禁忌が削除され、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ使用可能」へと再定義されたのです。これは国立成育医療研究センターが主導した安全性評価に基づくものです。


つまり現在は、妊娠週数にかかわらず有益性投与の判断のもとでニフェジピンを使用できる整理になっています。2022年12月以前の古い添付文書知識のままで処方・監査をしていると、投与の機会を逃すリスクがあります。


高地肺水腫での活用について。高地肺水腫は高山病の一種で、通常2,500mを超える高度に急速に達した24〜96時間後に発症し、高山病による死亡の大部分を占めるといわれています。症状は呼吸困難・重度疲労感・乾いた咳(後に湿性咳)です。


救急対応として肺動脈圧を低下させる目的でニフェジピンL錠が使用されます。代替としてシルデナフィル(50mg、12時間毎)やタダラフィル(10mg、12時間毎)などのホスホジエステラーゼ阻害薬も選択肢に挙げられます。アダラートL錠の先発品は販売中止ですが、ニフェジピンL錠(後発品)で対応可能な場面です。


ニフェジピン妊婦禁忌解除の詳細な経緯は以下を参照してください。


(2022年12月の禁忌改訂の背景と、妊娠中のCa拮抗薬使用の考え方が解説されています)

高血圧の治療に使われる2つの薬が妊婦禁忌解除へ | 国立成育医療研究センター


アダラートL錠販売中止から学ぶ医療従事者が今すぐ確認すべき実務ポイント

アダラートL錠の販売中止は、単なる1製品の終売にとどまりません。周辺の制度変更・添付文書改訂・調剤過誤リスクが複合的に重なっていることが、この問題の特殊性です。医療従事者として実務上確認しておくべき点を整理します。


① 保険請求上のリスク確認


アダラートL錠(先発品)の経過措置は2022年3月31日に終了しています。この日以降は算定要件を満たしません。万が一、古い在庫が院内に残っていて処方・調剤している場合は返戻・査定のリスクがあります。これは必須の確認事項です。


② 後発品ニフェジピンL錠の各社供給状況の把握


後発品であるニフェジピンL錠は複数社から供給されていますが、後発品業界全体での供給不安定問題(日医工の行政処分等)の余波により、一部製品では出荷調整が行われた時期もあります。日医工のニフェジピンL錠20mgも過去に一部包装規格の販売中止が発表されています。供給元メーカーが1社のみとなっていないかを定期的に確認することが望ましいです。


③ 患者への説明・変更時の対応


後発医薬品への切り替えにあたり、患者が「薬の名前が変わった」ことへの不安を感じる事例が薬局ヒヤリハット報告書にも収録されています。実際に「後発品名称変更後に不安から半錠にして服用していた」という事例も報告されており、患者への丁寧な説明が重大な健康被害を予防します。薬剤が変わる際には「有効成分は同一であること」「服用方法は変わらないこと」を口頭で明確に伝えることが重要です。


④ 添付文書の最新版チェック


2022年12月に改訂されたニフェジピンの添付文書変更(妊婦禁忌の削除)はその代表例です。厚生労働省の改訂通知を確認するか、PMDAのインタビューフォーム最新版を参照してください。改訂は添付文書上で反映されていますが、現場での認識が追いついていないケースがあります。


厚生労働省によるニフェジピンの使用上の注意改訂通知は以下から確認できます。


(2022年改訂版の全文と、禁忌削除の根拠が記載されています)

ニフェジピンの使用上の注意の改訂について(PDF) | 厚生労働省


アダラートL錠の販売中止は2020年に起きた事実ですが、「経過措置終了(2022年3月)」「妊婦禁忌の削除(2022年12月)」「後発品各社の供給変動」という3つの変化が時間差で続いています。これら3点を整理して理解することが、現場での適切な処方・調剤につながります。






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