実はオーバーサイズタップの規格表記は、メーカーによってまったく異なるため、カタログを鵜呑みにすると現場で40μmのズレが生じることがあります。
オーバーサイズタップとは、JIS B 0176-1:2002において「ねじ部の径を標準より大きくしたタップの総称」と定義されています。 意外と知られていないのは、JIS規格の正式表記が「オーバーサイズ」ではなく「オーバサイズ」(長音符なし)である点です。 現場や市販カタログでは「オーバーサイズ」と表記されることが多いのですが、JIS上は1文字違います。
関連)https://faq.osg.co.jp/faq/show/511?site_domain=default
標準精度等級より1ランクまたは2ランク外径サイズが大きいタップを指し、使用目的に合わせて複数のランクが存在します。 タップメーカー各社で表記が異なるだけでなく、同じメーカーでも商品シリーズやサイズによって推奨値が変わります。 つまり規格選定はカタログを必ず確認が原則です。
関連)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_processing/mp01/j0142.html
参考:JIS B 0176-1 ねじ加工工具用語 第1部:タップ(kikakurui.com)
https://kikakurui.com/b0/B0176-1-2002-01.html
OSGをはじめ多くのメーカーでは、切削タップには「OH精度」、転造タップには「RH精度」という独自精度方式を採用しています。 OH精度は有効径が基準寸法からどれだけ大きいかを段階で表したもので、数字が大きくなるほど太いタップになります。
関連)https://question.realestate.yahoo.co.jp/knowledge/chiebukuro/detail/10287965820/
具体的には下表のように整理できます。
| 表記 | 有効径の差(P0.7以上の切削タップ) | 用途目安 |
|---|---|---|
| STD(OH3相当) | 基準値 | 通常のJIS 2級 / 6H めねじ |
| STD+1(OH4) | +0.02mm | 縮みやすい素材・軽度のめっき前 |
| STD+2(OH5) | +0.04mm | 厚めのめっき前・焼入れ収縮対策 |
関連)https://www.osg.co.jp/media_dl/mail_magazine/2018/10/154.html
P0.6以下の細かいピッチでは1段あたり+15μmになり、P0.7以上では+20μmになります。 ピッチによってオーバーサイズ量が変わるため、サイズだけ見て選ぶと失敗します。これは見落としがちなポイントですね。
関連)https://www.osg.co.jp/media_dl/mail_magazine/2018/10/154.html
参考:OSG メールマガジン第154号・第171号(OH精度/RH精度の詳細解説)
https://www.osg.co.jp/media_dl/mail_magazine/2018/10/154.html
めっき加工をねじ穴に施すと、めっき厚の分だけ有効径が小さくなります。 そのためめっき前にあらかじめオーバーサイズタップで大きめに加工しておき、めっき後に適正サイズになるよう調整するのが基本です。
関連)https://toolremake.com/oversize-taps/
選定の基本ルールは「めっき厚の4倍のオーバーサイズ量」です。
関連)https://www.ymkt.co.jp/pdf/NACHI-ZSP-HDZ-202402.pdf
関連)https://www.ymkt.co.jp/pdf/NACHI-ZSP-HDZ-202402.pdf
関連)https://www.ymkt.co.jp/pdf/NACHI-ZSP-HDZ-202402.pdf
数字で見るとわかりやすいですね。例えばめっき厚50μmはコピー用紙約半枚分の薄さですが、ねじでは無視できないズレになります。オーバーサイズ量が規格通りに準備できているか、実際の膜厚をめっき業者に確認してから選定する、という一手間が品質を守ります。
参考:ミスミ技術情報 オーバーサイズタップの解説ページ
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_processing/mp01/j0142.html
めっきと並んでよく使われる場面が、タップ加工後の焼入れや熱処理です。焼入れによってねじ穴が収縮し、規格通りに加工したはずのめねじにボルトが入らなくなるトラブルが起きます。
関連)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_processing/mp01/j0142.html
この場合も対策は同じで、あらかじめオーバーサイズタップで加工しておくことで収縮後に適正なめねじ精度を確保します。 ただしめっきと異なり、収縮量は素材・熱処理条件・部品形状によって大きく変わります。収縮量が一定ではないという点が厄介です。
関連)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_processing/mp01/j0142.html
現場での対処手順は次のようになります。
1. 試し加工で熱処理前後のめねじ有効径を計測する
2. 収縮量を把握してオーバーサイズランクを決定する
3. 量産前にゲージで確認してからラインに流す
とくに初めての材料や熱処理条件の場合は、1個試作してから本番加工に入るのが損失を防ぐ最短ルートです。OSGやMISUMIなどのメーカーはカタログに素材別の目安を記載していますが、あくまで参考値です。
関連)https://www.osg.co.jp/media_dl/technical/file/t_6.pdf
現場でよく起きる問題のひとつが、「タップのランク表記がメーカーによって違うことを知らずに発注してしまう」ミスです。 あるメーカーでSTD+2と書かれているものと、別メーカーのOH5は同じ有効径サイズではない場合があります。 そのまま互換品として使うと、めねじが想定より大きくなり不良品になる可能性があります。
関連)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_processing/mp01/j0142.html
具体的な落とし穴を整理します。
関連)https://www.osg.co.jp/media_dl/mail_magazine/2018/10/154.html
関連)https://www.ymkt.co.jp/pdf/NACHI-ZSP-HDZ-202402.pdf
関連)https://toolremake.com/tapping-troubleshooting/
規格のランク表記はそのまま比較しないのが基本です。 必ずメーカーカタログの精度表を参照し、有効径の実寸値で確認するクセをつけると、発注ミスや加工不良を大幅に減らせます。
参考:toolremake.com オーバーサイズタップの選定解説
https://toolremake.com/oversize-taps/
参考:OSG FAQ「オーバサイズのタップとは?」
https://faq.osg.co.jp/faq/show/511?site_domain=default